自然に溶け込むアートミュージアム『秋野不矩美術館』(浜松市)

静岡県

地元出身の日本画家・秋野不矩(あきのふく)の絵画を収蔵するアートミュージアム。靴を脱いで入る館内では、作品をゆったりと鑑賞することができます。藤森照信によるオリジナリティあふれる建築も世界観を引き立てます。

2021/4/18(日)

丘の上の美術館

浜松市北部の天竜区にある秋野不矩美術館。丘の上に立つかわいらしい美術館で、まるでジブリ映画にでてきそうなファンタジックな印象のミュージアムです。

建築を担当したのは、藤森照信氏。滋賀県近江八幡市にある「ラコリーナ近江八幡」や、岐阜県多治見市の「モザイクタイルミュージアム」など、日本各地に独創的な建築を作り上げている方です。(藤森照信氏の建築についてはコチラ)

実は、藤森照信氏を希望したのは秋野不矩ご本人。長野県茅野市にある「神長官守矢史料館」を見た彼女の希望により実現したそうです。

ぬくもりある館内

外観の雰囲気は、館内へも続いていきます。モルタルが塗られた壁に、自然光が降り注ぐ、温かみのある空間。

この美術館の最大の特徴は、展示室へ入るのに靴を脱ぐということ。これは、「秋野不矩の作品に土足は似合わない」という藤森照信のアイディアだそう。

展示室では、床に座って作品を鑑賞することも可能。ベンチやソファが置かれている美術館は多くみかけますが、このようにリラックスして鑑賞できるのは初めてです。なお、スリッパはありませんので、必要な方は靴下の用意をお忘れなく。

2階は特別展示室。こちらは靴を履いたまま。

秋野不矩の生涯

秋野不矩は、静岡出身の女性日本画家。明治41年に生まれた彼女は、一度教師になりますが絵画への道をあきらめきれず千葉県の画家、石井林響のもとに弟子入り。そこで様々な教えを受けます。

その後は、「創造美術」を結成したり、京都市立美術専門学校助教授へ就任したりと、様々な活動を行っていきます。

昭和37年(1962年)、54歳にしてインドへ赴任を決意。現地の大学で日本画家を教えつつ、多大なインスピレーションを受けます。帰国後は、インドをテーマにした作品を多く描いていきます。

平成11年(1999年)、91歳にして文化勲章を受章。文化として国に認められました。

優しくも繊細な作品

常設展示室は2部屋で、彼女の作品が数十点展示されています。

まず目に入るのは平成11年(1999年)に完成した「ガンガー」。テレビ東京の「新美の巨人たち」でも特集されていた、彼女の代表作の一つです。

黄金に輝くガンジス川を、黒い水牛の群れが泳いでいきます。光り輝く夢の世界のような作品ですが、左奥にたちこめる黒雲がその後の嵐を予感させます。

昭和63年(1988年)作の「朝の祈り」。南インドの寺院周辺に住む僧侶の家では、毎朝家の前に信仰する神のシンボルを描く風習があるそう。女性の赤い衣服と、落ちた黄色い花が何とも鮮やか。

ヒンドゥー教の寺院を描いた「ラージャラーニー寺院」。実際はそれほど巨大な寺院ではないのですが、不思議と砂漠の中の巨大建築のように見えてきます。おそらく手前を水平に走る柵の部分が線路の陸橋のように見えるため、それに合わせた縮尺に置き換わってしまうのでは。

アクセスと営業情報

電車の場合は天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅から徒歩約15分ほど。車の場合は新東名高速道路の浜松浜北ICから約10分ほど。

開館時間 9:30~17:00
休館日 月曜、年末年始、展示替え期間
料金 所蔵品展310円 ※特別展は異なる
公式サイト https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/akinofuku/

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