原村出身の彫刻画家・清水多嘉示の作品や、周辺の遺跡で発掘された出土品を展示する美術館兼民俗資料館。爽やかな木立ちに包まれた静謐な空間で、ゆったりとアート鑑賞を楽しめる施設です。
森の中の美術館
長野県の原村にある八ヶ岳美術館は、標高1,350mの高原に建つ美術館。日本でも珍しい村立の美術館として、1980年に開館しました。外観はかなり特徴的で、ドーム状の建物が連なる不思議な建築。森の中で木々に包まれるように建っています。
担当したのは村野藤吾という建築家。新潟県糸魚川市の谷村美術館や、箱根プリンスホテルなどを手掛けた方です。
上空から見ると、このように白いドームが連なっているデザイン。もこもこと不思議な球体は、八端十字架のような模様を描いており、とてもユニークな姿。
レースに包まれた館内
受付を済ませて館内へ。靴を脱ぐタイプの美術館で、スリッパに履き替えて鑑賞します。(館内は写真撮影禁止だったので、パンフレットを撮影したものをイメージとして掲載してます)
ドーム型の天井からは、白いレースのカーテンが吊るされています。まるでベッドに吊るされた天蓋のようなラグジュアリーな雰囲気。暖色系の照明は、カーテン越しに優しく館内を照らしています。
とても静かな空間で、日曜なのに鑑賞者は私以外おりません。まわりを気にせずゆったりとした時間を過ごすことができます。
清水多嘉示の彫刻・絵画
この空間に並ぶのは、原村出身の彫刻家・清水多嘉示(しみずたかし)の作品。もともとは絵画を学んでいましたが、フランスで見たブールデルの「アルヴェアル将軍の記念碑」に感銘を受けて彫刻も手掛けるようになります。
たくさんの作品を眺めていると、彫刻と絵画どちらにも登場するポーズがあることに気づかされます。それぞれの類似点を探してみるのも、彫刻・絵画両方を手掛ける芸術家の作品ならではの楽しみ方。
彫刻作品と同じポーズの女性が大自然の中で描かれていたり、はたまた彫刻を描いた絵画もあったり。彼の表現は、2つの技法の間を自由自在に行き交います。
また、諏訪大社下社秋宮の大きなブロンズ製の狛犬も彼の作品。館内には、同型の狛犬も展示されていました。
豊富な民俗資料
この八ヶ岳美術館は、歴史民俗資料館としての顔も持ち合わせています。原村内には縄文時代の遺跡が100近く存在しており、そこから出土した石器や土器なども展示されているのです。
彫刻作品を鑑賞したあとに見る土偶は、歴史資料というより芸術作品に見えてきます。作者はいったいどんなことを意図していたのか?想像が膨らんできました。
特に前尾根遺跡から出土した顔面装飾付釣手土器は非常にユニーク。土器の上部に顔のような装飾がされているのですが、まるで変顔のような表情でとってもコミカルな印象の作品です。
公募によって選ばれた「火の女神フゥーちゃん」という愛称も付けられています。たしかに、フゥーって顔してますね・・・!
屋外展示も忘れずに
駐車場から正面玄関までは少し離れています。自然の中の道を歩いていくのですが、周辺には木立ちの中に彫刻作品が数多く展示されています。
こちらは「伸び行く」という作品。3人の少女が手を取り合って遊んでいます。躍動感のあるポーズはもちろんのこと、3人のつま先・3点で自立しているバランス感覚に驚きです。
森の中に並ぶ小品たち。清水多嘉示の作品とは違うテイストなので、別の彫刻家のものでしょうか?そう思って見てみると、そこに刻まれていたのは「卒業生一同」の文字。どうやら地元である原中学校の卒業記念制作のようです。
彫刻家清水多嘉示が生まれたこの地で、再び芸術の芽が出ることを願って、このような活動が行われるようになったそう。思春期の多感な時期に芸術と深く向き合う機会があるということは、その後の財産になることでしょう。
アクセスと営業情報
中央自動車道の諏訪南ICより約10分、小淵沢ICより約15分。
JR中央本線の富士見駅・茅野駅それぞれからバスで向かうこともできますが、バス停《原村役場》で乗り換えが必要になります。乗り継ぎがスムーズに行っても1時間ほど、タイミングが悪いと2時間以上かかることもあるので、思い切ってタクシー利用を考えても良さそうです。(富士見駅から15分ほど)
開館時間 | 9:00~17:00 |
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休館日 | 年末年始 ※年に3回ほど展示替え休館あり |
料金 | 510円 |
公式サイト | https://yatsubi.com/ |
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