花に彩られた格式高い門跡寺院『仁和寺』(京都市右京区)

京都府

国宝建造物を擁することから世界遺産にも登録された由緒正しき大寺院。すらりと伸びる五重塔や、京都御所から移築された金堂、さらには遅咲きで知られる御室桜など多数の見どころがあります。ところで、門跡寺院とは何でしょうか?

訪問日:2023/3/27(月) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

仁王門の先の受付

金閣寺、龍安寺、仁和寺という3つの世界遺産寺院をつなぐきぬかけの道。仁和寺は道路に面した巨大な仁王門がとにかくインパクト抜群なお寺。江戸幕府3代将軍・徳川家光の寄進によるもので、知恩院・南禅寺とともに「京都三大門」に数えられているそうです。

睨みをきかせる仁王像の間を抜けると、拝観受付となります。時期によって拝観内容が異なりますが、春の御室花まつり期間中は下記拝観料となります。

春の御室花まつり期間:2023年3月20日(月)〜5月7日(日)
①御室花まつり特別入山料 800円
②御所庭園 500円
③霊宝館 500円

それぞれお得なセット券もあります。今回月曜に訪問したところ霊宝館は休館日。ということで①②のセット券1,100円にてめぐることにしました。

中門を越えて五重塔へ

砂利の参道の先に見えてくるのが中門。令和6年3月末まで修繕中であるため、シートに包まれています。ある意味レアな光景です。

花まつり期間中は、この門の手前が拝観受付。チケットの提示が必要になります。

中門の先に見えてくるのが重要文化財の五重塔。寛永21年(1644年)に建立されたもので、高さは36.18m。

各層の幅に差が少ないため、すらっとした印象の建築です。この上層に行くほど幅が小さくなることを「逓減(ていげん)」と呼び、最下層に対する最上層の割合を逓減率と読んだりします。この仁和寺五重塔は「0.69」と、最上層では約3割ほど小さくなっています。

ちなみに五重塔の中で最古である法隆寺の逓減率が「0.5」と、最上層が最下層のちょうど半分の大きさ。どっしりと安定感のある印象になります。

内裏から移築された建築

本堂にあたる金堂。慶長18年(1613年)に建てられた内裏の紫宸殿を移築したもので、現存最古の紫宸殿として国宝にも指定されています。堂内には本尊の阿弥陀三尊像、四天王像などを安置しているそうです。

御影堂(みえどう)は、弘法大師像、宇多法皇像、仁和寺第2世性信親王像を安置するお堂です。

先ほどの金堂と同様に、慶長年間に内裏清涼殿の一部を賜り、再建されたもの。他に常御殿も同様に内裏より移築されていましたが、明治期に焼失してしまったそうです。

内裏、すなわち天皇の住まわれる「御所」からの移築が多い仁和寺。通常の寺院よりも格式の高い寺院なのでしょうかね。

遅咲きの御室桜

花の見頃情報は、仁王門の前に掲示されています。拝観料を支払う前に確認できますが、例え見頃でなくてもここまできて引き下がるのは難しいです。公式サイトに掲示されていたら訪問前に知ることができるのですが、見つけることができず。

3月下旬頃に訪問したところ、仁和寺を代表する御室桜(おむろざくら)はまだまだつぼみ。この御室桜は、江戸時代より人々に親しまれてきたサクラの種類。樹高が低く、遅咲きで知られています。

例年だと4月上旬〜中旬くらいが見頃とのこと。サクラの大混雑シーズンから少し外れるので、穴場スポットかもしれませんね。

御室桜には早かったのですが、ミツバツツジが見頃。濃いピンクの色合いがとっても華やかです。

ソメイヨシノも多数植えられており、ちょうどこちらは見頃。御室桜と花期がずれているため、広い期間でサクラの花を見ることができるのです。

格式の高い門跡寺院

「門跡寺院(もんぜきじいん)」という言葉をご存知でしょうか?なんとなくその字面から、「城跡」のような遺跡をイメージしてしまいが、その意味するものは全く異なります。

門跡寺院というのは、皇族や公家が住職を務める寺院のこと。寺院側は位の高い人物を迎えることで寺院は格式を高め、礼遇や特権を受けることができます。さらに皇室や公家側では、跡取り以外の子息を出家させることで、結納や領地分封といった出費を減らしたり、後継者争いを防いだりすることができたそうです。

そんな門跡寺院の元祖とも呼べるのがこの仁和寺。昌泰2年(899年)に宇多天皇が出家、自らが建立した仁和寺に入室して法皇となったことが、門跡寺院のはじまりといわれています。

その際に、この仁和寺を御室御所と称していました。御所というのは、位の高い人物の邸宅を指す言葉。天皇が住まわれていた京都御所や皇居をはじめ、他にも多数の御所が存在していました。

門跡寺院でもあり、御所とも呼ばれた格式の高い仁和寺。内裏から移築が多いのもこういった理由に拠るのでしょうね。

庭園が広がる仁和寺御所跡

受付隣に入口のある御所庭園。こちらこそが御室御所であった場所。現在は仁和寺御所跡として国の史跡にも指定されています。

靴を脱いで進むと白書院。目の前には「南庭」が広がる、心落ち着く空間です。白砂で構成されたシンプルな庭園は吸い込まれそうになります。

先ほど内裏より常御殿が移築されたが焼失してしまったという話を述べましたが、常御殿はここで宸殿として活用されていました。明治20年(1887)に焼失してしまった際に代わりに建てられたものがこちらの白書院。もともとは仮宸殿でしたが、後に宸殿が再建されると白書院と呼ばれるようになったそうです。

白書院から続くのが、中心となる建物・宸殿。目の前に広がるのは「北庭」。先ほどの南庭とはうってかわって、池に加えて勢いよく流れる滝も造られた池泉式庭園です。

仏堂である霊明殿。歴代門跡の位牌を祀っています。本尊の薬師如来像は永らく秘仏であり実態不明でしたが、昭和63年(1910)の調査を受けた後に重要文化財へ、さらに国宝へも指定されています。

そんな歴史的建築をめぐっていると、突然現れるのは将棋の展示。将棋の竜王戦は7番勝負となりますが、そのうち第2局がここ仁和寺で繰り広げられたそうです。

アクセスと拝観情報

嵐電(京福電鉄)の御室仁和寺駅から徒歩3分、JR嵯峨野線の花園駅より徒歩15分。バスの場合は京都駅より30~40分ほどでアクセスできます。

拝観時間 9:00~17:00
料金 御所庭園:800円/霊宝館:500円
公式サイト https://ninnaji.jp/

※掲載の情報は2023年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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