暗闇に浮かび上がる幻想的な釣燈籠『春日大社』(奈良市)

奈良県

全国に約1,000社あるといわれる春日神社の総本社。年に2回行われる「万燈籠(まんとうろう)」で知られていますが、特別参拝へ進めば年間を通してその雰囲気を味わうことができます。今回はまだ参拝客の少ない早朝に訪問してみました。

訪問日:2023/5/7(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

1200年の歴史を持つ古社

藤原京から平城京へと都が移された奈良時代。768年に常陸(茨城県)の鹿島から「武甕槌命(タケミカヅチノミコト)」を祭神としてお迎えしたのが春日大社のはじまりです。

中世には神道と仏教が融合した「神仏習合」により興福寺とつながりを深め、「春日興福寺」とも呼ばれていたそう。

全国に約1,000社あるといわれる春日神社の総本社であり、1998年には「古都奈良の文化財」として世界遺産にも登録されました。

圧巻の石燈籠

近鉄奈良駅や東大寺方面から向かうと、一之鳥居から本殿まで約1.7キロの参道を歩きます。徒歩で約20分の道のりには、万葉集に収録される歌に詠まれた植物をあつめた「萬葉植物園」や、国宝を始め様々な物品が収蔵・展示された「国宝殿」など、多くの見どころがあります。

そんな中でも目を引くのは、参道の両側にずらりと並んだ石燈籠。その数はなんと2,000基というから驚きです。貴族や武士を始め広く一般庶民より奉納されてきたものであるそうです。

ほぼ全ての石燈籠には「春日社」と刻まれていますが、わずか15基だけ「春日大明神」と刻まれたものがあるそう。「一晩のうちに3基見つけるとお金持ちになれる!」なんていうウワサもあるようです。私も歩きながらちらちら見ていたのですが、全く見つからず・・・。参道には面していないので、偶然見つかる可能性は低いという話も耳にしました。

回廊に包まれた御本社

参道を抜けた先にある御本社(大宮)。回廊に包まれた敷地内には、四棟の御本殿をはじめとした重要な建築が並んでいます。

拝殿はなく、こちらの幣殿が拝所となっています。一般の参拝者はここからお参りします。

慶賀門のすぐそばに生える「砂ずりの藤」。樹齢は700年以上といわれる古木で、花房が地面にすれるほど伸びることから、このような名前で呼ばれています。

西回廊にずらりと並ぶ釣燈籠がちらっと見えます。こちらも石燈籠と同様に参拝者によって奉納されたもので、その数はなんと1,000基にも及びます。

もっとたくさんの釣灯籠を見てみたい方は、次で紹介する「特別参拝」がおすすめです!

見逃せない特別参拝

春日大社に来たら、ぜひとも体験したいのが御本殿の特別参拝。幣殿のそばで受付を行っており、受付時間は9:00~16:00。初穂料は500円です。

受付から進むと、先ほどの幣殿からはあまり見えなかった中門(ちゅうもん)がよく見えます。唐破風の付いた二層の楼門は存在感抜群。この中門から御本殿に参拝します。

こちらは御蓋山浮雲峰遥拝所。春日大社第一殿の御祭神である「武甕槌命」が白鹿の背に乗って降臨したと伝わる御蓋山(みかさやま)の浮雲峰(うきぐものみね)を遥拝する場所です。

樹高25m、樹齢約1000年といわれる社頭の大杉。鎌倉時代後期に描かれた「春日権現験記」にもその姿が描かれているのですが、そこではまだ幼木であるそう。樹齢約1000年というのもリアリティがありますね。

大杉の根本からはイブキ(ビャクシン)の樹が生えています。樹齢約500年といわれる立派な樹ですが、なんと直会殿の屋根を突き破っています。

「春日大社では神域において木を切ることを禁じていた」という話を聞いたことがあります。そのため、今も「春日山原始林」として、原生林が広がっているそう。屋根に穴を空けてまでイブキを残しているところからも、この春日大社がいかに樹木伝わってきます。

幻想的な釣灯籠

この特別参拝において大きな見どころとなるのが釣灯籠。順路となる東回廊では、釣燈籠がたくさん並ぶ姿を見ることができます。

釣り下げられた燈籠の間を通るため、至近距離でじっくりと見学することができます。日付や家紋が記されていたりと、ひとつひとつ異なっる釣灯籠。宇喜多秀家や直江兼続、藤堂高虎といった戦国武将が奉納したものもあります。

そんな釣灯籠が光を放つのが「万燈籠(まんとうろう)」。2月の節分8月の中元、年2回だけ行われる神事で、参道の石燈籠2,000基と、御本社の釣燈籠1,000基すべてに火が灯されます。

特別参拝で見学することができる藤浪之屋では、そんな万燈籠を再現した空間が広がります。

薄暗い室内に輝く無数の燈籠。特別参拝に参加すれば、いつでも灯籠が光る幻想的な姿を体感できます。

シカの存在感

奈良と言えばシカ。この春日大社も奈良公園に隣接しており、参道周辺には多数のシカの姿が。

石燈籠の隙間からこちらを覗くシカ。神聖な雰囲気が出ており、すごく絵になりますね。

実は、春日大社を語る上でこのシカの存在をシカト無視することはできません!

このシカたちは、春日大社の「神使(しんし)」として保護されています。前述の通り御祭神の「武甕槌命」が白鹿に乗ってきたため、神聖な動物として扱われているのです。なお、このシカたちは飼育されているわけではなく野生動物。国の天然記念物にも指定されています。

ちなみに、シカの前で「おじぎ」をするとくいっと頭を下げておじぎを返してくれるシカもいます!奈良公園に訪れる際は、ぜひやってみてくださいね!

アクセスと参拝情報

一之鳥居までは、近鉄奈良駅より徒歩10分、JR奈良駅より徒歩20分ほど。そこから御本殿までは徒歩20分ほど。

御本殿や国宝殿が目的の場合は、JR奈良駅・近鉄奈良駅からバスで11~15分のバス停「春日大社本殿」にて下車すればすぐ目の前です。参拝者駐車場もここにあり、乗用車1,000円で停めることができます。

開門時間 御本社:6:30~17:30 (※11~2月は7:00~17:00)
※特別参拝は9:00~16:00
公式サイト https://www.kasugataisha.or.jp/

※掲載の情報は2023年5月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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