個性と呼ぶには刺激が強すぎる横尾忠則の作品を多数収蔵・展示しているミュージアム。言語化するのも難しい作品群に、目が眩んでしまう美術館です。
横尾忠則の美術館
兵庫県西脇市生まれの芸術家・横尾忠則の作品を展示したミュージアム。もともとは「兵庫県立美術館王子分館・西館」でしたが、横尾本人より作品が寄贈されたことをきっかけにリニューアル。2012年に「横尾忠則現代美術館」としてオープンしました。
建築を担当したのは村野藤吾。長野県原村の「八ヶ岳美術館」や新潟県糸魚川市の「谷村美術館」など、美術館も多く手掛けています。
4階建ての建物で、1階が受付・オープンスタジオ、2階と3階が展示室、4階がアーカイブルームとなっています。
館内は基本的に写真撮影可能!ただし、フラッシュや動画は禁止など、いくつかルールもありますので、気になる方は事前にご確認ください。
美術館で写真を撮ることは賛否が分かれますが、気になる作品をスマホに納めて持ち帰ることができるのは嬉しいです。
刺激的な原郷の森
2023年5月27日(土)〜8月27日(日)の期間は『原郷の森』を開催中。2022年3月に出版された同名の小説をテーマにした展覧会であり、抽出された文章とともに作品が展示されています。
数ある作品の中で、まず目に止まったのは《山中温泉ー美しい星》。情緒あふれる温泉の風景ですが、上部には宇宙空間が、右下には懐中時計を手にした宇宙人の姿が。
《鎮魂(ダリの場合)》という作品に描かれているのは、横たわる人とその身体を包む緑色の樹木。周囲にはレジデンツのような1つ目の人々が集まります。背景に奥行きがあり、広い世界の中の大きな出来事といった印象の絵画です。
こちらは《鎮魂の海》。そのタイトルや、上部を泳ぐウミガメ、潜水服を着た人から海底を連想させる作品。左には馬に乗る海の神らしき存在、奥には行進する騎兵隊、そして左下には福助が描かれており、錯乱させられうような感覚です。
作品の中に広がる摩訶不思議な世界・・・。いずれも小説を読めばはっきりと見えてくるのかもしれませんね。
幻想的なY字路作品
様々な作品がある中で、特に目を奪われたのが《TとRの交差点》。左奥と右奥、2箇所から伸びる2つの坂道の交差点が描かれた作品です。
絵の前に立つと、何か重大な選択を迫られているような気持ちになります。
よく見ると、右手前に不思議なシルエット。T字路にぶつかると家に入ってきてしまう沖縄の魔物・マジムンが思い浮かびますが、「石敢當」がないので考えすぎかもしれません。
さらに似たような構図の《暗夜行路 N市ーⅠ》も見かけました。
志賀直哉の小説の名を冠した作品は、先程の《TとRの交差点》と非常に似ています。車のライトで家屋が照らされる様子が物凄くリアル。
この2つの作品は、横尾忠則のライフワークである「Y字路」と呼ばれる作品群のうちのひとつ。生まれ故郷である兵庫県の西脇からはじまり、150点以上ものY字路を書き続けているそう。
横尾忠則ってどんな人物?
横尾忠則とはいったい、いかなる人物なのでしょうか?簡単にその経歴をまとめてみました。
1936年、兵庫県西脇市に生まれます。神戸新聞社にてグラフィックデザイナーを務めていましたが、ニューヨーク近代美術館での「ピカソ展」を見てから画家へ(通称:画家宣言)。以降、その活動の幅を広げていきます。
ニューヨーク近代美術館で個展を開催した他、東京オリンピックのピクトグラム作成に携わったり、大阪万博のパビリオンの一つ「せんい館」の建築デザインを担当したり、マイルス・デイビスのアルバム『アガルタ』のジャケットを手掛けたり、寺山修司の劇団「天井棧敷」に参加したりと様々な場で活躍していきます。
驚くべきは、数多くの勲章を受章しているというところ。学術、芸術、スポーツ分野の功労者に授与される「紫綬褒章受章」を受賞。さらに公益のため私財を寄附した人物に送られる「紺綬褒章受章」、加えて社会の様々な分野に功績を挙げた者に贈られる「旭日小綬章受章」も受賞。様々なかたちで国から認められた人物なのです。
なお、幼少期にさまざまな超常現象にあったという話も耳にしました。そのような経験は、彼の作風のルーツとなっているのかもしれません。
アクセスと営業情報
阪急神戸本線の王子公園駅より徒歩5分、JR神戸線の灘駅より徒歩10分、阪神本線の岩屋駅より徒歩15分。
神戸市立王子動物園のすぐそばなので合わせての訪問もおすすめです!
開館時間 | 10:00~18:00 |
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休館日 | 月曜 |
料金 | 700円 |
公式サイト | https://ytmoca.jp/ |
※掲載の情報は2023年7月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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