復活を果たした茅葺き集落『西湖いやしの里根場』(富士河口湖町)

山梨県

西湖周辺にある根場(ねんば)集落は、茅葺屋根の家屋が立ち並ぶ人気の観光スポット。集落内を散策したり、ノスタルジックな写真を撮ったり、カフェやお土産屋さんを覗いたりと様々な楽しみ方ができます。ゆったりした時間が流れる場所ですが、壊滅状態から復活を果たしたという特殊な歴史を持っています。

訪問日:2022/12 /30(金) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

茅葺き屋根の集落

コウモリ穴やクニマスの再発見で知られる富士五湖・西湖(さいこ)。観光客でにぎわう山中湖や河口湖に比べると、少し落ち着いた印象のあるエリアです。

そんな静かな湖の西北に位置するのが根場(ねんば)集落は、「西湖いやしの里根場」という野外博物館になっています。

入場料を払って園内に入ると、目の前に広がるのは茅葺き屋根の民家が立ち並ぶ情緒あふれる景観。まるで岐阜県の白川郷や富山県の五箇山、京都の美山のようなノスタルジックな景観で、歩いているだけで心が穏やかな気持ちになってきます。同じ富士五湖エリアの「忍野八海」と近いテイストですが、こちらの方がずっと落ち着いた印象です。

園内には見やすいマップが作られており、それぞれの民家の軒先には木のプレートで番号が振られています。見どころがわかりやすく、めぐりやすいのもポイントです。

根場集落の見どころ

趣ある景観は、思わず写真に撮りたくなる光景の連続。酒屋や酒蔵の証である杉玉や軒下に吊るされたとうもろこし、和紙の風車に巨大なかぼちゃ・・・古き良き日本の魅力が詰まっており、さらに写真映えも狙える画です。

外から眺めるだけでなく、中に入ることができる家屋もあります。ぴかぴかに磨かれた床と囲炉裏のある家。冬場だったので少し寒いですが、夏に来たら縁側に腰かけてのんびりと過ごしたくなります。

その名の通り眺望が楽しめる「見晴らし屋」の2階からは、富士山と集落を一望できます。

この見晴らし屋は「まんが日本昔ばなし」の作画を担当されていたことでも知られる前田康成さんの原画展も常設されています。さらに工房もあり、ご本人が作業されている姿を見られることも・・・!私が訪問した際は、熱心に作業されている姿をお見掛けしました。

集落中央にある広場では、竹馬、なわとび、輪投げ、羽子板なんかもあります。童心にかえって遊んでみてはいかがでしょうか。

他にもお土産屋やカフェ、農具の展示、体験工房、ギャラリーなど、それぞれの家屋が異なる役割を担っています。

災害によって壊滅した歴史

この根場集落、かつて一度壊滅してしまったという凄惨な歴史を持っております。

1966年、秋雨前線と台風の影響で振り続けた雨により土石流が発生。「山津波」と呼ばれる土石流は根場集落を直撃。集落は壊滅状態となり、死者・行方不明者あわせて94名という大災害になりました。

園内にある砂防資料館では、そんな災害の歴史や土石流発生のメカニズム、さらには「日本一美しい」と称された災害以前の写真・映像などが展示されています。

ところで、昭和に一度壊滅しているのに、これだけ歴史を感じさせる景観なのはなぜでしょうか?

新しい茅葺き集落

実はこの根場の茅葺き建築は、土砂災害から40年後となる2006年に復活を果たしました。

昔から保たれてきたのではなく、ほぼ全て再建されたものであるため、重要伝統的建造物群保存地区には指定されていない「新しい茅葺き集落」なのです。

いや、これが築16年の物件なんて信じられません!!!

2階に窓を設けた建築「兜造り」や、屋根の上に設けられた「雪割り」など、立ち並ぶ集落はかなり忠実に再現されています。木材もわざわざ古材を使用しているため、歴史を感じさせる出で立ち。観光で訪れてそこに気づける人はほとんどいないと思われます。

再建ときくとついつい価値が低く感じてしまいますが、例え建物の歴史的な価値は低くても、災害で壊滅したにも関わらず人々が復活させたというストーリーは胸がアツくなります。復元に携わった人々の話をぜひともきいてみたいものです。

なお、「ほぼ全て再建」と書きましたが、園内には一棟だけ災害を逃れて当時の姿のままたたずむ家屋があります。歴史的な価値が認められ、国の登録有形文化財に登録された建築、あえて調べずに散策しながら探してみてはいかがでしょうか?

アクセスと営業情報

河口湖駅より西湖周遊バス(グリーンライン)で約40分。車の場合は中央自動車道の河口湖ICから約30分。駐車場は集落から少し離れたところにあります。現地には「P」の案内板がありますので、それに従って進むようにしましょう。

開館時間 9:00〜17:00 ※12~2月は9:30~16:30
休館日 年中無休
料金 500円
公式サイト https://saikoiyashinosatonenba.jp/

※掲載の情報は2022年12月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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