幾度も降りかかった災いを乗り越えて建つ、日蓮宗の総本山。本堂の墨龍や3代目となる五重塔、ロープウェイで向かう奥之院など見どころは豊富です。
拝観料:無料(ロープウェイは往復1,500円)
久遠寺へのアクセス
身延山久遠寺は、山梨県南巨摩郡身延町にあります。
車の場合、中央道を利用して東京から2時間ほど。
2020年6月現在、中部横断自動車道が下部温泉早川ICまで開通しており、年内には身延インターが開通する予定とのこと。現在建設中の道路につき、カーナビには表示されない可能性があるのでご注意ください。
電車の場合は、新宿から身延駅までが中央線特急、身延線特急を乗り継いで3時間ほど。身延駅からは1時間に1~2本ほどバスが出ております。所要時間は12分ほど。
悩む4つの駐車場
広い境内を持つ久遠寺。駐車場が複数あるのですが、それぞれ立地がだいぶ異なっています。とりあえず向かってみようとすると、どこの駐車場に停めれば良いか迷うことになりそうです、事前に目当ての駐車場の位置を確認してから訪問するのがおすすめです。
総門駐車場(有料)
おそらく一番最初に見かける駐車場。本堂から最も離れており、三門まで徒歩20分ほどかかり、そこから長い石段の菩提梯を登ることになります。遠い上に有料のため、門前町からじっくりと味わいたい人向けではないでしょうか。
仲町町営駐車場(有料)
三門までは徒歩5分ほど。三門&菩提梯を越えて参拝したいけど、少しでも歩く距離を減らしたい方向け。
せいしん駐車場(有料)
本堂までは、斜面を登る無料のスロープカーですぐ。ロープウェイ乗り場もすぐ近くです。菩提梯(石段)を通らずに本堂まで行けるので、最も歩かず済みそうな駐車場。駐車可能台数も多いため、とりあえずここを目指すのが良さそうです。
甘露門駐車場(無料)
本堂近くの甘露門目の前にある駐車場。アクセスも良く、なおかつ無料と良いことばかりに見えますが、台数が少ないのが難点。お寺関係者も利用しており、繁忙期の利用は厳しそうです。平日や早朝に訪問する場合はここが良さそう。
今回は平日の訪問だったため甘露門駐車場へ。10:00くらいで10台ほど空きがありました。駐車場からすぐの甘露門を抜けて境内へ!
※ついつい有料の駐車場は避けたくなってしまいますが、久遠寺自体の拝観料は無料なのでこれくらいの出費は全然アリではないでしょうか。
波乱万丈!日蓮の生涯
久遠寺は、日蓮宗の総本山。日蓮宗といえば、宗祖である日蓮の生涯はかなりドラマチック。「法難」という仏教に対する弾圧を何度も乗り越えていきます。参拝前に、ざっくりと年代順に出来事をまとめてみました。
■1222年 生誕
千葉県小湊に生まれます。
■1253年 立教改宗
31歳にして、お題目「南無妙法蓮華経」のみを唱える法華信仰を宣言。ここに日蓮宗が誕生します。
■1260年 立正安国論・松葉ヶ谷法難
政治や宗教のあるべき姿を説いた「立正安国論」を執筆。ときの最高権力者である執権・北条時頼に提出するも受け入れてもらうことはできません。他宗派を批判する内容が含まれていたため、浄土教信者の怒りを買い、松葉ヶ谷草庵を焼き討ちにされる松葉ヶ谷法難が発生。
■1261年 伊豆法難
立正安国論が政治批判と見なされ、幕府に捕らえられてしまいます。伊東へ流されることになり、途中の海上にある俎岩(まないたいわ)という岩礁に置き去りにされる伊豆法難が発生。その後、漁師に助けられて無事(?)伊豆へ流されます。
■1263年 鎌倉へ
罪が許され、鎌倉へと戻ることに。
■1264年 小松原法難
小湊から鎌倉へ移動中、東条小松原にて東条景信に襲われる小松原法難が発生。弟子が数名殉教し、日蓮自身も頭に傷を負ってしまいます。
■1271年 龍ノ口法難・佐渡配流
日照りに対する祈祷をめぐり良観房忍性と対決。龍口で斬首されそうになる龍ノ口法難が発生。絶体絶命かに思えましたが、江の島から強烈な光が射し、奇跡的にこれを免れます。結果的に、数名の弟子とともに佐渡島へ配流されることとなります。
■1274年 鎌倉、そして身延へ
佐渡島配流を赦免され、鎌倉へ戻ることに成功。蒙古襲来を予言するも、幕府には聞き入れられないため、幕府への働きかけを断念。鎌倉から身延へと移り、それ以降は山を下りることも、門下生以外と面会することも拒絶してしまいます。
■1282年 入滅
病が悪化し、療養のために下山して常陸の温泉へ。しかし、状態が悪化してしまい中断。池上邸(現在の池上本門寺)にて入滅。遺骨は身延へと送られました。
命を狙われたり、幕府に追われたり、配流されたりとかなり波乱万丈の人生。しかし、何があっても命を落とすことなく信仰を守り続けた生き様からは、強い信念を感じます。
火災を越えた数々の伽藍
「開基堂」
佐渡島から戻った日蓮を身延に招いた波木井実長(はきりさねなが)を奉っている奉る多宝塔。堂内には実長像が安置されているのですが、左目が輝いて見えます。
「棲神閣 祖師堂(せいしんかく そしどう)」
日蓮の御尊像を安置する大きなお堂。江戸時代に今の目白にあった鼠山感応寺が廃寺となった際、その木材を利用しているそうです。
煌びやかな装飾が施された絢爛な姿。数多くの彫刻が彫られているのですが、私が気になったのは破風にいるこの赤いお方。屋根を支える姿は邪鬼のようですが、それにしては貫禄があります。どちらかといえば風神・雷神といった神様のよう。検索してみたところ、「力神」というらしい。そして、実は東西南の3方向に設置されているそう。そこまで気が付けませんでした。
「大鐘」
吊るされた巨大な鐘。鐘をつくための撞木も3mほどあります。早朝と夕方に撞かれるのですが、この作法がかなりアクロバティックとのこと。動画検索してみたところ、地面に背中が付くほど綱を引いて鐘を撞いていました。
「五重塔」
もともと1619年に造られたのですが1829年に焼失。再建されるも1875年に再度焼失。その後、134年の時を経て2009年に再建されました。実に3代目となるこの塔、心柱には身延山中から切り出した杉が使用されているそうです。
墨龍が睨みをきかせる本堂
1985年に再建された重厚な本堂。内部は釈迦如来像・多宝如来像など多数の仏像が並んでおり、立体曼荼羅を形成しています。
そして、天井には大きな龍。「墨龍」と呼ばれる作品で、どの角度から見ても睨まれているように見える「八方睨み」の龍となっています。
そして爪の数は天龍寺の「雲龍図」と同じく5つ。龍の爪に関しては、天龍寺の記事にて。実はどちらも日本画家・加山又造による作品なのです。
本堂の地下には宝物館があります。9:00〜16:00に開館しており、入館料は300円。(木曜定休)
本堂天井に描かれた墨龍の下絵である「墨龍大下図」や、かつての久遠寺の様子を読み取ることができる「身延山絵図屏風」など、貴重な資料が展示されています。展示物に解説が付いているため、じっくり読むと、日蓮宗や久遠寺の知識が深まります。
ロープウェイで山頂へ
本堂の裏を進んでいくと、ロープウェイ乗り場が姿を現します。こちらは、身延山頂・奥之院まで一気にアクセスできる身延山ロープウェイ。毎時00分/20分/40分と20分おきに運行しており、往復料金は1,500円。
タイミングが悪くちょうど出発したところだったため、20分待ち。待合室で流れている久遠寺紹介映像を眺めていたのですが、これがとってもわかりやすくて勉強になります。アイスや飲み物、ちょっとしたお土産も販売しています。
出発時間2分前になると、乗車開始。真っ白でシンプルなゴンドラは木のぬくもりを感じるウッド調の内装となっています。こちらは日本各地の鉄道やバスなどのデザインを手掛けるインダストリアルデザイナー・水戸岡鋭治によるもの。
係員の方も一緒に乗車して見える景色の解説してくれます。自動音声はよくありますが、やっぱり生の人の声だと全然違います。
高低差763mをぐんぐん登っていきます。天気が良いと富士山や駿河湾も見えるそう。眼下に広がる森の中には、イノシシ、クマ、ニホンジカ、カモシカなどの動物が見られることも。
気がつけば霧の中に入り視界は真っ白。梅雨時はこうなってしまうことが多いそう。
約7分で山頂に到着。もし、ロープウェイを使用しないで登る場合は、約2時間30分の登山となります。文明の利器を取り入れてくれてありがとうございます・・・!
※実際は1時間30分ほどらしいが、初めての方向けに長めの時間を提示しているそう
霧に包まれた奥之院
ロープウェイの山頂駅を降りると展望台が・・・あるのですが、霧で何も見えません。
奥之院への参道が繋がるのですが、霧で数メートル先までしか見えません。景色は楽しめませんでしたが、幽玄さが際立っており雰囲気抜群。
日蓮自らが植えたとされる「お手植えの杉」が4本植えられています。それぞれ母、父、恩師、立正安国の思いが込められているそう。
お手植えと聞くと、ついつい近代に植樹された幼木のイメージを持ってしまいますが、このお手植えは700年も前のこと。そのため、かなりの巨木となっています。
仁王門をくぐるとすぐに思親閣 祖師堂が。故郷の両親を思い、思親閣と名付けられています。
本堂の奥には、金色に輝く釈迦牟尼像。霧に包まれた森を背景にした姿はとても神秘的です。
常護堂では南無常護稲荷菩薩と書かれた赤い旗がなびいています。稲荷神社と何か関連があるのでしょうか・・・?案内板によると、日蓮が身延山を登っていた際、狐に導かれたというエピソードから、登詣者を守る常護菩薩として奉っているそう。
帰りも同じくロープウェイにて。しばらくは霧が続くのですが、高度が下がるにつれて徐々に晴れてきます。
ロープウェイからは久遠寺の本堂周辺が一望できます!山頂からの眺めは拝むことができませんでしたが、この景色だけでも充分です。
日蓮のストーリーに興味がある方は、佐渡島のこちらもおすすめです。
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