前回に続き、忍野八海めぐり。後半戦は「鏡池」「菖蒲池」「底抜池」「出口池」の4ヶ所をめぐっていきます。この4つにもそれぞれまったく異なる伝説が残されていました。

⑤鏡池
にぎわうエリアを抜けたところにある池。面積は144㎡とのことですが、体感ではとっても小さく見えます。
ちょうど池の向こうにそびえる富士山。風がない日は、水面に映る逆さ富士も見ることができます。
もちろんこの池にも伝説があります!
鏡池の水は善悪を見分ける霊力があります。人々の間に何か揉め事が起きた際には、争っている双方がこの池の水を浴びて身を清め、祈願したといわれています。
トラブルがあった際の判定の場であったのですね。ところで、どうやって善悪の判決が出るのでしょうか?悪い方は水を浴びたことで何か体調変化が出たりするのでしょうかね。
⑥菖蒲池
鏡池のすぐ先にあるのは281㎡の池。かつてショウブが自生していたことが名前の由来。大きなコイとマガモがゆったりと過ごす落ち着いた雰囲気の池です。
この池の菖蒲を体に巻いて祈願すれば病気平癒を行うという信仰があります。このルーツとされているのが、こちらの伝説。
昔、この池の近くに若い夫婦が暮らしておりました。あるとき夫が肺病にかかってしまい、妻はできる限りの看病をしましたが、状況は悪化するばかりでした。もう神仏に助けを求める以外にないと考え、この池の水を浴びて身を清め、一心不乱に祈願します。すると、37日目に「池の菖蒲をとって夫の身に巻けば、夫を苦しめている病魔は必ず退散する」という神のお告げが。実行したところ、1ヶ月もしないうちに見事快復しました。
菖蒲には様々な効能があるので、それによって快復というのはリアリティがありますね!
これにてマップの通りに八海めぐり完了・・・あれ?6つしかめぐっていない気がします!!
もう一度マップを見て見ると、1km近く離れたところにある「出口池」と、有料の資料館の敷地内にある「底抜池」はマップからカットされていました。ということで、残る2つもめぐって見ます。
榛の木林資料館
⑦底抜池は、有料施設「榛の木林資料館」の敷地内にあります。ということで、資料館へ。ハコモノ施設ではなく、敷地内に伝統家屋が設置されているほぼ屋外施設。
敷地中央に広がる大きな池、これこそが底抜池・・・と思いきや、こちらは鯉の池。忍野八海ではありません。
重厚な存在感を放つのは茅葺き屋根の渡邉泉氏住宅。この家屋は内部を見学することができます。
家財道具がそのまま残る座敷はもちろんのこと、ハシゴを使って上層部へ進むことができます。繭から糸をとる道具や除草機などが並ぶ中、軋む床板がなかなかのスリル。コワさはありますが、秘密基地みたいでわくわくしてきました!
床板が抜けないか、ハシゴが外れないか不安になりながら上って最上層へ。この先まで行くにはなかなか勇気が入りますが、たどり着いた先には窓があり園内を見渡すことができます。
⑦底抜池
さて、忍野八海の底抜池(そこなしいけ)は、榛の木林資料館の奥地、木々に包まれていました。
面積は208㎡。大きなニジマスが悠々と泳ぐ、落ち着いた雰囲気の池です。この池でなくしたものがお釜池で見つかることから、地底でつながっていると考えられているそう。これに関わる伝説がこちら。
この池で洗い物をする際、洗っていた道具や野菜を手から離してしまうと、渦に巻き込まれ消えてなくなってしまうと言われていました。そして、なくしたものはどんなに探しても見つからず、しばらくすると「お釜池」に浮かび上がってくることがたびたび起こりました。村人たちの間では、この池で洗い物をすることは、神様の怒りを買うことになると語り継がれてきました。
沼や洞窟が遠くにつながっている系の伝説は比較的ポピュラーですが、それが神様の怒りと表現されているあたりが個性的なポイント。「人を寄せ付けたくない場所に怖い伝説がある」といったように、何かを禁じるという話なので、きっと理由があって生まれたものかもしれません。
⑧出口池
早いもので、こちらが忍野八海のラストの池。面積は1,467㎡と忍野八海で最大であり、ここが北極星、他の池が北斗七星ともいわれています。出口稲荷大明神の赤い鳥居が木々の中に彩りを加えていました。
他の池からはひとつだけポツンと離れた所にあり、最寄りのお釜池から徒歩で10〜15分ほど。すぐ前の道路の路肩に数台停めるスペースがあったので、車移動しても良いかもしれません。
さあ、最後の伝説がこちら。
この池の湧水は「清浄な霊水」と呼ばれており、富士登山を目指す行者たちはこの水で穢れを祓っていました。また、この水をお守りとして携えることで、無事に登山ができるという言い伝えがあったそう。このような理由から、別名を精進池といいます。
伝説というよりは富士信仰のひとつのカタチといった感じですね!
めぐってみた感想
8つの池をめぐって、かまぼこ食べて、榛の木資料館も見学してトータルの所要時間はおよそ【2時間】ほど。めぐるだけならばもう少しスピードアップもできそうですが、せっかくならのんびり歩きながらまわりたいスポットです。
どの池ももれなく伝説があるというのが非常に個性的なポイントですが、これだけ密集した小さな池すべてに伝説があるというのはちょっぴりリアリティに欠けるような気もしてしまいます。それぞれ関連せずに異なった話があるので、もしかして各池競い合って伝説を用いた歴史があるのかもしれませんね。
とはいえ、やっぱり伝説の話というのは興味がそそられます。それぞれの池そのものの見応えは控えめですが、この伝説を感じながらめぐると満足度が上がるハズ。ぜひ訪問される際は、伝説のストーリーを解釈しながら見るのがおすすめです!
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