周防大島の奥地にある、戦艦陸奥(むつ)に関する資料が並ぶ展示施設。旧日本海軍のエースであった陸奥は、当時世界でもトップクラスの性能を誇っていました。しかし、最強といわれた戦艦は、謎の最期を遂げることに・・・。
休館日:年中無休
料金:430円
陸奥と長門は日本の誇り
最強・最速の戦艦といわれた陸奥(むつ)は、姉妹艦である長門(ながと)とともに、旧日本海軍の中でトップクラスの性能を誇っていました。
当時世界に7隻しかない40cm砲搭載艦であり、長門とともアメリカやイギリスの戦艦と肩を並べて「世界七大戦艦」に数えられていたことからも、そのスペックの高さは表れています。
両艦は日本海軍の象徴として広く人々に親しまれており、一般市民からも人気でした。「長門と陸奥の主砲が太平洋を睨んでいれば、アメリカは攻めてくることができない」といったコトバが生まれるほど、国民にとってのヒーローであったのです。
謎が残る陸奥の最期
そんな人気を博していた陸奥も最期の時を迎えます。
それは1943年の6月、周防大島の沖にある柱島泊地に停泊していた際の出来事。艦上に突如煙が立ち上がり、爆発音が鳴り響きます。船体は真っ二つに割れて沈没。乗組員1,471人のうち、1,121人が帰らぬ人となりました。
敵軍の潜水艦による奇襲ではないかと現場は混乱、すぐさま警戒態勢が取られましたが、敵艦の姿は見つからず。
その後、弾薬の自然発火、乗組員の放火など様々な原因が推測されましたが、確かなことは現在も明らかになっておりません。謎の最期、そう書くとミステリアスに聞こえますが、当時戦艦が爆発事故で沈むことは珍しくなかったそう。おそらく、陸奥も何らかの事故で爆沈してしまったのではないでしょうか。
陸奥をテーマにした記念館
館内には、陸奥を再現した模型や日本各地より寄せられた資料、乗組員たちの写真や遺筆など陸奥に関連する様々な品が展示されています。
映像コーナーでは、「大爆発の謎」「大戦艦陸奥」という2本の番組を見ることができます。陸奥がどのような戦艦だったのかとてもよくわかるので、最初に見るのがおすすめです。
陸奥館内をイメージした海兵モデル室は、想像よりもずっとしっかりとした2段ベッドのお部屋。大和や武蔵といった戦艦は、その居住設備の豪華さから「ヤマトホテル」「武蔵屋旅館」などと揶揄されていました。もしかしたら陸奥もそれに準ずる暮らしやすさがあったのかもしれません。
海底から引き揚げられた品々
戦争が終結し、1947年に最初の引き揚げが行われますが、海底での作業は難航、やむなく中止となっていしまいます。
陸奥の本格的なサルベージが行われるのは、沈没から27年が経った1970年。8年間にも及ぶ長い作業が行われ、艦体の75%を引き上げることに成功します。
陸奥記念館には、そのときに引き揚げられたパーツや備品がずらりと並びます。並べられた引き揚げ品には、船の部品や軍用品に混じって、弁当箱や尺八などのアイテムも。
日本各地に散らばる陸奥
陸奥の引き揚げ品は、広島県呉市の大和ミュージアムにも展示されています。建物前の屋外展示エリアに並ぶのは陸奥の41センチ主砲身。こちらは呉の工場で製造されたもので、当時世界最大の艦載砲でした。
その隣には巨大なスクリュープロペラと主舵。艦尾フェアリーダー、主錨、艦尾旗竿も並びます。
さらに、陸奥の引き揚げ品は、他の場所にも散らばっています。横須賀のヴェルニー公園には主砲、東京の靖国神社遊就館には小錨、長野県の聖博物館には主砲身やボイラー蒸気通送管、和歌山県の高野山奥の院には第四砲塔の基部など、全国各地の様々な施設に展示されています。
どのような経緯で各地へ送られているのかは定かではありませんが、陸奥に対する愛や、陸奥とともに命を落とした方への鎮魂の思いが込められているはずです。
今も海底に眠る陸奥
沈没した陸奥の遺構は、今も瀬戸内海の海底に眠っています。な、な、なんと、その陸奥を見に行くことができるダイビングツアーもあるらしい!
とても気になりますが、陸奥が眠るのは水深40m。そこまでの深さに潜るにはオープンウォーターやアドバンスドといったライセンスでは不可。マスタースクーバダイバーなどを保持した、かなり本格的なダイバーでないと辿り着くことができません。戦艦とダイビングへの愛が深い方しか、陸奥に会うことはできないのです。
余談ですが、陸奥と姉妹艦であった長門は沈むことなく戦い続け、戦争終結時も航行可能な状態でした。その後、アメリカ軍に接収され、核実験であるクロスロード作戦の標的艦としてアメリカの戦艦とともにビキニ環礁に沈むこととなります。
現在長門は、マーシャル諸島のダイビングスポットとなっております。ただし、会いに行くにはライセンスはもちろん、かなりの費用がかかる模様。生半可な気持ちで海底の戦艦に会うのは難しいようです。
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