洋風でかわいい邸宅のようでもあり、見る角度によっては武骨な要塞にも見えるという2つの顔を持つ不思議なダム。展望台や魚道も備えた見どころの多いダムですが、何より重要なのはアイヌの戦いの歴史ではないでしょうか。
マイルドなカラーリング
洪水調節や灌漑、水力発電など様々な目的で造られた二風谷ダム。外観はめずらしいモスグリーンのカラーリング。ミルクティーカラーの水面と合わさり、とてもマイルドな印象のダムです。デザインもかわいらしく、まるで大草原の大きなおうちみたいです。
天端(てんば=ダムの上のところ)を歩いていると、外国を意識したお洒落なモールのようにも見えてきました。ダムというと武骨な印象ですが、このダムは妙におしゃれな雰囲気をしています。
展望台つきの管理所
すぐ側には二風谷ダム管理所があります。こちらは平日の8:30~17:15限定で、土日祝日お休み。ダムカード目当ての方は、1.5km先の沙流川歴史館で受け取ることができるそう。
管理所の屋上は展望台。階段は屋外にあるため、管理所が閉まっていても自由に登ることができます。
二風谷ダムを少し離れた位置から見渡すことができます。グリーンのボディは、大自然の中に溶け込んでいるようです。
自由に見ることができる魚道
こちらの二風谷ダムは魚道(ぎょどう)を備えております。魚道というのは、ダムで塞き止められた川を魚が上流に上るための水道のこと。二風谷ダムは、オープンスタイルでばしゃばしゃと音を立てて水が流れる、迫力ある魚道。屋外型なので、自由に見学することができます。
サクラマスやサケ、シシャモなどの川を遡上する魚はこれで安心!なのでしょうか。一度、サカナが魚道を遡上する姿を見てみたいものです。
また、先ほどはおしゃれでかわいい印象だったダムが、魚道方面から見ると、急に要塞のように見えます。立体的な造りは、変形合体しそうでちょっとわくわくしてしまいます。
壮絶な戦いの歴史
さて、二風谷ダムを語る上で避けては通れないのが、その建設までの歴史。大規模な土地を要するダム建設というのは、様々な戦いがつきもの。そんな中でもこの二風谷ダムの歴史は特に壮絶。
そもそも、この二風谷という地は、もともとアイヌが伝統儀式を行う聖地だったのです。そこをダムによって水の底に沈めるというのだから、それは円滑に行くわけはありません。
水没予定地の住民に対する補償交渉に9年かかり、さらにその後も萱野茂(かやのしげる)氏、貝澤正(かいざわただし)氏の2名は補償金の受取りを拒否し、徹底抗戦の姿勢を取りました。
これに対して北海道開発局は強制執行を行うも、それに対して両名は訴訟を起こします。
結局、二人の訴えは棄却され、ダムは建設されてしまいました。しかし、アイヌ側の戦いの結果、アイヌ=先住民族と認めさせ、それまでの差別的な北海道旧土人保護法廃止に成功。新しく、アイヌ文化を保護するためのアイヌ文化新興法が成立することになったのです。
すぐ近くにある沙流川歴史館
二風谷ダムのすぐ近くには、沙流川歴史館というミュージアムがあります。地下に潜っていくような入り口と、フクロウの置物が印象的です。(9:00~16:30/月曜休/無料)
内部では、二風谷に暮らす生き物や植物、平取町内の遺跡から発掘された土器、そしてアイヌのチャシ(砦のようなもの)についての展示が豊富。
そしてここはダムカードを配布している場所。二風谷ダムの管理所が閉まっている土日に訪問される方は、ここでカードをもらうことができます。
アクセスと営業情報
二風谷ダムがあるのは北海道の平取町(びらとりちょう)。
苫小牧から日高ターミナルを結ぶ「特急ひだか号」のバス停《資料館前》からすぐ近く。ただし1日1便限定なので、ご注意ください。
沙流川歴史館、二風谷アイヌ文化博物館もすぐ近くなのでセットで訪問してアイヌ文化に浸ってみるのもおすすめです。
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