江戸で最初に造られた黄檗(おうばく)宗の寺院。独特な黄檗建築と、隈研吾によりデザインされたモダンな建築が共存する様子は他の寺院では見ることができない光景です。
拝観料:無料
瑞聖寺へのアクセス
東京都港区にある瑞聖寺(ずいしょうじ)。
都営三田線、東京メトロ南北線の白金台駅から徒歩1分。交通量の多い目黒通りを歩道橋で渡るとすぐに入口が見えてきます。
白金台の高層マンションに囲まれるようにあるお寺です。
黄檗宗の寺院
曹洞宗や臨済宗とともに禅宗である黄檗宗(おうばくしゅう)。他の宗派との大きな違いは中国の要素が強いこと。
江戸時代、幕府の政策「寺請制度」のもと、一般市民は皆お寺に属しました。その際、長崎などに多く渡来していた中華系の人々のために、明より隠元和尚を招いて開かれたのが黄檗宗という宗派です。
1671年、江戸で最初に開かれた黄檗宗寺院がこのお寺。開山は隠元和尚の弟子である木庵性瑫(もくあんしょうとう)、開基はのちに出家して僧侶となる大名・青木重兼となっています。
黄檗建築の大雄宝殿
境内に足を踏み入れるとすぐ目に入るのは、重厚な大雄宝殿(だいおうほうでん)。いわゆる本堂や仏殿にあたる、寺院の中心となる建築です。1階建てですが、裳階(もこし)がぐるっと一周しており2層建築に見えます。
屋根の真ん中に宝珠が乗ること、そしてお堂の手前に月台(げったい)と呼ばれる舞台のような囲いがあるのも黄檗建築の特徴です。
本尊は寄木造りの木造釈迦如来坐像。設置されたアップライトピアノ、そしてその上に宝珠のようなものが置かれているのが気になります。
吊るされた魚と雲
こちらの吊るされた木の魚は開梛(かいぱん)。叩いて時を知らせる時報で、黄檗宗や曹洞宗の寺院で見ることができます。
魚は目を閉じないことから「寝る間も惜しんで修行に励む」という意味でサカナの形をしているそう。別名「魚梆(ぎょほう)」と呼ばれることもあります。
こちらは雲板(うんぱん)。開梛と同じく時を知らせるためのものです。機能は同じに見えますが、どのように使い分けているのでしょうか。「雲板は食事を知らせるためのもの」といった書き込みも見つけましたが、寺院によって異なるようです。
山手七福神の布袋尊
江戸時代に流行した七福神信仰。谷中七福神や深川七福神など数多くの七福神が建立されました。その中でも、一番最初に造られたといわれているのが山手七福神。
蟠竜寺の弁財天や、瀧泉寺(目黒不動)の恵比寿神などがそこに含まれていますが、この瑞聖寺では布袋尊を祭っています。
山手七福神は、覚林寺から瀧泉寺まで一直線に並んでいるため、迷うことはありません。他の七福神に比べてもとても巡りやすそうですが、どちらからスタートするかによってご利益が変わるとのこと。
モダンなデザインの隈研吾建築
この瑞聖寺において最も特徴的なのは、庫裏と寺務所。寺院とは思えないようなデザインの空間となっています。
こちらはかの有名な建築家・隈研吾の作品。彼の他の建築物である雲の上の図書館やPIGMENTなどと同様に、むき出しの木材が無数に並べられており幾何学的でありつつも温かみを感じます。
一本の木が島のように浮かぶ水庭もモダンな雰囲気。お寺というより現代美術館のようなテイストに感じますが、無駄な装飾のない洗練された空間は禅の思想と凄く合致する気がします。
伝統的な建築の大雄宝殿と並べると、コントラストがとてもあざやか。
都内のお寺ではそこまで知名度が高い方ではありませんが、黄檗建築と隈研吾建築の組み合わせはここでしか見ることのできない光景。目黒・白金エリアへ訪れた際は、ふらっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
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