夢の島公園にある第五福竜丸展示館は、歴史に名を残す被災船舶「第五福竜丸」がそのまま保存・展示された施設。1954年にビキニ環礁で行われた実験を今に伝えるとともに、その意味を考えさせられるスポットです。
歴史に刻まれた第五福竜丸
みなさんは「第五福竜丸」という船をご存じでしょうか。日本の近代史に造詣の深い方、もしくはゴジラシリーズが好きな方の間ではよく知られた船です。
第五福竜丸は1954年3月1日、マーシャル諸島ビキニ環礁でアメリカがおこなった水爆実験「ブラボー実験」により被ばくした遠洋マグロ延縄漁船。爆心地より160km離れた危険区域外で操業中、実験により生じた「死の灰」(放射性降下物)が降りそそぎ、乗組員23人は全員被ばくしてしまいます。
そんな第五福竜丸がそのまま展示されているのが、夢の島公園内にある東京都立第五福竜丸展示館。三角形の姿が印象的な建物です。

入館料は無料で手続きも不要。自由に見学可能な施設です。
横たわる巨大な船舶
まるでドックのような広々とした館内の中央に鎮座するのは第五福竜丸。全長約30m、高さ約15m。私が想像していたよりもずっと大きな船でした。

2階部分からはデッキも見学可能。マグロ漁に利用される延縄やビン玉が置かれており、漁船の雰囲気を出しています。もともとは1947年にカツオ漁船「第七事代丸」として建造された船でしたが、1951年にマグロ漁船となり「第五福竜丸」に改名しました。

船尾では、舵やスクリュー、エンジンシャフトも見ることができます。

被災後は貴重な学術資料として日本政府が買い取り、放射能が減少した後1956年に東京水産大学(現・東京海洋大学)の練習船「はやぶさ丸」としての役目がスタート。
1967年に廃船処分となり、船体はゴミの処分場であった「夢の島」の埋立地に放置されていました。周辺住民から保存の動きがおこり、1976年6月に東京都立第五福竜丸展示館が開館。船体は展示・公開されました。
当時、通信に利用されていたのはモールス信号。それを実際に体験できる装置もあります。ボタンを押すと隣の液晶に文字が入力されるというものですが、タイミングがなかなか難しいです。ところで「SOS」はみなさん覚えてますよね?

放射性物質の影響
こちらの機械はシンチレーションカウンター。海洋調査船「俊鶻丸」がビキニ環礁周辺海域の調査を行った際に使用されたもの。放射線に当たると蛍光を発する物質を使い、放射線粒子を検出するそうです。

ガイガー計数管も展示されています。第五福竜丸被災当時、マグロの放射能測定に使用された機器。

放射能の影響は、第五福竜丸だけでなく海洋生物にも大きな影響をもたらします。多くの船が漁獲したマグロからも放射線が検出され、すべて投棄せざるを得ない状況に。その被害は漁船856隻におよび、485.75トンものマグロが廃棄されることになったそうです。
ビンに入っているのは死の灰。その正体は、爆発により粉々に砕かれたサンゴがキノコ雲に吸い上げられ、放射能を帯びたもの。こちらは第五福竜丸の船体より採取したものであるそう。

島々が受けた被害
実験場となったビキニ環礁を含むマーシャル諸島は29の環礁と5つの島からなる諸島。第一次世界大戦後、1914年より日本によって統治され、第二次世界大戦中は日本とアメリカの激戦地に。戦後は、まだ自立が難しい国を、国連によって任された国が手助けをする「信託統治制度」によりアメリカが治めていました。

このマーシャル諸島では、第五福竜丸が被ばくした「ブラボー実験」以外にも、12年間で23回もの核実験が行われていました。
そのため、この地に暮らしていた人々は資源の乏しい島へ強制移住させられたり、避難が間に合わず被ばくしてしまったり、安全とされ帰島できたものの実際は放射能が減少しておらず被ばくしてしまったりと、過酷な運命を歩むことになっていたそう。
この話は決して過去のものではなく、ビキニ環礁は現在も放射能汚染により人が住めない島となっております。
行ってみた感想
実験の目的は「人類の幸福と戦争を終わらせるため」ということであったようですが、70年経った現在も争いは収束しておりません。
この一連の核実験が肯定されているのを見かけたことがありませんが、結果的にその被害が世界に知られることとなり、反核運動は活発化。米ソ間の全面核戦争を防ぐ一因になったという考え方もあるそう。さらに、この結果により得られた知見は、放射線防護の基準づくりや、原発事故にも生かされていきます。
実験を肯定するつもりは全くありませんが、「悲惨な出来事」として過去を知りつつも、その教訓をどう生かしていくかという未来を考える場所でした。

アクセスと営業情報
東京メトロ有楽町線、JR京葉線、りんかい線の「新木場駅」より徒歩10分。
| 開館時間 | 9:30~16:00 |
|---|---|
| 休館日 | 月曜 |
| 料金 | 無料 |
| 公式サイト | https://d5f.org/ |
※掲載の情報は2026年8月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。


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