ベンガラで赤く染まった町並み『吹屋ふるさと村』(高梁市)

岡山県

鉱山町、そしてベンガラ生産で栄えた吹屋地区。財を成した豪商たちの屋敷は、今も保存されており、ノスタルジックな町並みを形成しています。ベンガラ工場跡である「ベンガラ館」や実際に採掘されていた「笹畝坑道」など、見どころも豊富です。

訪問日:2022/5/6(金)

歴史的町並みが残る吹屋地区

岡山県高梁市成羽町にある吹屋地区。標高550mの山の中にぽつんと存在するこの町は、江戸時代には吹屋銅山の鉱山町として栄え、幕末から明治にかけて「ベンガラ」という硫化鉄鉱石を原料とした赤色顔料の製造で繁栄を極めます。

1972年に銅山は閉山となりますが、1974年に岡山県の「ふるさと村」に指定され、さらに1977年には国の重要伝統的建造物群保存地区として選定。市街地から遠く離れた山の中にあるこの集落は、歴史的な町並みを体感できる観光スポットとして密かな人気を集めています。

最初はよくある宿場町や門前町のような雰囲気の場所かな?とそこまで気に留めていなかったのですが、調べていると町全体が赤く染まった「赤い町並み」を見ることができるらしい。近年では『「ジャパンレッド」発祥の地-弁柄と銅の町・備中吹屋-』として日本遺産にも登録されました。

これは非常に気になります!ということで、実際に訪問してみることにしました。

赤く染まった町並みを歩く

集落のメインストリートを歩いていると、目に付くのは赤く染まった家屋。ベンガラ色の外観で統一された建物が立ち並ぶ様子は、まさに「赤い町」!

壁だけでなく、屋根も赤く統一されています。こちらはベンガラではなく、島根県の石見地方で生産されている石州瓦。赤褐色の色味が特徴の瓦です。

集落内には民具などを展示している吹屋郷土館もあります。今回は閉館していたので諦めましたが、吹屋地区には「吹屋ふるさと村周遊券」という共通券があり、これを購入すれば観光施設すべてに入館できるそうです。

17:00近くの訪問だったため、お店などは閉まって観光はおしまい。人の気配はほとんどない・・・かと思いきや、この地区に住んでいる方々が多く歩いています。走り回る子供たち、そこに声をかけるおばあちゃん…。ノスタルジックな情景に胸が熱くなります。

レトロな旧吹屋小学校校舎

メインストリートからそれて100mほど進むと、見えてくるのは旧吹屋小学校校舎。明治時代後期に建てられたもので、かつては現役最古の木造校舎でした。2012年に閉校となったあとは、文化財として保存されます。

そして2022年4月に観光施設として開館!内部見学ができるようになりました!・・・なのですが、10:00〜16:00までとのことで、もちろん間に合いませんでした。

外観だけでも充分見ごたえあります。西洋建築のエッセンスが入った擬洋風校舎は、レトロなたたずまい。

校舎の前にあるプールは、なんと庭園になっています!飛び込み用のスタート台やハシゴはそのままに、白砂利が敷かれている姿は非常にユニーク。

プールがそのまま水槽になったむろと廃校水族館もかなりのインパクトでしたが、この庭園にするというのもとっても面白いです。

採掘現場が復元された笹畝坑道

笹畝坑道(ささうね こうどう)は、江戸時代から大正時代まで操業していた銅山の坑道。現在は内部が復元整備され、観光坑道となっています。

坑道内はひんやりした空気。足場は整備されているため歩きやすいですが、天井が低いところが多く、ちょっとだけ腰にきます。

自動音声ガイドが流れており、坑道の歴史や解説を説明してくれます。ここでは主に黄銅鉱、硫化鉄鉱が採掘されていたそうです。

坑道を奥へ進むと広大な空間が姿を現します。立ち並んだ照明用の木の柱も雰囲気抜群。おそらく、現役当時もこのような状態であったのではないでしょうか。

ときおり、採掘している人形の姿も。江戸時代にはこのように手掘りにより採掘が進められていましたが、明治以降は機械化が進んで行きます。

工場跡のベンガラ館

ベンガラ館は、明治時代のベンガラ工場跡を活用して開設された小さな博物館。開館時間は10:00~17:00とのことですが、私が訪問したときは16:25の時点で受付終了しており、スタッフさんの姿は見えませんでした。

近くにいた人に聞いたところ、建物内部は入れないけど、外部からの見学なら大丈夫とのこと。ということで、ちょっとだけ敷地内を散策させてもらいました。館内は、窯小屋、搗臼場、資料館などの小さな建物が並んでいます。

窓から中を覗いてみると、赤く染まった水槽のようなものが見えます。おそらくここで焼成したベンガラを水洗いし、不純物をとりのぞいていたのでしょう。

アクセスと駐車場情報

JR備中高梁駅からバスで約55分。車の場合は岡山自動車道賀陽ICから約50分。

駐車場は数か所ありいずれも無料!集落は一本道で往復することになるので、どこに停めても大差ありません。

「ベンガラ館」「笹畝坑道」、そして今回紹介できなかった「広兼邸」はそれぞれに駐車場があるので、車で移動するのが良さそうです。

※実際にめぐった順番は、笹畝坑道→ベンガラ館→吹屋ふるさと村。時間的に観光施設の営業時間ぎりぎりだったので、絶対に中に入りたい笹畝坑道を優先しました。

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