開放的な庭園で試される想像力『毛越寺』(平泉町)

岩手県

世界遺産の寺院、毛越寺(もうつうじ)。広大な境内の中央には、大きな池を中心とした浄土庭園が広がり、なんとも開放的な雰囲気。寺院跡の遺跡が多数残されており、その規模からかつての栄華を感じとることができます。

訪問日:2022/10/6(木)

平泉の古刹

毛越寺は、かつて栄華を極めた奥州藤原氏と縁の深い寺院。その二代である藤原基衡、三代秀衡の時代に多くの伽藍が建立されました。2011年には「平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-」の構成資産の一つとして世界遺産に登録、同じく世界遺産の中尊寺と合わせて訪れる人の多い人気の寺院です。

受付も兼ねている山門は伊達一関藩・一関城の大手門を移したもの。

度重なる戦火によってその建築はほとんど失われてしまいますが、その後再建されていきます。平成元年となる1989年に再建された本堂では、本尊である薬師如来を安置しています。

絵になる浄土庭園

毛越寺を代表する光景といえば、大泉が池を中心とするこちらの浄土庭園。建物の多くは焼失してしまい再建されたものでしたが、この庭園は平安時代末期のものがほぼ当時の姿で残っているそうです。

東西約180m、南北約90mという大規模な池は、鏡のように空を映します。周囲は曲線で造られているため、見る角度によって印象が変わってゆく。どこから写真に撮るのが良いか探しながら、池を一周してみるのも楽しいです。

穏やかな水面を眺めていると、心が落ち着いてきます。ベンチも置かれており、腰掛けてぼーっと池を眺めている人の姿も。

庭園に込められた風景

さて、何も考えずに眺めているだけでも良い雰囲気ですが、せっかくなのでじっくりと庭園を見学してみましょう!

手前の石は出島を、池に浮かぶ立石は周りを小石に囲まれており荒磯の風情を表しているそう。今日は天気が良いのでそれほどではありませんが、曇りや雨の日に見ると、迫力が増すのでは。

多数の石を組み上げた築山もあります。その高さは水面から約4m。そびえる松の存在も相まって、断崖絶壁に見えてきました。

一部の岸が伸びているポイントは、海岸の砂州を表現しているそう。水位によって形が変わるそうで、潮の満ち干きも感じることができるようになっております。

大事なのは想像力

池の中央に浮かぶのは中島。かつてはこの島に橋が架けられていたそうです。そして、その橋の向こうには中心伽藍であった金堂円隆寺をはじめ様々な諸堂が広がっていました。

と、言われても想像するのはなかなか難しい・・・そんなときのために、境内にはイメージ絵図が掲示されていました。

これは壮大ですね!翼廊を広げた金堂円隆寺はもちろん、嘉祥寺や講堂が立ち並び、それは荘厳な寺院であったことがわかります。

本堂のそばにある南大門跡。地面を見ると、柱が建てられていたであろう礎石を見ることができます。さあ、ここから中島を経由する橋、そしてそびえる金堂の姿を想像してみよう!

礎石が残る寺院跡

想像力が足りなかったので、大泉が池をぐるっとまわり対岸までやってきました!

こちらが金堂円隆寺跡。残っているのは礎石だけですが、その規模の大きさは感じ取ることができます。想像力が豊かな方は、振り返って大泉が池を眺めると、両側に広がる翼廊が見えてくるはずです・・・!

ここで気になるのは「金堂円隆寺」という呼び名。毛越寺の金堂は円隆寺と呼ばれていたという記録が残っているそうです。

さらにこちらは嘉祥寺跡。こちら、実は毛越寺のルーツとなったとされる寺院。

奥州をめぐっていた円仁(慈覚大師)は、この地に訪れた際に深い霧に見舞われ先へ進むことができなくなっていました。そんなとき、地面に白い鹿の毛を見つけ、それをたどっていくと、白鹿の姿が見えてきました。円仁が近づくと白鹿は姿を消し、代わりに現れたのは白髪の老人。この老人のお告げを受けて円仁が開いたのが嘉祥寺なのです。

せせらぎの遺跡

寺院の跡と並び、ここに来たら見ておきたいのが遣水(やりみず)

なんてことないせせらぎに見えますが、池に水を引き入れるために造られた遣水という人工水路。平安時代の遣水の遺構としては唯一とのこと。というか、遣水の遺構自体がここ以外では奈良の宮跡庭園にしか無いらしく、とにかくレアなのです。

この遣水では、毎年新緑の頃に「曲水(ごくすい)の宴」が開催される場所でもあります。盃を浮かべ、流れてくる間に和歌を詠み終え盃をいただくという催しで、1986年の藤原秀衡の八百年御遠忌の大祭より再現されているそうです。

 

行ってみた感想

広大な池が広がる庭園は、ぐるりと一周するだけでも爽やかな気持ちになれます。歴史や仏教の知識が無くても、この開放的な空間はぜひ体験してほしいところです。

そして、もう一段階楽しみたい方は、境内各所に残る遺跡からかつての姿を想像してみるのが良さそう。とはいえ、再現された建築などはほとんどありませんので、とにかく想像力が試されます。

すぐ近くにある「観自在王院跡」、そして少し離れたところにある「無量光院跡」という遺跡があるのですが、いずれも毛越寺と同じく世界遺産に指定されていますので合わせてめぐってみるのもおすすめ。なお、この2ヶ所は毛越寺よりさらに想像力が必要となるのでご注意くださいね。

アクセスと拝観情報

JR平泉駅から徒歩10分ほど。車の場合は平泉・前沢ICから約10分、一関ICから約15分。駐車場は有料で普通車1回300円です。

開門時間 8:30~17:00 ※11/5~3/4は16:30まで
拝観料 700円
公式サイト https://www.motsuji.or.jp/

※掲載の情報は2022年10月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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