ポップでリズミカルなアート空間『中村キース・ヘリング美術館』(北杜市)

山梨県

ニューヨークのアーティスト、キース・ヘリングの作品を専門に展示する美術館。そのカラフルでポップな作風は空間全体に及んでおり、アート界のKing of Popとも賞される彼の世界観を存分に堪能できます。写真撮影も可能で、詳しく知らない人でも楽しめるとってもキャッチーなミュージアムです。

2021/7/25(日)

ポップなアートが大集合

キース・へリングの作品を集めた、世界で唯一の専門美術館が、山梨県北杜市にある中村キース・へリング美術館

展示室は、ネオン照明が怪しく輝く通路からはじまります。展示作品だけでなく、展示室全体も個性的なつくりをしているのがこの美術館の面白いところ。

壁一面にモチーフがドローイングされた刺激的な部屋もあります。なんだか目がチカチカしてきました。

部屋を移動するたびに、次々と違う世界に迷い込んでいくような、非日常を味わえる美術館。アートに興味がない人でも、なんとなく楽しめそうです。さらに、写真撮影可能というのもポイント。カラフルな作品とともに記念撮影している方も多数見かけました。

この美術館の創設者は医薬品開発の支援を行うシミックグループの創業者・中村和男。キース・ヘリング作品のコレクターで、収蔵作品は300点以上にも及びます。

ストリートアートの先駆者

さて、これらの作品を手掛けたキース・へリングとはいったいどのような人物だったのでしょうか。

80年代ニューヨークで活躍した芸術家、キース・ヘリング。1958年、ペンシルバニアに生まれたヘリングは、父の影響で美術の世界へ。ニューヨークの芸術大学にて美術を学んでいきます。

自由な表現を求めていたへリングは、街に描かれたストリートアートの大胆な表現にインスパイアされます。地下鉄構内の使用されていない広告掲示板に黒紙を貼り、そこにチョークで描く“Subway Drawing”と呼ばれる活動を開始。

シンプルで特徴的な作品は、瞬く間に地下鉄利用者の間で評判になっていきます。へリングの名は徐々に広まっていき、多くの個展が開かれるように。各地で開催されるアートフェスティバルへの参加、パブリックアートの作成、ロックミュージシャンのデヴィッドボウイや、HIP-HOPグループRUN D.M.Cなど、CDアルバムのジャケットデザインなど、活躍の幅を広げていきます。

1988年にエイズとの診断を受けると、子供のための福祉活動や、AIDS撲滅活動を目的とした財団を設立。翌年31歳でこの世を去るまで、アートを通した社会活動を行っていきました。

没後30年以上が経過した現在でもその人気は衰えず、ファンは増えているようにすら感じます。近年ではユニクロからコラボTシャツも販売され、町中で彼の作品を見かけることも多いです。

へリング作品の特徴

ヘリングの作品の特徴といえば、なんといってもシンプルさ。まるでピクトグラムのような無駄のないデザインは、サブウェイドローイングで見つからないように短時間で作品を完成させるため、絵画をシンプルに記号化していったためと言われています。その結果、一目でへリングとわかるオリジナリティあふれる作風が完成しました。

「ラディアントベイビー」

「ラディアントベイビー」

こちらの「ラディアントベイビー」は、はいはいする赤ちゃんがピカピカと光る、へリングの代名詞とも呼ばれる人気な作品です。純粋無垢で希望を象徴する赤ちゃんのモチーフは、ヘリング自らの姿とも言われています。

赤ちゃんを囲むように引かれているのは、アクションラインと呼ばれる線。この線が動きを示し、独特なポップ感覚を生み出しています。

また、ポップな作風の中には、深いメッセージが込められているのもへリング作品を語る上で欠かせない要素。

「オルターピース:キリストの生涯」

「オルターピース:キリストの生涯」

こちらは十字架や羽の生えた天使が描かれた、教会の祭壇のための作品。薄暗い照明の中で輝いており、荘厳な雰囲気を放ちます。この作品の中にも、平和への願いや生きる希望を感じ取ることができます。

踊る二人のフィギュア

一番インパクトが強いのが「踊る二人のフィギュア」。黄色と赤の2人のヒトガタが重なり合う、立体的な作品です。このミュージアムを象徴する作品で、旅行雑誌やテレビ番組の紹介でもおなじみ。

高さは3mにもおよび、イメージしていたよりもずっと巨大に感じます。肩を組んで踊っているようで、とてもリズミカルな印象。見ているだけで楽しい気分になってきます!

この作品は、へリングがエイズを宣告された翌年につくられました。とてもシンプルに見えますが、きっと深いメッセージが込められているハズ。

解説などは無いため想像でしかありませんが、マイノリティに対する差別に抗議を続けてきた彼の人生から考えると、色が異なる2人が肩を組む姿は「差別のない平和な世界」を表しているのではないでしょうか。

多摩市との関係

こちらの作品は、右下に「TAMA CITY」と書かれています。このTAMAというのは、東京都多摩市のこと。

1987年に多摩市に複合文化施設である「パルテノン多摩」が誕生した際、その開館記念イベントにてヘリングはワークショップを開催します。そのときに子どもたち500人と作り上げたのが、この「マイ・タウン」黒い輪郭線のみヘリングが描き、その上に子どもたちが自由に絵や文字を描いていき完成しました。

よく見ると、子供たちが描いた様々なキャラクターや文字が描かれており、とっても面白い。個人的なベストは、こちらの「まぼろしの松たけ」でした。

アクセスと営業情報

公共交通機関を利用する場合、最寄り駅はJR中央本線の小淵沢駅そこから4kmほど離れていますが、バスが出ておりません(※2021年9月時点)。徒歩だと45分ほどかかるのでタクシー(約8分)を利用するのが良さそうです。

なお、バスタ新宿から高速バス(茅野・諏訪・岡谷線)を利用し、中央道小淵沢バス停で下車するというアクセス方法もあります。その場合、バス停から徒歩30分ほどで向かうことができます。

車の場合はシンプルで中央自動車道の小淵沢ICより約6分。無料駐車場も備えています。

開館時間 9:00~17:00
休館日 月曜
料金 1,500円
公式サイト https://www.nakamura-haring.com/

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