浄土宗の寺院、祐天寺。公園の様に開かれた雰囲気のお寺であり、多くの人が訪れています。境内には多数の桜や江戸時代から残る建築、そして怪談話に縁のある「累塚(かさねづか)」が建立されていました。
桜の咲く寺院
「祐天寺」といえば、東急東横線の駅。「中目黒」「代官山」などおしゃれタウンに並ぶ駅であり、住みやすさが魅力の人気エリア。そんな祐天寺にはもちろん祐天寺というお寺があります。祐天寺駅から徒歩10分弱、通り沿いに面して表門が建っています。
創建は享保3年(1718年)。増上寺36世住持である祐天の廟所として、弟子の祐海によって開かれました。
境内にはサクラがたくさん!4月上旬に訪れたところ、多数の花が咲きとっても華やか。「祐天桜」という品種も見かけました。
江戸から残る伽藍
表門をくぐった先にある仁王門。享保20年(1735)の建立で、江戸幕府5代将軍・徳川綱吉の息女・竹姫によって寄進されたものです。鋭い目つきの仁王像が構えています。
仁王門の手前にある地蔵堂。地蔵菩薩像を安置しているお堂です。
その傍に建つ阿弥陀堂。仁王門と同じく竹姫の寄進であり、享保9年(1724年)に建立されました。仁王門とともに創建時の姿を伝える建築です。
境内に奥に構える本堂。祐天上人像を安置しています。
仏舎利殿の絵画
目を引くのは、本堂の隣に建つ仏舎利殿。方形の一層の上に8角形の二層が乗る不思議な構造。
壁面には大きな絵が掲げられています。描かれているのは男性と女性、そしてお坊さんという3人の登場人物。
左下には「かさね済渡」との文字が。これは祐天と累(かさね)という女性のお話にまつわるものであるそう。いったいどのようなお話なのでしょうか?
怪談ストーリー
舞台は下総国の羽生村(現・茨城県常総市)。百姓の「与右衛門」は、「お杉」という女性と夫婦になります。お杉には「助」という連れ子がおりましたが、醜く足が不自由であったそう。与右衛門は助を可愛がらず、仕舞には川へ投げ捨ててしまいます。
その後、与右衛門とお杉の間には「累(るい)」という子どもが生まれます。この累は、なんと助にそっくりであったそう。助の祟りとウワサされ、助がかさねて生まれてきたと「累(かさね)」と呼ぶようになります。
与右衛門とお杉は相次いでこの世を去ってしまいますが、累は「谷五郎」という婿をとります。この谷五郎、与右衛門の財産が目当てであり、累を疎ましく思い、川に突き落としてしまいます。
その後、谷五郎は後妻を取りますが、すぐに原因不明の病でこの世を去ってしまいます。その後、何人嫁をとっても、次々と亡くなってしまいます。6人目の妻との間に「菊」という娘が生まれますが、この菊に累の怨霊が取りつき、谷五郎の悪事を語り出します。
ここで登場するのが、祐天。法力で累の怨霊を解脱させます。さらにその後、菊には助の怨霊もとりつきますが、これもまた成仏させることに成功します。
そんな累の一族を弔うために建立されたのが累塚。
この話は鶴屋南北によって「累ヶ淵」という歌舞伎の演目にもなっています。上演者は、供養と興行の無事のために必ず参るのが習わしであるそう。
ちなみにこの累、「江戸の三大幽霊」とも呼ばれています。残る2人わかりますか?
正解は四谷怪談の「お岩」と、番町皿屋敷の「お菊」。どちらも著名な怪談ストーリー。なんとなく聞いたことある方も多いのではないでしょうか。
アクセスと営業情報
東急東横線「祐天寺」駅より徒歩8分。
開門時間 | 24時間 |
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料金 | 無料 |
公式サイト | http://www.yutenji.or.jp/ |
※掲載の情報は2025年4月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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