東洋のロダンと称された朝倉文夫の世界に浸る『朝倉彫塑館』(台東区/谷中)

東京都(23区)

朝倉文夫の彫刻作品を多数展示したミュージアム。作品はもちろん、2つの建物を組み合わせたかのような建築や屋上と中庭に造られた庭園も見どころ。こだわりが詰まった独特な空間を楽しめるスポットです。

訪問日:2024/1/14(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

アトリエ&住居を公開した施設

日暮里駅のすぐ近く、観光客でにぎわう谷中銀座のすぐ近くに建つのが朝倉彫塑館。明治生まれの彫刻家・朝倉文夫のアトリエ兼自宅であった建物を公開しているミュージアムです。

こちらは1935年に建てられた建築。入口は黒くモダンな鉄筋コンクリート造りの「アトリエ部分」ですが、その奥には丸太と竹をモチーフにした情緒ある数寄屋造りの「住居部分」が連なっています。

2つの異なる建築が組み合わさったユニークな建物であり、その和洋折衷の特異な建築は朝倉文夫本人が自ら設計したそう。こだわりがつまった唯一無二の建築なのです。

この独特な建築スタイルは、外側からはわかりにくいです。入館して内部を進んで行くことで、その切り替わる様子を楽しむことができます。

見学前に知っておきたい注意点

予約などは不要で気軽に入館できるミュージアムですが、いくつか注意点があります。

①撮影は基本NG
館内のほとんどの場所は撮影禁止となっています。展示物や屋内だけかと思いきや、窓から覗く中庭部分もNGとなっていました。その代わり、「屋上庭園」と「蘭の間」は撮影が可能です。また、現地で聞いた話によると、10:30まではアトリエ部分も撮影可能となっているそうです。

②靴を脱ぐ必要あり
入館する際に靴を脱ぎ、袋に入れて持ち歩きます。下駄箱は無いのかなと思ったのですが、途中で屋上庭園へ行く際に履く必要があるため、持ち歩き式となっているようです。ちなみにスリッパは無く、靴下着用が必須。スリッパは持参しても使用不可であるそう。

③冷暖房がない
「住居部分」は暖房がないため、冬に訪れたところ結構な寒さ。床板もかなり冷たく、靴を脱いだ足はかなり冷えました。「アトリエ部分」はしっかり暖房があったのでそこまで過酷ではありませんが、寒がりな方は、屋外を歩くつもりで防寒していくのが良さそうです。

大迫力の彫塑作品

展示室となっているアトリエには、アール(曲面)に作り上げられた高い天井が特徴的。彫刻を下げるための昇降台を入れるため、コンクリートで造り上げたそうです。

ホールのような空間に、多数の作品がずらりと並んでいます。3mほどの《大隈重信像》、4mほどの《小村寿太郎像》と大型の作品はインパクト抜群。石や木を削る彫刻と、粘土などを使用する塑像を組み合わせたのが「彫塑」。独特な質感の彫塑作品を多数鑑賞することができます。

警視庁で活躍したという警察犬スター号をモデルにした《臥たるスター》では、制作時に指示したポーズでずっと待機してくれて人間よりも写実が楽であったというエピソードも添えられていました。

続く書斎では朝倉文夫と交流のあった中国の画家であり書家でもある呉昌碩(ごしょうせき)の作品が、そして応接室ではその呉昌碩の像も展示されています。

心が落ち着く庭園

「アトリエ部分」と「住居部分」の間には、池を中心とした中庭が広がっています。

こちらは朝倉文夫の考案をもとに、造園家の西川佐太郎によって造られた庭園。谷中の湧水を利用した池を中心とした庭であり、多数の黒い鯉、繊細な噴水、架けられた石の橋など細部まで見どころが詰まっています。

水の動きも様々なかたちで表現されています。噴水から吹き出す水、その水が落ちて作り出す波紋、鯉が動くときにできる流れと、飽きることなく眺めていられます。

さらに1月のウメから12月のサザンカまで、四季折々必ず白い花をつける木が植えられているそう。見どころの多い庭園、畳に腰掛けてたっぷりと眺めることもできます。

野菜と彫刻の屋上庭園

靴を履いて屋外の階段を上った先に広がるのは屋上庭園。ここはもともと菜園であり、現在もタマネギやニンニクが植えられています。朝倉文夫は、「芸術は自分と自然の間から生まれる」という思想のもと、自分の塾のカリキュラムに園芸を組み込んでいたそうです。

《ウォーナー博士像》といった作品も展示されています。町並みを背景にした姿はとても絵になりますが、あまりにも端っこに置かれているので落ちたりしないのか少し不安になります。

こちら《砲丸》という作品。まるで町を見守るかのように置かれています。

猫の間となったサンルーム

朝倉文夫の趣味の一つに、東洋ランの栽培がありました。そのための温室であったサンルームは、現在猫の作品を集めた「猫の間」となっています。

実は猫好きとしても知られており、多いときには10匹ものネコを飼っていたそう。ネコをモデルにした作品も多く残しており、「猫百態展」も構想していたとのこと。

躍動感あふれるネコたちの姿は、とっても可愛らしい。緊張感のある作品が多かったですが、最後にゆるんでしまいます。

ここは元サンルームであるため、日当たりは良好。ぽかぽかとした雰囲気は、実際にネコがいたらごろごろしてしまいそうです。

アクセスと営業情報

日暮里駅の北改札口を出て西口から徒歩5分ほど。

開館時間 9:30~16:30
休館日 月曜、木曜、年末年始 ※展示替えのための臨時休館あり
料金 500円
公式サイト https://www.taitogeibun.net/asakura/

※掲載の情報は2024年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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