凄惨な歴史を伝える場所『乙女峠マリア聖堂』(津和野町)

島根県

「山陰の小京都」として知られる津和野は、かつて検挙された潜伏キリシタンが送られた場所でした。信徒たちに対する拷問が行われていた乙女峠には、現在はモニュメントやマリア聖堂が建てられ、その悲しい歴史を静かに伝えています。

訪問日:2026/5/1(金) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

キリシタンが送られた津和野

禁教令によりキリスト教の信仰が禁止されていた江戸時代。多くのキリシタンは隠れて信仰を続ける「潜伏キリシタン」となりました。

江戸幕府が終焉を迎え、明治時代が訪れてもその弾圧は続きます。潜伏しているキリシタンが一斉に摘発される事件「崩れ」はたびたび発生。1868年、長崎の浦上村にて大規模な崩れ「浦上四番崩れ」がおこります。改宗に応じない3,400人にも及ぶ信徒たちは、日本各地に強制移住されることに。

このとき、津和野も移住先となり、153人の信徒が送られました。信徒たちは棄教を勧められますが、多くの者はこれを拒み、厳しい拷問や改宗の強要を受けることに。これにより、37人が命を落としてしまいます。

歴史が残る乙女峠

情緒あふれる町並みから少し離れた場所にある乙女峠は、かつてのキリシタン信仰を今に伝えるスポットとして知られています。

津和野駅の西側の細い道を進むと、その入口。駐車場から舗装された山道を約5分ほど歩きます。 少々急ですが、手すりが設置されている親切設計。

ここは、津和野に送られた信徒たちが収容された光琳寺があった場所。広場には様々なモニュメントが並んでおります。明後日には「乙女峠まつり」が開催されるため、仮設ステージも設置されていました。

ちなみに乙女峠という名は、かつて津和野城主の娘が葬られたことから乙女山と呼ばれていたのが由来であるそう。

史跡とモニュメント

収容されていたキリシタンが使用した井戸と水洗い場の跡。153名のキリシタンが自分達で食事を作る大事な場所であったそう。

支給される食材はわずか、さらに減食の拷問が始まると食材はほとんどなくなり飢えに苦しむことになってしまったそうです。

聖母と殉教者碑には、殉教した信徒たちの姿が描かれています。そばには名前を記した碑も添えられていました。

赤い十字架、この色はキリストの尊い血を表しているそう。3本のクギに加えて、よく見るとガラス片が散りばめられています。鏡となり見る人の顔を映す、そしてキリストがいつもそばにいることを表しているとのこと。

厳しい拷問の跡

こちらの人が入っている檻は、「三尺牢」と呼ばれるもの。信仰を捨てない信徒は、立つこともできない檻に閉じ込められるという拷問が待ち構えていました。

そばに佇むのはマリア様。檻に閉じ込められた安太郎という人物のもとに、毎晩マリア様が現れ励ましていたという話が残っており、それを再現しているようです。

仮説ステージの下にあるのは、「氷責め」に使用された池。氷点下が続く真冬、氷が張った池に裸で入れられるという拷問が行われた場所です。

厳しい拷問は、1873年にキリシタン禁制の高札が撤去されるまで続けられていました。

建立されたマリア聖堂

禁教令が解かれたずっと後、カトリック広島司教区がこの地を買い取り、昭和26年(1951年)に建てたのがこのマリア聖堂。瓦屋根の聖堂で、軒下には万国旗が吊るされています。

カギはかかっていないため、自由に入ることができます。自動で明かりが着き、キリスト・マリアの絵が姿を現しました。ツバキ、ツツジ、バラといった生花や千羽鶴が添えられており、今も大切に信仰されていることが伝わってきます。

周りに嵌め込まれているのはカラフルなステンドグラス。それぞれ殉教に関するストーリーを表しています。


津和野の中心部から少し離れているため、とっても静かな場所。かつて凄惨な出来事がおこった場所とは思えないほど、穏やかな雰囲気でした。

なお、1873年に禁教令が解かれて信徒たちは帰郷を許されます。長い旅を経て長崎の浦上に帰ることができた彼らは浦上天主堂建設へと動くのでした。詳しくはこちらにて。

長い旅から帰還した潜伏キリシタンたちの信仰の証『浦上天主堂』(長崎市)
多くの教会が登録され、話題となった世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。この浦上天主堂はそこには含まれていませんが、潜伏キリシタンの歴史を語る上で外すことのできない教会です。この教会を望んだのはどんな人々であったのか?造られた経緯は?この場所が選ばれた理由とは?知れば知るほど非常に大きな意味を持つ教会であることがわかってきます。

アクセスと営業情報

開館時間 見学自由
料金 無料
公式サイト http://www.sun-net.jp/~otome/99_blank007016.html

※掲載の情報は2026年5月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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