巨大なマッコウクジラの実物大模型がインパクト抜群な海洋ミュージアム。海洋生物に関する展示や漁業・捕鯨など海に関する展示が盛りだくさん。模型のもとになったクジラの骨格標本は、迫力の姿に加えてその製造過程も驚きの連続です!
海がテーマのミュージアム
岩手県の沿岸部、宮古と釜石の間に位置する山田町には鯨と海の科学館というミュージアムがあります。メインテーマは「クジラを通じて彼らが住む三陸の海、そして海を育てる豊かな自然環境について知ること」。
1992年にオープンした施設ですが、2011年には震災の影響で休館。2017年7月15日に再開しました。外壁には、3.11の津波の高さを示す印も描かれています。
展示室は円形ホール型。スロープを下りながら、「海の広さと深さ」、「風と海洋の循環」など、科学的な海の解説を見ていきます。青く塗られた壁と、少しずつ降りて行く演出がとってもわくわく。まるで海の中に潜って行くような気持ちです。
迫力のマッコウクジラ
来館者を出迎えるのは、このミュージアムの目玉・マッコウクジラの実物大模型!大きなホールの中を泳ぐように吊るされた姿はただただ圧巻です。
体型などはもちろん、額の傷やイカの吸盤跡など、歴戦の傷跡も再現されており、非常に凝ったつくりをしています。
マッコウクジラの鼻先にはダイオウイカ。クジラの前ではとっても小さく見えますが、実際はかなりの大きさ。
他にもマンボウ、リュウグウノツカイ、マンタなどの模型も吊るされています。いずれもフグ目、アカマンボウ目、トビエイ目ではトップクラスの大きさを誇るボス級のサカナたちですが、マッコウクジラの前では小魚に見えてしまいます。
様々な展示物
海の生き物の剥製も多数展示されています。アイナメ(アブラメ)、アメフラシ(ギーサギ)といったように、地方名も記載されているのが面白いです。
こちらの赤い物体は、ベニオオウミグモの模型。普通のウミグモが脚を広げて5cm程度なのに対して、この種は40cmクラスまで大きくなるというモンスター級のウミグモ。しかし、クジラを見た後だとなんだか小物感が否めないです。
こウミグモに続いて現れるのはタカアシガニ。クジラの後だと・・・以下略ですが、世界最大級のカニなので、カニ界では大ボスです。色味が同じ「消火器」の隣りにあるので、消化器の守り神みたいに見えてきました。
ダイオウイカ、マンボウ、リュウグウノツカイ、マンタ、ベニオオウミグモ、タカアシガニ・・・ここまでの並び、それぞれの分類で最大級の種ばかり。
もしかして、様々な種のトップクラスばかりを集めた「最大コレクション」なのでは・・・!そんな仮説が脳裏を過ったのですが、あっさりと終止符が打たれました。
こ、これはレッドリップド・バットフィッシュ!赤い唇と口ひげがユーモラスすぎるサカナ。さらにヒレを脚のように使って歩き回るという生態もある、超へんないきものです。アンコウ目に属するサカナですが、その中では全然大きいものではありません。こうして、「最大コレクション説」は崩れ去りました。
他にも、海の生物の映像コンテンツ、漁具や漁法、ホースでつながった昔の潜水服など、海に関わる様々な展示があります。じっくり見ていくと、いろいろと新しい発見に出会えます。
マッコウクジラの骨格標本
ホールの隣にある展示室では、マッコウクジラの骨格標本が天井からぶら下がっています。全長はなんと17.6mにも及びます。
大きすぎませんか!!
これまで博物館などでたくさんの恐竜の骨格標本を見てきましたが、どんな恐竜の骨よりも太くて立派。頭骨だけで5.6mもあります。
この頭骨には、マッコウクジラの潜水能力の秘密である脳油を貯蔵するタンク、そして脳油を作り出すジャンクという器官が詰まっています。あの大きな頭の中はこんな風になっていたのですね。
骨格標本のエピソード
骨格標本のすぐ隣に設置されたモニターでは、「クジラの骨格標本誕生」の映像作品が流れています。これ、すごく面白いです!
クジラの骨は油を抜くために砂に埋めるのですが、それに費やした時間はなんと3年間。時がたち、周辺住民たち総出による町ぐるみで砂浜から掘り起こす実際の様子が映し出されます。
そんな骨格標本でしたが、3.11の津波の影響でガレキに埋まってしまいます。しかし、奇跡的にその姿を留めていました。
洗浄作業がおこなわれ、展示が再開。震災を乗り越えたことから「奇跡のクジラ」と呼ばれているそうです。町の人々が力を合わせて作り上げた映像を見たあとだと、この骨格標本がどれだけ希望になったのかと、感慨深いです。
捕鯨基地としての歴史
唐突に現れる武器のようなもの。こちらは50mm捕鯨砲。ミンククジラやツチクジラなど小型のクジラを捕獲するのに使用されていたそう。
岩手県では、かつて捕鯨が行われていました。館内にはそんな捕鯨の歴史を後世に伝えるため、使用されていた様々な捕鯨道具が展示されています。
クジラに電流を流す「ジャンス」、捕獲したクジラに取り付けて目印にしたという「マッコウランプ」など、普段目にすることが無い道具がたくさん並んでいます。
岩手県の捕鯨は、明治43年に高知県の大東捕鯨による基地が設置されたことにより本格的なはじまりを告げます。ここ山田町では1949年に日東捕鯨という会社が捕鯨基地を造り操業を開始。1970年代後半には全盛期を迎えます。しかし、1988年に国際捕鯨委員会の規制により商業捕鯨が禁止となったことにより、その歴史に幕をおろしました。
先ほどのマッコウクジラの骨格標本は、商業捕鯨が行われた最後の年に三陸沖で捕獲されたもの。あんなに大きな生き物を捕獲していたなんて、驚くばかりです・・・!学術的な価値はもちろんのこと、「捕鯨の歴史を後世に伝える」という意味でも非常に重要な役割を果たしていることがひしひしと伝わってきました。
アクセスと営業情報
三陸鉄道の岩手船越駅から徒歩10分。車の場合はJR宮古駅およびJR釜石駅から約30分、道の駅やまだから約3分。
宮古と釜石の間にありますので、この2ヶ所をめぐる予定の方は、途中で立ち寄るのにおすすめです!
開館時間 | 9:00~17:00 |
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休館日 | 火曜 |
料金 | 300円 |
公式サイト | https://yamada-kujirakan.jp/ |
※掲載の情報は2022年11月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
余談ですが、日本国内でマッコウクジラを見ることができる場所があります。それは小笠原諸島・父島。ホエールウォッチングの船に乗れば、沖合いを泳ぐマッコウクジラに高確率で出会うことができるのです。通年生息していますが、よく見ることができるのは春~秋頃。ただし、小笠原諸島に行くまでは船で24時間もかかります・・・!
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