山上に広がる大地のアート『室生山上公園芸術の森』(宇陀市)

奈良県

緑豊かな公園の中に作品が点在する屋外アート空間。体感型の作品が多く、上に登ったり中に入ったりした楽しめるものもあります。自然に解けこんだユニークな作品群は映えるフォトスポットとしても人気です。

2021/9/18(土)

里山の野外美術館

イスラエル出身の芸術家、ダニ・カラヴァンが設計、監修をつとめた屋外美術館。奈良県宇陀市室生区のまちづくり計画「むろうアートアルカディア計画」のシンボル事業としてつくられました。

山上の森を開いた美しい自然空間に、まるで溶け込むかのようにアート作品が点在しています。

作品数はそれほど多くなく、なおかつほぼ一直線。「マップ片手にアートめぐり」、というよりは「里山を散歩しながらアートと出会う」、といったのんびり楽しめるアートスポットです。

第1の湖(3つの島)

地すべり対策のための集水池には、3つの島が浮かんでいます。

直径18mのステージの島は、文字通りイベントを開催することができる舞台。南側・西側・北側の3方向には、石でできた観覧席も設けられています。

そこから先は、ピラミッドの島へとつながっています。中に入ることもできるので、もしかしてイベントの際は控室的な役割を担ったりするのかもしれません。

錆びたような赤褐色の外観をしていますが、これはコールテン鋼という素材の色合い。この素材は錆びることで耐食性を発揮するため、塗装をしなくても耐久性を保つことができるのです。北海道の稚内市開基百年記念塔靖国神社の鳥居など、日本各地で同素材の建築物は見ることができます。

ピラミッドの島の向こうに浮かんでいるのは鳥の島。橋が架かっていないため、人が立ち入ることができません。樹木が茂っており、水鳥が暮らすための島でした。

螺旋の水路

まるで地上絵のように地面に刻まれた螺旋模様、こちらは「螺旋の水路」という作品。旅行雑誌などでもよく写真が掲載される、芸術の森を代表するシンボル作品です。

水路という名前の通り水が絶え間なく流れています。ぐるぐると流れる水を追っていると目がまわってしまいそう。

白い螺旋から伸びるウェーブ状の水路をたどっていくと、一本の木へと繋がります。この木はキンモクセイなので、秋の始まりに訪れると芳醇な香りを楽しめることでしょう。

パンフレットには「子どもたちが葉っぱを流し、そのスピードを競うなどして安全に遊ぶことができる場所」との記載が!子供に限らず、大人でも楽しめそうです。

天文の塔

水に浮かんでいるのは「天文の塔」。高さ8m、直径9mとなかなかの大きさで非常に存在感があります。

この塔は中に入ったり、上に登ったりすることが可能。階段をえっちらと登っていくと、先程の螺旋の水路をはじめ、園内を見渡すことができます。

実はこの塔は、「太陽の道」とも呼ばれる北緯34度32分上に位置しています。この線上には伊勢神宮、室生寺、長谷寺、箸墓古墳といった信仰上重要なスポットが並んでおり、太陽信仰と深い関係があると考えられています。

この公園の作者であるダニ・カラヴァンは、このような土着の信仰も調査し、作品に取り入れているそうです。ううむ、これまでさらっと見て来ましたが、それぞれの作品にはかなり深い意味が込められているのかもしれません。

ダニ・カラヴァンとは

ダニ・カラヴァンとはどういう芸術家なのでしょうか?園内の作品を鑑賞していたら、彼の生い立ちや素性がとても気になってきました。

1930年にイスラエルのテルアビブに生まれた彼は、フィレンツェとパリにて絵画を学びます。その後、30代から彫刻を作り始め、舞台芸術などの仕事もこなすように。

壮大なスケールの野外作品を作り上げることで知られており、その場所の歴史や自然に深く結びついた作品作りは、「環境芸術の先駆者」とも称されています。

そんな彼の作品は、日本にも多く存在しています。ここ室生山上公園芸術の森の他には、以下の4ヵ所で常設されているようです。

・「隠された道」@札幌芸術の森美術館
・「マアヤン」@宮城県美術館
・「MAALA 高きへ」@ヤンマースタジアム長居(大阪長居陸上競技場)
・「ベレシート/初めに」@霧島アートの森

先述した太陽の道に加えて、弘法の井戸と絡めた作品や、地元の作家に対するオマージュもあったりと、その場所ならではの要素が込められている彼の作品。他の作品もぜひともめぐってみたくなりました!

見学所要時間とアクセス

園内は縦長で、その距離は約600m。見学所要時間は、さらっと見るだけなら30分ほど、じっくり見学したり写真撮ったりしても1時間程度だと思います。

アクセスは近鉄大阪線の室生口大野駅からバスで14分ほどのバス停《室生寺》から徒歩15分ほど。バスの本数は1時間に1本程度です。

車の場合は国道165号線から10分ほど。最後の5分ほどは細い山道を登っていくので運転要注意です。駐車場は無料です。

室生寺のすぐ近くにあるため、合わせての訪問がおすすめ。わずか1.5kmほどなので、車だと5分ほどでアクセスできます。

開園時間 10:00~17:00 ※12~3月は16:00まで
休園日 火曜、12月29日~2月末日
料金 410円
公式サイト http://www.city.uda.nara.jp/sanzyoukouen/concept/

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