生き還りを想定した埋葬施設『綿貫観音山古墳』(高崎市)

群馬県

大きな前方後円墳であるだけでなく、レアなハニワ、国宝に指定された大量の出土品、生き還りを想定した石室など、非常に情報量が多い古墳。古墳が多数ある群馬においても、かなり重要な古墳です。

訪問日:2024/7/15(月) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

巨大な前方後円墳

綿貫観音山古墳は、6世紀後半に造られた前方後円墳。後円部径は61m、前方部幅は63m、墳丘長は97m。墳丘は上下2段構成で造られております。

後円部の階段で墳丘に上ることができます。後円部から見た前方部。この波打つようなアングル、前方後円墳において好きな角度です。

前方部に上ると、目の前に広がるのは街並み。高崎の中心部からは離れているので、長閑な景色。日本ルナ株式会社とORIHIRO株式会社が目立ちますね。

個性的過ぎるハニワ

この古墳では、墳頂と墳丘中段のテラスにはハニワが多数置かれていました。墳頂には家形埴輪・円筒埴輪、テラスには人物埴輪・馬形埴輪などがメインであったそう。

石室入口付近には形象埴輪が多数並んでいたこともわかっています。甲冑武人や、正座する女子、合唱する男子などいずれも非常に個性的なデザイン。

特に写真中央の「三人童女」は他に例のない、ここでしか見つかっていないタイプ。手を合わせるように並ぶ3人の少女、楽器を弾いているのではと考えられています。ハニワについては、「群馬県立歴史博物館」にて詳しい展示を見ることができます。すぐ近くなので合わせての訪問がとってもおすすめです!

古墳から上毛かるたまで『群馬県立歴史博物館』(高崎市)
古代から多くの人が暮らしてきた群馬、その歴史を体感できるのがこちらのミュージアム。ジオラマや映像コンテンツも多く、とっつきやすい博物館です。「国宝展示室」に並ぶ太古の品々は必見です!

国宝に指定された出土品

この古墳では、1968年に発掘調査が行われます。古墳の多くは盗掘にあい、貴重な副葬品などは失われていることがほとんど。そんな中、この古墳は未盗掘であったため、膨大な副葬品が発見されます。調査に関わった人はきっと大コーフンであったに違いありません。

1973年に古墳が国の史跡に、そして2020年に出土品が国宝に指定されます。

見つかったのは装身具、武器、武具、馬具などなど、その数驚きの500点越え。中でも頂部に突起のついた「鉄冑」、霊獣の描かれた「獣帯鏡」など、朝鮮半島との交流を示唆するものも。こちらもまた詳しくは「群馬県立歴史博物館」にて。

気になるのは、なぜこの古墳は盗掘を免れたのかということ。一説によれば、竪穴式石室と考えられて墳頂を掘られたものの、横穴式石室であったため防ぐことができたそう。ただし、この古墳だけが横穴式石室であったわけではないので、盗掘者がその構造を知らなかったとは考えにくいです。

発掘調査の際に石室を開くと、天井石が一部崩落し崩れていたそう。そのため盗掘者が入ることができなかったという説もありますが、それまで開けられた形跡がなかったことから疑いの余地は残ります。

寺院の所有物となり管理されていたり、人目につくところであったため盗掘がしづらかったという説もあるそうです。色々と考えてみると楽しいですが、盗掘者の気持ちになるのはちょっと難しいですね。

広々とした石室の内部

後円部の石室、通常は扉にカギがかかっていますが、日中に限り見学可能。

扉が開いて自由に見学かと思いきや、こちらのプレハブの事務所でおじさんに声をかけると案内しながら見せてもらえるというタイプ。

まず驚くのがその広さ!入口こそ低いため屈んで入る必要がありますが、内部は高さ2.3mという快適空間。

さらに石室自体の全長は12.5m玄室だけで長さ8.25m、幅3.85mと奥行き幅ともにとっても広々。畳にして18枚分となり、玄室の広さだけでみれば東国一の規模であるそう。

そんな広い空間を塞ぐ天井石は全部で6枚。大きいものは22トンにも及ぶ大きさ。

壁面の石積みも見事。30〜40cmの切石を積み上げており、中にはL字型という精巧な技術を要する石も。

石棺が無い理由

古墳の石室といえば石造りの棺である石棺が置かれていることが多いです。しかし、ここでは石棺は見つかっておらず布団が敷かれていただけであったそう。

それには大きな理由があります。石棺というのは、埋葬者をあの世へと送るためのもの。この古墳では埋葬者はまた復活するという想いで造られているため、石棺は不要であったと考えられています。

生き還りのための施設、それを裏付けるのが古墳の石室の向き。南向きであり、冬至の日の14:00頃には石室内部に太陽光が入り込むように設計されているのです。入口と玄室も10度ほどずれていることで、さらに40分多く光が入るようにと緻密な計算がなされています。

断定することは難しいですが、石棺を用意しなかった理由はきっと故人に対する考えが異なっていたからというのは間違いないはず。ぜひ現地を訪れた際は、いろいろなことを考えてみてみてくださいね!

アクセスと見学情報

「群馬県立歴史博物館」のある群馬の森の北入口から600mほど。古墳の側にはトイレ付の広い駐車場があります。

石室見学時間 4月~10月:9:00~17:00
11月~3月:9:00~16:00
料金 無料
公式サイト https://www.pref.gunma.jp/page/5191.html

※掲載の情報は2024年7月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

 

年末年始をのぞく上記見学時間にプレハブの事務所を訪ねると、石室内部を案内していただけます。なお、案内のおじさんはけっこう口調強め。怒っているとかではなくたぶんデフォルトがそうなのだと思います。熱心な解説や、こちらの時間を気にしてくれるところからも優しさは感じられました。ただし、笑いのポイントが全く読めませんでした・・・!

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