偉大なる近代製鉄のヒストリー『鉄の歴史館』(釜石市)

岩手県

近代製鉄発祥の地として知られる釜石に建つミュージアム。迫力の演出が楽しめる「総合演出シアター」をはじめ、模型やパネルを通して鉄の歴史を学ぶことができる博物館です。館内には巨大なアンモナイトの壁が設置されているのですが、その理由とは・・・?

訪問日:2022/10/9(日)

鉄のまちの博物館

小さな港町であった釜石は、明治時代に洋式高炉が造られ本格的な製鉄が行われるようになります。さらに日本初となる官営製鉄所も造られ、「近代製鉄発祥の地」と呼ばれるようになりました。

そんな鉄のまちに建つのが鉄の歴史館。釜石の製鉄の歴史や、そこに関わった先人の偉業を顕彰するために造られた鉄のミュージアム。1985年にオープン、もうすぐで40周年を迎える歴史ある博物館です。

海辺の高台に建っているため、非常に開放的なロケーション。4階の展望テラスからは、釜石湾の絶景とすらりと立つ釜石大観音の後ろ姿も。

大迫力の総合演出シアター

入館者を最初に出迎えるのは総合演出シアター。中央に構える原寸大「日本最古の洋式高炉跡」の模型を中心に、映像作品が上映されます。

光と音、さらに実際に大きな水車が動くという、仕掛けたっぷりの臨場感あふれるシアター。スクリーンにはかわいらしいキャラクター「サイ太郎」も登場し、とってもカジュアルな内容。釜石の鉄の歴史や、当時の鉄づくりの様子が映し出されます。

上映時間は約17分、毎時00分と30分に上映されているようです。最初にこちらを鑑賞してからその後の展示を見ると非常にわかりやすくなるので、上映時間に合わせて訪問するのがおすすめです。

鉄の展示がもりだくさん

シアターを抜けると展示室。「鉄文化の黎明」「近代製鉄の発進」など、様々なテーマにそった展示が並びます。釜石の鉄の歴史やそれに関わった人物など、内容は少し難しめですがシアターを見た後なのですんなり入ってきます。

「鉄と豊かな暮らし」のゾーンでは、現代の生活の中にある鉄製品が多数紹介されています。ずらりと並ぶのは「H型鋼」「山形鋼」「溝型鋼」などの型鋼。建築物の柱や梁などに使用される鋼材なので、知らず知らずのうちにお世話になっている鉄です。こんな風に並べられると、要塞みたいに見えますね!

大島高任って何もの?

釜石の近代製鉄の歴史についてふれる際、最重要人物となるのが大島高任(おおしま たかとう)。盛岡藩の医師の家庭に生まれ、江戸や長崎へ留学。医学をはじめとした西洋の技術を多く学び、1854年に水戸藩に招かれて反射炉(※)を建設します。大砲の鋳造を行いますが、砂鉄を原材料としたため思うような性能には至りませんでした。
(※反射炉=石炭の反射熱を活かし鉄を溶かす施設で、幕末には大砲を鋳造するため各藩に建設されました。現在、静岡県の「韮山反射炉」と山口県の「萩反射炉」は世界遺産にも指定されています。)

良質な鉄を造るべく、釜石の大橋に洋式高炉を建設。地産の磁鉄鉱を活用し、日本初となる鉄鋼の製造に成功します。このような業績から「近代製鉄の父」と呼ばれるようになりました。

その後、盛岡藩にもどった高任は私立の洋学校である日新堂を設立。英語、西洋医学、兵術、砲術など様々な技術の普及に努めます。1872年には岩倉使節団に随行し欧米諸国を視察。1890年には日本鉱業会の初代会長にも就任します。

なお、この大島高任は最初の総合演出シアターにもキャラクターとして登場します。自分が携わった橋野鉄鉱山が世界遺産登録したことに喜ぶ姿が印象的でした。

橋野高炉の再現模型

大島高任の指導によって造られた橋野高炉の模型も展示されています。

橋野鉄鉱山から採掘される鉄鉱石を使用して製鉄を行っていた施設で、1858年から操業を開始。全盛期には、最大1,000人もの人が働いていたそう。

こちらの大きな建物は三番高炉。3つの高炉が置かれていましたが、そのうち最後まで稼働していたものです。

この博物館は、橋野高炉跡と合わせて訪問すると楽しさが倍増します!私は先に鉱山跡へ訪問したのですが、「あそこで見た石の土台の上にはこのような建屋が立っていたのか」と、妙に感慨深く見入ってしまいました。

世界遺産の鉱山遺跡!3つの高炉跡をめぐる『橋野鉄鉱山』(釜石市)
世界遺産にも登録されている橋野鉄鉱山は、近代製鉄の発展をもたらした非常に重要な施設。明治以降は廃止となっていましたが、発掘調査が行われ一部が復元。現在では高炉の跡を自由に見学することができます。

突然現れるアンモナイトの壁

展示室は1階と2階ですが、階段はさらに上まで続いています。3階に足を踏み入れると、壁一面に広がる化石のお出迎え。

こちらは高さ12m、幅16mにもおよぶ「アンモナイトの壁剥離標本」(レプリカ)。4階と吹き抜けになっているため、高い位置からも見渡すことができます。

ところで、鉄の歴史館になぜ突然アンモナイト?釜石で採掘された化石、それとも鉄と何か関係があるのかなと思ったのですが、こちらはフランスのディーニュ・レ・バン市に実在する化石群。1992年に釜石市で三陸・海の博覧会が開催されるにあたり、そのシンボルとして作られたものだそう。

博覧会終了後、釜石市に寄贈されたことから釜石市とディーニュ・レ・バン市は姉妹都市交流がはじまります。絵画交換交流などが行われ、東日本大震災の際には復興支援も行われていたそうです。

隠された謎のキャラクター

圧巻のアンモナイトを見終えて、階段を降りているときに目に入ったのは謎の白い手。なんだかホラー感ありますね。

おそるおそる覗いてみると、隠れるように潜む謎のキャラクターを発見してしまいました!

鉄の歴史館のマスコットキャラクターは「サイ太郎」だし、釜石市のキャラは「かまリン」。いったい何のキャラでしょうか・・・?

気になりますが、キャラクターの容姿だけで検索するのは非常に難しく、調査は難航。半ば諦めていたのですが、先ほどのアンモナイトの壁の際に出てきた「三陸・海の博覧会」について調べている際に目に付いたのは「マスコット – リアスくん」の表記。まさかと思って調べて見ると、かなりそっくりなキャラが出てきました。

これはリアスくんだったのか!と思ったのですが、よく見ると、頭の波の形が大きく異なります。デザインの差異と呼ぶにはその違いは大きく、別キャラといっても良いレベル。さらに、もしリアスくんだとしたら、1992年の開催後、30年間もここにいるのでしょうか?謎は深まります。

アクセスと営業情報

最寄り駅は三陸鉄道リアス線の平田駅ですが、歩くと30分ほどかかります。釜石駅からバスで約10分のバス停《釜石大観音入口》からなら徒歩5分ほど。車の場合は釜石中央ICから15分、唐丹ICから10分ほど。

開館時間 9:00~17:00
休館日 火曜、年末年始
料金 500円
公式サイト https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2016101700037/

※掲載の情報は2022年11月時点のもので年。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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