徳川家康が眠る、山上の神社。華やかな御社殿や、金色の甲冑を展示する博物館など見どころが多く、静岡を代表する人気の観光スポットです。社殿に配置された多数の葵の御紋の中には、逆さまに描かれた「逆さ葵」が隠れています!
家康を祀る神社
久能山東照宮は静岡市駿河区の久能山頂に建つ神社。御祭神は東照大権現。江戸幕府を開いた徳川家康のことです。
もともとは久能城という武田信玄が築いた城郭でしたが、武田氏が滅びると、徳川家康の領土へ。関東移封ののち江戸幕府を開いた家康は、嫡男の秀忠に将軍職を譲ると、かつて今川氏のもとで幼少期を過ごした駿府(静岡)へと移ります。駿府城を拡張したり静岡浅間神社を修繕したりと、駿府のまちを整えていきます。
中でも「久能山は駿府城の本丸」と重要視し、晩年には「遺体は駿河国の久能山に葬るように」と遺します。これを受けた2代将軍である徳川秀忠によって、この東照宮は建立されました。
アクセスは2パターン
久能山東照宮へのアクセスは大きく2パターンあります。旅程や体力に合わせて、事前に計画を立てておくのがおすすめです。
静岡駅からバスで約22分のバス停《東大谷》へ行き、乗りかえて約10分のバス停《久能山下》へ。そこから徒歩20~30分ほど。道中には、1,159段の石段が立ちはだかります。
静岡駅からバスで45分ほどのバス停《日本平ロープウェイ》から、日本平ロープウェイでわずか5分。ちなみに、日本平駅周辺の駐車場は無料です。
時間だけ見るとロープウェイの方が圧倒的に早く感じますが、運行時刻が決まっており、なおかつ混雑で待ちが発生する可能性があります。平日でもバスツアーなどとバッティングしてしまうことがありますので、時間には余裕を持っての訪問がおすすめです。
ロープウェイで久能山へ
本来の参道である①からアクセスしたい気持ちが強かったのですが、今回はスケジュールの時間が限られているため、②にすることにしました。
ということで、車で日本平ロープウェイ乗り場へ。日本平夢テラスの隣にある「日本平駅」から東照宮のある「久能山駅」までをわずか5分で結ぶお手軽なロープウェイ。「ロープウェイ往復+東照宮拝観」、「ロープウェイ往復+東照宮拝観+東照宮博物館入館」といったセット券も販売しております。
基本は9:10~16:45の間で15分間隔、11時台~14時台は10分間隔となります。出発時間より少し前に乗り場へ向かったのですが、バスツアー団体と一緒になってしまい、乗り場には行列が・・・!これ1本逃すたびに15分遅れていくのはスケジュール的にちょっとピンチ、と思ったのですが、5分間隔のピストン運行に切り替えてくれたのでさくっと乗車できました。
日本平を出発したロープウェイは、久能山に向けて下っていきます。思えば、下りスタートでロープウェイに乗るのって初めてです!
和風なデザインのゴンドラは、御殿様・御姫様が乗る御駕籠をイメージされています。47名乗りとなかなか大型なので、乗り場の行列は意外と早く進みます。
見どころ豊富な境内
あっという間に久能山駅に到着。ロープウェイで来たので、残る石段は100段ほど。
石段の先にそびえるのは楼門。掲げられた「東照大権現」の扁額は、後水尾天皇による勅額とのことです。
こちらは五重塔跡。高さ約30mの五重塔がそびえていましたが、神仏分離令にともない撤去。現在は塔の代わりに、駿府城内から移植されたソテツが立派に育っています。
梅を愛していたという家康にちなみ、境内では多数の梅が花を咲かせています。家康お手植えとされる「実割梅(みわりうめ)梅」や「家康梅」も見かけました。
さらに、2月下旬の訪問でサクラの花も!12月下旬より花咲く「寒桜」にはじまり、「河津桜」「寒緋桜」「大寒桜」など様々な種類のサクラが花開いて行きます。4月中旬くらいまでと、非常に長い期間サクラの花を見ることができるのです。
絢爛たる御社殿
進んだ先に見えてくるのは御社殿。
豪華絢爛な装飾が美しい建築は、徳川家に関わる重要な建築を多く担当した名工・中井正清によるもの。1617年に建てられ、2010年には国宝にも指定されました。歴史ある建築にもかかわらず輝きを失っていないのは、50年に一度漆の塗り替えが行われているため。近年では2006年に完了しました。
本殿と拝殿が一体となった建築で、このような建築を「権現造」と呼びます。日光東照宮や上野東照宮でも見ることができますが、この久能山東照宮が発祥であるそう。
御社殿を取り囲む玉垣にも色鮮やかな彫刻がたくさん。鶴、孔雀、唐獅子、麒麟など様々な動物や神獣が彫られており、ひとつひとつじっくり見ていきたくなります。
この御社殿に参拝すると北東に向いて拝む形となります。地図で見るとわかるのですが、その方向には富士山がそびえており、さらにその先へ直線を伸ばすと日光東照宮へとつながります。北東の鬼門に富士山が来るように建設したとも言われておりますが、江戸幕府の鬼門封じについては長くなりそうなのでこのあたりで。
家康公が眠る神廟
御社殿の裏に延びる廟所参道。家康に仕えた武将が奉納したという石燈籠がずらりと並ぶその先には、神廟(しんびょう)があります。
ここは御祭神徳川家康公の御遺骸を埋葬した所。もともとは小さな祠でしたが、木製では朽ちてしまうことから、3代将軍・徳川家光によって石塔に建て替えられます。江戸時代までは御宝塔と呼ばれており、明治時代以降は神廟という名に改められました。おそらく神仏分離の影響でしょう。
先ほどの御本殿は南西向きでしたが、こちらの神廟は西向きに建てられています。家康の御遺命であり、家康の両親が子授け祈願を行った「鳳来寺」、岡崎松平家の菩提寺である「大樹寺」、家康誕生の地である「岡崎城」、そしてその先の「京の都」へと続いているそう。
神廟のそばには立派なクスノキが。こちらは「金の成る木」。なぜ金の成る木なのかは、現地の案内板にてご確認ください・・・!
逆さ葵を探せ
徳川家の家紋といえば、「三つ葉葵」。水戸黄門の印籠でもおなじみ、葵の葉が3枚描かれた紋です。家康を祀る東照宮では、随所にこの紋を見ることができます。
さて、この写真を見て違和感があった方は恐ろしい観察眼の持ち主です。実は、1つだけ逆さまになっているものがあります。これは間違えてしまってわけではなく、完璧なものは衰退の一途を辿ることとなるため、あえて未完の状態にしているといわれています。
通称「逆さ葵」と呼ばれるこの紋、御本殿に全部で3つあるそう。広い境内全域ならともかく、御社殿だけなら一周すればすぐに見つかりそう・・・そう思ったのですが、葵の御紋はとんでもなく数が多いため、非常に難易度が高いです。じっくりと見て行った結果、なんとか3つ見つけました!すべての逆さ葵は西側(拝殿に向かって左側)、神廟へ進む途中に集中してあります。
先ほど貼った写真が、①つ目、神廟へ向かう1つ目の門をくぐる直前で右上を見ると一番左端にあります。
②つ目は、そのまま門をくぐって振り返ると拝殿の屋根の角にあります。
③つ目は、門をくぐってすぐ右を向き、本殿の右から19番目あたりにあります。
注意点は、ずっと上を見ることになるので、ものすごく首が疲れます。逆さ葵チャレンジする方、集中しすぎて首を傷めないように気を付けてくださいね。
金色の甲冑と洋時計が見られる博物館
ロープウェイの久能山駅からすぐ近くには、久能山東照宮博物館が建っています。
宝物を中心に2,000点もの品々を収蔵しています。いわゆる宝物館的な施設ですが、徳川家に深い神社であるため徳川歴代将軍の「武器・武具」なども見ることができます。
特に、徳川家康公ゆかりの品が多数。「書物」や「掛け軸」など少し難しいものだけでなく、家康が今川家の人質時代に使用していたとされる「木刀」、薬を刻む際に使用していたという「小刀」、さらには家康が所有していた「目器(手持ち式の鼻眼鏡)」、家康の硯箱から見つかった現存日本最古とされる「鉛筆」など、日常的な道具も。生活がイメージしやすく、なんだか親しみが持てます。
注目は、スペイン国王が徳川家康に送ったとされる「洋時計」、大河ドラマでも登場した金ピカの具足「金溜塗具足」。どちらも非常に見ごたえがあります。
展示室は1階と2階の二部屋ありますが、展示ボリュームはほどほど。さっと見るだけなら10分程度でもまわれるくらいですので、参拝と合わせてぜひお立ち寄りください。特に静岡市歴史博物館に訪問された方にはおすすめです。そこで展示されていたレプリカの実物に多く出会うことができるため、ちょっと感動するかもしれません・・・!
時期によって展示内容は異なるようです。どうしても見たいものがある方は、公式HPで確認するか、直接お問い合わせください。
突然現れるプラモデル
さて、これにて東照宮の記事もおしまい・・・と思ったところで、最後にこちらを紹介させてください!
神楽殿のすぐそばに配置されたのは、謎のショーケース。中を覗いてみると、なんとプラモデルがずらりと奉納されています!
今でこそプラモデルのまちとしても知られる静岡市。実は、その発展と東照宮には深いつながりがあります。大御所となった家康が江戸から駿府へと拠点を移す際、静岡浅間神社の修繕や久能山東照宮の造営のために全国各地より優秀な職人を集めます。仕事を終えた職人たちは駿府に定住、技術を活かして人形や竹細工などを制作して暮らしていました。そのものづくりの技術は昭和には木製玩具や教材の作成へと姿を変え、今日のプラモデル制作へと受け継がれていったそうです。
遠い現代においても、その影響を伺い知ることができる徳川家康。改めてその存在の大きさに気づかされます。
なお、ガンプラには武者の世界をモチーフにしたシリーズがあり、戦国武将がモデルになっているものもあります。もちろん、その中には徳川家康頑駄無も。ちゃんと歯朶(シダ)の葉をあしらった家康のシンボル「歯朶具足」を装備しています!
見学所要時間と拝観情報
見学所要時間は、東照宮参拝+逆さ葵探し+博物館で【50分】程度でした。10:30頃に日本平駅からロープウェイに乗って11:40頃また日本平駅に戻ってきたので、ロープウェイの待ち時間&乗車時間含めると、トータルで【1時間10分】ほど。
ちなみに、日本平駅に帰って来ると、到着時には見えていた富士山が全く見えなくなっていました・・・!日本平駅すぐそばの日本平夢テラスと合わせて訪問する場合、富士山がもし見えていたら先に夢テラスに行くのがおすすめです。見れるときに見ておく精神です。
拝観時間 | 9:00~17:00 |
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料金 | 社殿500円、博物館400円、共通券800円 |
公式サイト | https://www.toshogu.or.jp/ |
※掲載の情報は2023年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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