東北山間部に残る信徒たちの強い意志『大籠キリシタン殉教公園』(一関市)

岩手県

東北の山間部である大籠には、かつて多くのキリシタンたちが暮らしていました。なぜこの地にキリスト教が広まったのか、どのような信仰を続けていたのか、そして弾圧により命を落とした信徒たちの強い信仰心を知ることができる場所です。

訪問日:2022/10/10(月)

信仰の地・大籠

江戸時代、キリシタンの里であった岩手県一関市の藤沢町大籠。町内の各所には現在も言い伝えや遺跡が多く残されています。

しかし、当時は禁教令が発布されており、キリスト教の信者は改宗を迫られ、それに応じなければ厳しい処罰を受けるという時代。ここ大籠は300人を超えるのキリシタンが殉教した地でもあるのです。

迫害に屈せず信仰を守り抜いた人々の崇高な意思を伝えるためにつくられたのが、今回ご紹介する大籠キリシタン殉教公園。園内は大籠キリシタン資料館のある「歴史の丘」と大籠殉教記念クルス館のある「歴史の丘」、そしてこの2ヶ所をつなぐ「歴史の道」と、大きく3つに分かれています。

大籠キリシタンの歴史

さて、まずはここ大籠におけるキリシタンの歴史についてさらっとご紹介させていただきます!

戦国時代、フランシスコ・ザビエルによって日本にキリスト教がもたらされます。織田信長、豊臣秀吉はこれを保護していました。しかし、1857年に豊臣秀吉は突如バテレン追放令を施行。布教は禁止、宣教師は追放されてしまいます。

東北地方で最初に布教活動を行ったのは、伊達政宗によって招かれた宣教師ソテロ。仙台藩主である伊達政宗は、慶長遣欧使節団を派遣。そのすぐ後に江戸幕府は禁教令を施行、布教の禁止、弾圧をはじめます。

キリスト教に寛容だった伊達政宗も弾圧に乗り出さざるを得なくなります。ソテロ神父は日本への帰国と同時に捉えられて火炙りに。有能な武士であった後藤寿庵も追放されてしまいます。宣教師たちは潜伏し、禁教令が解かれる日を待ち続けます。

藤沢町大籠は仙台藩、鉄の有数の産地であり、たたら製鉄が行われていました。製鉄の技術指導のために備中(岡山県)より千松大八郎・小八郎の兄弟を招き、鉄生産を飛躍的に増加させることに成功。しかし、この兄弟はキリシタンであり、働く人々にキリスト教を説いていました。さらに、フランシスコ・バラヤス神父も訪れ、布教を開始。

禁教令下でありつつ全盛を迎えますが、伊達政宗がこの世を去ると、より迫害は強化。踏み絵を用いた絵踏が行われ、改宗に応じなければ処刑を実行。300名を超す信者が殉教することになってしまいました。

大籠キリシタン資料館

駐車場のすぐ先にあるのが、大籠キリシタン資料館。まずはここでキリシタンの歴史について知ることができます。

館内では、15分ほどの映像作品も上映。大籠のキリシタンについて、非常にわかりやすくまとめられています。これを見るとその後の展示がとってもわかりやすくなるので、最初に見るのがおすすめです。

展示室内には十字架が隠された「キリシタン鍔」、背面に十字架が型どられた「マリア観音像」、さらに本の中に十字架が隠された「厨子本」など、信仰の証となる貴重な資料が展示されています。人形を使ったジオラマでは、拷問の様子が再現されており、ちょっとだけショッキング。

テーマがテーマだけに内容は少し固めですが、映像を見たあとだとすんなり入ってきます。

丘へと続く歴史の道

資料館からクルス館へは、屋外の階段を300段ほど登っていきます。この道は「歴史の道」という名が付けられているようです。

途中、階段を蛇行するように道が続いています。この道沿いにはキリストの受難を記した石碑が並んでおります。こちらは戦後の日本を代表する彫刻家・舟越保武氏による「十字架の道行」

途中には「台転場」と書かれたポイント。台転場というのは、キリシタンを取り締まるための関所。絵踏みが行われ、キリシタン改めを行っていました。なお、ここが台転場跡ではなく、復元模型とのこと。

殉教者の首をさらしたという「ハシバ首塚」。こちらも同様に復元模型で、石碑が建てられています。

大籠殉教記念クルス館

登り切った先で姿を見せるのは、教会のような佇まいの大籠殉教記念クルス館

内部には十字架にはりつけられたキリスト像が静かに安置されています。

この像は、先ほどの石碑と同じく舟越保武氏の作品。他にも「長崎26殉教者記念像」、田沢湖の「たつこ像」などの作品で知られています。

また、このクルス館そのものも舟越氏の設計によるものだそう。洗礼を受けてカトリックに帰依した氏は、キリスト教信仰やキリシタンの受難に関連する作品を多く造り上げていきます。

館内の中央には螺旋階段。登った先では園内を見渡すことができます。

憲法によって信教の自由が認められた現代において、禁教令のような宗教弾圧というのはなかなかイメージがしにくいもの。でも、だからこそ後世に伝えるためにこのような施設が必要なのでしょうね。

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アクセスと営業情報

鉄道路線から遠く離れた山の中にあるため、公共交通機関でのアクセスは非常に困難。JR一ノ関駅、JR花泉駅、JR千厩駅からバスもありますが、いずれもほぼ平日限定。さらに、ほとんどの場合バス停からタクシーが必要になります。

車の場合は三陸自動車道の登米東和IC、小泉海岸IC、本吉津谷ICそれぞれから15~20分ほど。住所は「岩手県一関市」ですが、一関の中心部からは遠く離れており、宮城県の気仙沼市や南三陸町からの方がアクセスしやすい立地です。

開館時間 9:00~16:00
休館日 月曜、年末年始
料金 300円
公式サイト http://www12.plala.or.jp/okagocross/

※掲載の情報は2022年11月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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