東京国立博物館の中の一棟である平成館。常設展示のメインは地中から掘り起こされた考古品。縄文時代の土偶や弥生時代の土器、古墳時代の埴輪など古代を感じる展示品がずらりと並びます。何千年も昔の人々の作品をじっくりと味わい、古代ロマンに浸ることができる場所です。
平成に建てられた平成館
いくつもの博物館が集まる東京国立博物館。園内の奥地で比較的落ち着いた雰囲気の建物がこちらの平成館。皇太子徳仁親王(今上天皇)の成婚を記念して、1999年に建てられました。
建物の前庭の一部は、かつてこの東京国立博物館が東京帝室博物館であった時代に総長を務めていた森鴎外の総長室跡となっています。
森鴎外といえば、陸軍軍医として戦場に赴いたり、「舞姫」などを執筆した小説家としても知られている人物。晩年には、東京帝室博物館の総長でもあったのです。
考古資料がたっぷり
館内の常設展示室となるのが「考古展示室」。かつて表慶館に収蔵されていた考古資料が、平成館の完成とともに移転されました。
旧石器時代の石器や縄文土器・弥生土器、古墳時代の装飾具など、考古学的に価値の高いものがずらり。教科書の写真でおなじみの展示物もたくさんあるので、きっと「見たことある!」ってなるはずです。
館内には他にも「企画展示室」「大講堂・小講堂」、自販機があり休憩できる広い「ラウンジ」も備えています。本館や東洋館に比べると人は少な目なので、見学に疲れたらひと休みに立ち寄るのもおすすめです。
不思議な魅力の土偶や土器
考古展示の中でもファンの多いのが土偶。同じく群馬県の東吾妻町郷原より出土した『ハート形土偶』が展示されています。
こちらの土偶は独立したガラスケースで展示されているため、全方向から見学できるのがポイント。ライトもしっかりと設置されており、細部までじっくりと観察することができます。
土偶といえば、多くの人がまっさきに頭に浮かべるのが『遮光器土偶』。こちらは正面からのみの見学ですが、上から見下ろすことができます。頭部に穴が空いているのは初めて知りました。
手前に並ぶ大きな土器、よく見ると上部に人の顔がデザインされているのが見えますでしょうか。こちらは『顔面付壺形土器』。このような土器は、再葬墓に納められる骨壷として出土することが多いそう。描かれた顔面は、きっと亡くなった人を偲んで刻まれたのでしょうね。
ユーモラスな埴輪
出迎えるのは『埴輪 盛装女子』。高さ1m以上もある大きなハニワで、破損も少なくかなり状態の良い姿。着物の模様や耳飾りなど細かい部分もキレイに残っています。こちらは群馬県伊勢崎市豊城町横塚より出土したものだそう。
『埴輪 子を背負う女子』。その名の通り、背中には小さなお子様ハニワがくっついています。母と子というデザインは非常に珍しいものであるそう。私も初めて見ました!
一度見たら忘れられない表情の『埴輪 盾持人』。満面の笑みを浮かべているのは、邪悪なものが古墳に近づかないように、と考えられています。
脚が長くてアンバランスな馬。こちらは実は馬ではなくて『鹿形埴輪』。悲しげな表情は、狩られる寸前であるためと考えられています。
埴輪のようなデザインですが、なんだか雰囲気が異なるこちら、『石人』と呼ばれるもの。埴輪とともに古墳に並べられていたそうですが、鳥取県の一例を除いて九州の古墳でしか見つかっていないそう。
古代に限らない出土品
展示の中心は縄文・弥生・古墳時代ですが、それ以降の時代の出土品もあります。
不思議な形の大きな展示物。こちらは『鴟尾(しび)』といい、屋根に取り付ける飾りのことで、お城で見かけるシャチホコにあたります。
大阪府の鳥坂寺跡(高井田廃寺)より出土したものであるそう。この大きさから、寺院建築もかなりの規模であったと推測されます。
壁に懸けられているのは『押出蔵王権現像』。奈良県の天川村から出土したもので、飛び蹴りをかましているかのような姿が少しユーモラス。影が浮かび上がるライトアップも見事です。
きれいに並べられた金色のものは、東京都大島町より出土した『一分金』。江戸時代のもので、一分金4枚で小判1枚と同等とされていたそうです。
東京国立博物館の中では常設展示が一部屋なのでボリュームは少なめ、さっと見るだけなら20分ほど、じっくり見ても1時間弱で見終わります。
東京国立博物館のほとんどの建物は入館券が共通。せっかく来たら、本館や東洋館も時間の許す限り見ていきたいもの。特に本館は連絡通路で繋がっているので、合わせて見学がおすすめです。
また、毎年年始には企画展示である博物館に初もうでも開催。1月に訪問される予定の方は、ぜひこちらもお忘れなく!
アクセスと営業情報
JR上野駅公園口、または鶯谷駅南口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線の上野駅からは徒歩15分。
開館時間 | 9:30~17:00 ※金土に行われていた夜間開館は2023年1月時点では中止となっています |
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休館日 | 月曜 ※祝日の場合は開館、翌日休館 |
料金 | 1,000円 |
公式サイト | https://www.tnm.jp/ |
※掲載の情報は2023年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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