遠野物語の舞台として民話が多く残る遠野。そのイメージを体現するかのような風貌で静かにたたずむのが、今回ご紹介する荒神神社。「遠野遺産」にも指定され、近年人気が高まるスポットですが、御祭神はとのような神様なのか、遠野物語との関連はあるのか、といったように謎は尽きません。
遠野の名所・荒神神社
過去に2回ほどめぐっているため、今回は遠野に立ち寄る予定はありませんでした。橋野鉄鉱山や滝観洞などへ訪問するために近くを通ったところ、せっかく来たのだから少しは立ち寄ろうかなという気持ちに・・・。伝承園、かっぱ淵、遠野市立博物館、卯子酉様、デンデラ野などは既に訪問済みなので今回は未訪問のところへ行ってみたい・・・・ということで、気になったのは「荒神神社」。
以前はそれほど知られていなかった気がするのですが、近年では旅行雑誌を中心に「遠野を代表する光景」としてよく見かけます。写真を見る限りでは小さなお社だけの神社に見えますが、何がそれほど人々を惹きつけるのでしょうか・・・?
原風景とも呼べる姿
田んぼの海に浮かぶ小島のようの姿が印象的な茅葺きのお社。素朴なたたずまいは遠野を代表する風景として広く知られています。
春は水を張った田んぼのリフレクション、夏は緑の稲穂、秋は黄金色の稲穂、冬は雪景色と季節によってその姿を変えます。また、遠くに早池峰山を望む姿も絵になります。このフォトジェニックな光景が多くの人をここへと呼び寄せるのでしょう。
田んぼの中にあり、畦道も延びていないため、中を覗くどころか近づくことすらできません。また、周辺には解説や由緒の案内板もありません。ここはいったいどのような神社なのでしょうか。
荒神神社の由緒
「岩手県観光協会」のHPを見てみたところ、権現様という神様を祀っている神社とのこと。
ひとことで権現様といっても「白山権現」や「蔵王権現」など様々な権現様がいらっしゃいます。いったいどのような権現様なのでしょうか。
「隣の地域の権現様の耳を噛み切った」という伝説も残っているようで、荒ぶる姿から荒神様と呼ばれるようになったという話も記さてれいます。
遠野物語のゴンゲサマ
遠野の伝承を紐解くには、まずは柳田国男が明治43年に発表した説話集「遠野物語」から。この中には、神楽舞の組ごとの備わる獅子舞のような木彫りの像「ゴンゲサマ」の話が収録されていました。権現様=ゴンゲサマと当てはめて読み解いてみましょう!
記載されている110話には「新張の八幡社の神楽組のゴンゲサマと、土淵村字五日市の神楽組のゴンゲサマと、かつて途中にて争いをなせしことあり。新張のゴンゲサマ負けて片耳を失いたりとて今もなし。」との記載があります。
先ほどの話とほぼ同じ記載を見つけることができました。これを当てはめて考えると、耳を失ったのは「新張のゴンゲサマ」ということですので、ここ荒神神社で祀られているのは「土淵村字五日市のゴンゲサマ」ということになりそうです。
深まる謎
ここで気になるのは、土淵村という地域。現在は存在しない自治体ですが、旧土淵村を調べてみたところ、現在の伝承園やカッパ淵がある辺り。この荒神神社が建てられている場所は青笹と呼ばれる地域のため、少しずれています。
柳田国男の遠野物語には収録されなかった説話を集めた「遠野物語拾遺」の58話にもゴンゲサマの記載があります。こちらでもやはり八幡社のゴンゲサマが耳をかみちぎられてしまいますが、相手が新山神社の神楽組のゴンゲサマと変わっています。しかし、この新山神社というのも、荒神神社からは離れた場所のようです。
というわけで、荒神神社に関連のありそうな「ゴンゲサマが耳をかみちぎられる話」は見つかりましたが、なぜ荒神神社がここに建てられたのかとは直接結びつかず。
もし詳しい方がいらっしゃいましたら、教えていただけると助かります!
アクセスと営業情報
最寄り駅は釜石線の青笹駅ですが、2kmほど離れているため徒歩だと30分近くかかります。遠野駅でレンタサイクルを借りて他のスポットと合わせてめぐるのもおすすめです。
車の場合は、釜石自動車道の遠野住田ICから5分ほど。駐車場はありませんが、神社の目の前の畑に「無料駐車場」と書かれたスペースがありました。
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