ユニークな展示が楽しい個性派水族館『富士湧水の郷水族館』(忍野村)

山梨県

中流や上流を再現した水槽や、約3,000匹のサカナが泳ぐ二重回遊水槽など、河川の流れに暮らす淡水魚をたっぷりと観察することができる水族館。ローカル感あふれるユニークな展示も非常に面白く、小さな施設でありながらとっても見応えがあります。

訪問日:2024/12/27(土) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

山梨県唯一の水族館

山中湖と河口湖のちょうど中間あたりにある富士湧水の郷水族館は、山梨県唯一の水族館。透明度の高い富士の湧水を使って、サケ・マス類をはじめとした多数の淡水魚を飼育しています。

コンパクトな館内ですが、ユニークな展示が多数!一角では畳が敷かれており、靴を脱いでくつろいで見ることができます。アルビノニジマスやベステルチョウザメが泳ぐ姿をのんびりと観察してみましょう。

こちらは川の中流や上流を再現した水槽。中流はオイカワ・ウグイ・カワムツなどが、上流はヤマメ・アマゴが、源流はニッコウイワナ・ヤマトイワナが泳ぎます。同じ川でも、区間によって暮らしているサカナが大きく異なるのです。

黒幕に包まれているのは深みの魚水槽。薄暗い照明の中、ヒメマス、オオクチバス、ブルーギル、ニゴイなどが泳いでいます。ポピュラーなサカナばかりですが、深い青の中を静かに泳ぐ様子は神秘的。

館内にはこんな展示も!ここは仮想すし処「湧水」。趣ある門構えが作られており、入口前の水槽にはウナギ、モクズガニなど食べられる生き物が飼育されています。周囲は「おいしい水族館」と題されたコーナーで、ニジマスの養殖や加工などがわかりやすく解説されています。お腹が空いてきました。

富士五湖周辺の魚

白いドジョウはホトケドジョウ。環境変化に弱く絶滅危惧種にも指定されています。「このまま皆ホトケ様になっちゃったら悲しくなるから守ろうね。」といったコメントも。

ボウズハゼはその名の通り頭が丸っこいハゼ。川で生まれてすぐ海へ下るも、翌年春に遡上して川に帰ってきて、それ以降は上流部で暮らすそう。若いうちに一度外の世界を見てくる感じが、学生時代に上京する地方出身者みたいです。

こちらはフジマリモ。富士五湖全てに生息しており、山梨県指定の天然記念物でもあります。フジマリモというのは地方名で、種としては「マリモ」であるそう。その割には丸くないと思いきや、日本各地に生息するマリモのうち、球形になるのは北海道の阿寒湖と青森県の小川原湖のみであるとのこと。丸い方が珍しいのです。

こちらはご存知ワカサギ。冬の風物詩「ワカサギ釣り」として良く知られるサカナですが、実は飼育している水族館はけっこうレア。水温調整や餌付けは難しく、そもそも入手するのがなかなかハード。ここでは山中湖や河口湖で丁寧に釣り上げた個体を運んで飼育しているそうです。

様々な淡水生物たち

こちらの魚は「富士の介」。マス類最高級とされるキングサーモンと、ニジマスを交配した山梨県のオリジナル魚。ほどよくのった上品な脂や舌触りが絶品であるそう。ちなみにみんな♀とのことです。

カラフルなフラワーホーン。南米あたりにくらすサカナかと思いきや、人工的に掛け合わされて造られたため自然下には存在しないそう。このサカナ、めっちゃ人懐っこい!目の前で手を動かすと追いかけてくるため、まるでじゃれているかのような動きを見せてくれます。

世界最大のテナガエビ、オニテナガエビ。体長15cmくらいと、ロブスタークラスのサイズ感。インド〜オーストラリアに暮らしており、トムヤムクンにも使用されるそうです。

ドクターフィッシュことガラ・ルファもいます。指を入れると、全員集合で角質を食べに来てくれます!

目玉は二重回遊水槽

この水族館で最大の水槽が「二重回遊水槽」。ニジマスやブラウントラウトなど、約3,000匹もの魚達が泳いでいます。水の流れがあるのですが、みな流れに逆らって泳ぐサカナ。そのため、ほぼすべてのサカナが同じ向きで泳いでいます。

日本最大の淡水魚、イトウの姿も。イトウって肉食なので、小さなサカナは食べられてしまうのでは・・・?

実はこの水槽、1つの大きな水槽に見えますが、内部に仕切りがあり二重構造になっています。上から見るとその区分けが一目瞭然!大きなサカナは外側、小さなサカナは内側と分かれているのです。

階段を降りると、この二重回遊水槽がトンネル水槽になっているポイントも。ここでもやはり二重構造がわかりやすくなっています。

ミヤイリガイと地方病

こちらの小さな貝はミヤイリガイ。その名を聞いてドキッとした方もいるのでは!?

ミヤイリガイは「日本住血吸虫」という寄生虫の中間宿主であった生物。貝の内部で成長したあと、水中に遊出し、哺乳類の皮膚を破って体内に侵入。感染されると、やせ細り腹が膨れていき、やがて肝硬変や脳疾患にかかり命を落とすことになる日本住血吸虫症を引き起こします。この病は地方病と呼ばれており、明治時代に山梨県の甲府盆地で蔓延していました。ここでは、そんな歴史がパネルで紹介されています。

当初は原因不明の病でありましたが、研究が進み日本住血吸虫の存在と、その宿主であるミヤイリガイが明らかに。「ミヤイリガイを駆除できれば、日本住血吸虫を撲滅することができる。」ということがわかり、県民総出の撲滅運動がスタート。同時に、駆虫薬スチブナールの開発も併せて進められました。その結果、1978年の感染者の確認を最後に、新規感染者はゼロに。1996年に終息宣言がなされました。

Wikipediaにおいて内容が充実しており秀逸な記事を「Wikipedia文学」と呼ぶことがあります。その中でも、「地方病 (日本住血吸虫症)」の記事は三大文学に数えられるほど読みごたえがあります。気になる方は、ぜひ読破してみてくださいね。

あふれるユーモアセンス

この水族館に来たら、ぜひ注目したいのがサカナの名前や詳細が記された「魚名板」。一見すると普通のプレートですが、最下部にある「飼育スタッフのコメント」がとっても秀逸!

例えばニホンウナギの血には毒があり1リットル飲むと死んでしまうという情報に対して「どんな生き物の血でも、1リットル飲んだら死んでしまうのでは?」というツッコミが入っていたりと、非常にユニーク。

サカナだけでな、「飼育スタッフ」の案内も「話しかけると意外と面白い話が聞ける」そうです!

そして見逃せないのがクイズコーナー。「アユはどんな匂いがする?」「サケとマスの違いはある?」といったスタンダードな問題に加えて、「山梨県ではニジマスと桃どっちが多く生産されているか」といった難問も。

一番難しかったのはこちらのクイズ。

「スタッフが好きなホンモロコの食べ方はどっち?」。

これは難しすぎます!!!!!

選択肢は「佃煮」or「天ぷら」。いったいどちらなのかは、現地にてご確認くださいね。

アクセスと営業情報

・東富士五湖道路「山中湖」ICから5分
・中央自動車道「河口湖」ICから20分

開館時間 7~9月:9:00~18:00
10~6月:9:00~17:00
休館日 火曜、年末年始
料金 420円
公式サイト http://www.morinonakano-suizokukan.com/

※掲載の情報は2024年12月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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