江戸時代に造られた萩藩で最大規模の製鉄所跡。ここでは「たたら」という日本の伝統的な製鉄方法が行われておりました。祀られている「金屋子神」は、鉄と鍛冶の神でありながらもとても変わった神様であったようです。
山の中にある世界遺産
萩には「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」 として登録された世界遺産が数多くあります。
そんな中でも、市街地から遠く離れておりアクセス難易度が高いのが大板山たたら製鉄遺跡。山の中にあり、途中にはすれ違い困難な細い道も。
今回は朝イチで「恵比寿ヶ鼻造船所」と「萩反射炉」を訪ね、日中に離島の「見島」を訪ねた後、16:30頃にやってきました。
まずはガイダンス施設へ
製鉄遺跡のすぐ側には大板山たたら館が建っています。こちらは平成29年3月に完成したガイダンス施設。閉館時間ぎりぎりの訪問でしたが、スタッフのおばちゃんが優しく出迎えてくれました。

まずは5分ほどの映像から。製鉄所の仕組みや歴史を知ることができます。

良質な砂鉄を産出することから、古来より製鉄が行われていた中国地方。石見国にて産出された砂鉄は、北前船を利用して海路で奈古港まで運ばれ、そこから荷駄によって大板山まで運ばれていました。

港からも遠く離れたこの場所が選ばれた理由は、森林資源が豊富なため、燃料として大量に使用する木炭を作りやすかったそうです。
たたら製鉄を行うと大量の木材を利用します。周囲の木々を切り尽くしてしまうと、一度別の場所へ行き、森林が回復するとまた戻る、といったように転々としていくそう。この大板山たたら製鉄所の操業期間も、最初は宝暦期(1751~64年のうちの8年間)、次は文化・文政期(1812~22)、最後は安政~幕末期(1855~明治初め)と、3期にわかれて稼働しておりました。
再現できるアクリル板
大板山たたら館を出ると、目の前がその製鉄遺跡。当時の建物は残っておりませんが、幕末期の主要施設の遺構が保存されています。

礎石が並ぶのは元小屋跡。文化年間と安政年間それぞれの跡が重なっているようです。

元小屋というのは、生活に関わる事務を行なっていた場所。石垣の上に立っており、職人や家族が暮らす山内全体を見渡せるようになっています。
近くには、復元図が記されたアクリルプレートが設置されています。

建物の基礎に上手く重ねると、こんな感じで再現することができます!ぴったり合わせるのは少し難しいですが、とっても面白いアイディアですね!

様々な施設の遺構
石垣で囲われているのは砂鉄洗い場跡。原料の砂鉄の純度を高めるための施設です。ここに水を張り、砂鉄が水に沈むことを利用して純度を高めていました。

中心施設である高殿跡。原料の砂鉄と燃料の木炭を交互に投入して鉄の塊をつくる、「製鉄炉」が設置されていた場所です。

こちらの木枠は、炉内に風を送り温度を高める装置「天秤ふいご」の跡。足踏み式であり、3日間交代制で稼働して「鉧(けら)」と呼ばれる鉄の塊を生成していました。

ここにもクリアプレートがありました!きっとこんな感じで「天秤ふいご」が立っていたのでしょうね。

石垣で囲われているのは鉄池(かないけ)跡。先ほどの池は原料となる砂鉄を洗う場所でしたが、こちらの池は製鉄炉で生成された高温の「鉧」を池に沈めて急速に冷やすための場所です。

ここで精製された鉄は、洋式軍艦「丙辰丸」の製造に利用されたそう。あ!前々回の恵比寿ヶ鼻造船所跡で見ましたね!世界遺産同士がつながってきました。
改葬された墓地
少し離れた所にはたたら墓地。ここは職人とその家族の墓です。墓碑に刻まれた碑文から、島根県や広島県といった広範囲から労働者が集まっていたことがわかります。

「改葬」と記されていたのですが、何かをきっかけにここにまとめられたのでしょうか・・・?
この製鉄所跡、南半分は「山の口ダム」の建設により水没してしまい、現在残っているのは北半分のみ。おそらく墓地もダム建設にともない移設され、改葬されたのでしょう。
祀られる特異な神様
製鉄所跡から少し歩くだけ山に入った場所にあるのは金屋子神祠。金屋子神(かなやごしん)というのは、鉄と鍛冶の守護神として信仰される女性の神様。桂の木に降り立ち、鉄づくりを教えたと伝えられており、多くの製鉄所にて祀られているそう。

ここまでは、そういう神様がいるんだくらいの気持ちでしたが、調べてみると非常に特殊な神格があるという情報が。
なんと人の死を好むそう。そのため、遺体の入った棺桶を担いでたたら場のまわりを回ったり、たたら炉の周囲に遺体を吊るしたりすると大量に鉄が採れるようになったという伝説も残されています。この大板山でこのようなことが行われていたかどうかは定かではありませんが、非常に特殊な神様であったようです。
そんな金屋子神、どんな姿で描かれるのか気になり調べてみたところ、白い狐に乗って空を駆ける女性として描かれた絵図を見つけました。その姿は、ジブリ映画『もののけ姫』に登場する山犬にまたがるサンの姿と重なります。劇中ではたたら製鉄場も登場していることから、もしかしたらサンのモデルのひとつだったのかもしれませんね。


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