世界遺産の構成資産となった寺院跡。かつての栄華は息をひそめ、今は爽やかな公園のような雰囲気。喧噪を忘れてのんびりと散歩するか、知識と想像力で奥州藤原氏の繁栄を体験するか、大きく2通りの楽しみ方ができる場所です。
世界遺産の寺院跡
毛越寺のすぐ隣には観自在王院跡という遺跡が残されています。
ここはかつて存在した観自在王院の寺院跡。奥州藤原氏の二代・藤原基衡の妻が建立したと伝えられており、中尊寺・毛越寺など他の平泉の寺院と同様に、奥州藤原氏と所縁の深い寺院です。
東西4.5mの門があったとされる「南門跡」。
建築などは何も残っておらず、再建もされていませんが、こちらも世界遺産「平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-」の構成資産。毛越寺・無量光院跡と同様に浄土庭園の遺構を見ることができるので合わせての訪問がおすすめです。
舞鶴が池
境内の中央に広がるのは「舞鶴が池」。東西100m・南北100mと、毛越寺の大泉が池と同クラスの大きな池です。平安時代の庭造りの教科書とも呼べる「作庭記」には、池は鶴か亀の形に掘るべしと記述があるそう。名前から察するに、鶴の形を模して造られているようです。
周辺にはベンチも多数置かれており、「世界遺産の遺跡」というよりは「憩いの場の公園」といった雰囲気。歴史が深い場所ですが、そんなこと忘れてのんびり過ごすのも良さそうです。
中央には中島があります。かつては橋が架けられていましたが、今はカモさんたちの休憩場所となっています。
遣水と滝石組
池の西側には、池に水を引くための水路「遣水」があります。毛越寺の弁天池を水源としており、そこから水を引いていたそうです。
遣水の池に注ぐ部分には大きな石が並べられています。こちらは日本庭園において滝を表現した「滝石組(たきいわぐみ)」と呼ばれる技法。
庭園の中に造られる滝には「布落ち」「段落ち」「糸落ち」など様々な形態がありますが、ここでは「伝い落ち」という岩肌を伝って流れるタイプであったと考えられています。
※毛越寺の浄土庭園を形成する大きな池は「大泉が池」。弁天池は、現在湿地のような状態となっており、特に案内板なども置かれていないようです。
2つの阿弥陀堂
南門跡から見て舞鶴が池を挟んだ奥には、小阿弥陀堂と大阿弥陀堂という大小2つの阿弥陀堂が建てられていました。
「小阿弥陀堂跡」
発掘調査の結果、横幅16.8m、奥行き7.2mという横長の建物であったことがわかったそうです。
「大阿弥陀堂跡」
一方こちらは10.6mの正方形のお堂で、観自在王院において最も大きな建築であったそう。壁面には京都の名所が描かれ、金の欄干や銀の仏壇が施された豪華な内装であったと伝えらえています。
この2つの阿弥陀堂の間には玉石敷の庭があり、2堂を繋ぐ廊下が架かっていたとのこと。
行ってみた感想
中尊寺や毛越寺と比べると見ごたえはありませんが「キレイに手入れされた開放的な公園」といった雰囲気なので何も考えずに歩くだけでも清々しい気持ちになれます。各所には解説板が設置されているため、のんびりと散歩しながら歴史を感じることもできます。
ただし、再建された建築や再現図などは無いため、「世界遺産の寺院跡」として楽しむにはかなりの想像力が必要です。再現模型やイメージCGなどあれば、想像しやすいのですが・・・。どこかにあるのでしょうか?
アクセスと駐車場情報
平泉駅から徒歩約10分。車の場合は平泉・前沢ICから約10分、一関ICから約15分。
駐車場はありませんが、毛越寺の隣にあるため毛越寺駐車場に停めてセットで訪問するのがおすすめです。(有料/普通車1回300円)
※掲載の情報は2022年10月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
コメント