盛岡城の近くに建つ、レトロなたたずまいの情緒あふれる建築。ピカピカに磨かれた「板張の間」では、窓の外の庭園を鮮やかに映し出します。何度も所有者が変わってきており、少々変わった歴史を持つ建造物でもあります。
歴史を感じる建築
盛岡市にある南昌荘(なんしょうそう)は、明治18年(1885年)に建てられた近代和風の建築物。盛岡市の「景観重要建造物」にも指定されている歴史ある建物です。
靴を脱いで入る館内は、畳敷き、障子張りの部屋が連なっています。床の間や縁側など、落ち着く空間。
透かし彫りなど、細部にも造形を感じます。南昌荘は長い年月の間で何度も所有者が変わっており、歴代所有者によって様々な改築が行われてきたそうです。
精魂込めて造り上げられた庭園も見学可能。雨が降っていたので断念しましたが、自由に歩いて散策することができます。茶室も設けられているようです。
盛岡市は、盛岡市の歴史と共に生き続けた由緒、由来がある庭園を選定し、「保護庭園」として指定しています。現在7つの庭園が登録されており、ここ南昌荘庭園もそのうちの一つなのです。
景観を映し出す板張りの間
中2階となる南昌の間。「板張の間」とも呼ばれており、磨き込まれた床が照明をきれいに写します。
新緑や紅葉の季節に訪れると、庭園のモミジが床に映し出され「床もみじ」を見ることができます。盛岡を代表する光景として、旅行雑誌でもおなじみの撮影ポイント。さらに紅葉の期間はライトアップが開催されます。写真だけ見たことがあるのですが、その映り込みはため息が出るほど美しいです。
窓際には椅子と丸テーブルも置かれています。和菓子付きのお抹茶や、コーヒーなどの注文も可能となっています。庭園を眺めながらほっとひと息つきたくなりますね。
窓の外を見ると感じるのですが、南昌荘は建物自体が少し高くなっているのがポイント。そのため庭園を広く見渡すことができるのです。
南昌荘のヒストリー
もともと南昌荘は、瀬川安五郎という、為替や生糸、そして秋田県の荒川鉱山の経営で財を成した実業家が自邸として建てたもの。「みちのくの鉱山王」の異名を持つ人物です。
その後は、盛岡市長を務めた大矢馬太郎、岩手銀行の前身である盛岡銀行の頭取である金田一国士、繊維・呉服の豪商・赤澤多兵衛と、所有者が次々と変わって行きます。
終戦直後はアメリカ軍に接収され、将校とその家族の宿舎であったことも。床の間には、当時暮らしていたロバートソン少佐夫妻の写真も飾られています。
1987年に大手マンション業者により買収されそうになりますが、この名建築を守りたい人々が共同購入。盛岡市民生協(現・いわて生活協同組合)の所有となります。
2000年4月29日より一般公開開始。今では盛岡を代表する人気の観光スポットとして広く知られています。
ロケ地としても人気
これだけ素敵な建築、もちろんロケ地としても活用されています。
2007年のNHK連続テレビ小説「どんど晴れ」では、草笛光子さんが演じる大女将のお部屋のモデルにもなったそう。
さらに2017年公開の羽海野チカさん原作の実写映画「3月のライオン」のロケ地にも。神木隆之介さん演じる主人公・桐山零と、加瀬亮さん演じる宗谷名人との対局シーンが撮影されました。
神木隆之介さん、加瀬亮さん、大友啓史監督のサインや、撮影風景を写した写真パネルも飾られています。きっとファン必見なスポットなのでしょうね。
アクセスと営業情報
盛岡駅から徒歩約20分。駐車場は敷地内に数台分のスペースがありました。
開館時間 | 10:00~17:00 ※12/1~3/31は16:00まで |
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休館日 | 月曜、火曜、年末年始 |
料金 | 300円 |
公式サイト | https://www.iwate.coop/kankyou/nanshousou/ |
※掲載の情報は2022年10月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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