瀬戸内海に浮かぶ安芸灘諸島の島伝いに橋が架かる海の道・とびしま海道。まずは、歴史と文化を感じる「下蒲刈島」、古代の遺跡が残る「上蒲刈島」、インパクト抜群なサークル展望台がある「豊島」の3島へ向います。
安芸灘とびしま海道とは
とびしま海道は、安芸灘(あきなだ)諸島の島々に橋が架かった海を渡るルート。広島県の呉市より安芸灘大橋を越えて渡った先に、下蒲刈島・上蒲刈島・豊島・大崎下島・岡村島と5つの有人島が連なっています。
すぐ近くにあるしまなみ海道と似たイメージですが、そちらが広島県尾道市から瀬戸内海を越えて愛媛県今治市に繋がるのに対し、とびしま海道は通り抜け不可。
架橋構想はあるそうですが、現状は岡村島までしか橋が架かっていません。終点までたどりついた場合は、「来た道を戻る」か、「船でしまなみ海道などの他の島へ渡る」かの2択になります。
本州と四国を連絡する役割を持つしまなみ海道に比べると、訪れる人はまだまだ少ないのですが、そのため離島らしいローカルな雰囲気は多く残ります。まだまだ知られざる魅力を秘めているような気配を感じます!
とびしま海道へのアクセス
一番最初の安芸灘大橋のみ有料で、乗用車は730円、軽自動車は570円の料金がかかります。ETCは使用不可なので現金の準備をお忘れなく。
この安芸灘大橋の通行料金には、観光客向けな割引サービスもあります。下蒲刈島の観光施設の入場料やショップでの購入金額が1,000円を超えると、帰りに利用できる通行券をもらうことができるのです。一度の購入でなく、合計で1,000円になれば良いので、割と簡単に達成できます。
サービスを受ける際に、安芸灘大橋通行の領収書が必要となります。誤って捨ててしまわないようご注意ください。また、観光施設で提示する必要があるので、車に放置せずお財布に入れておくとスムーズです。
【①島目】下蒲刈島
とびしま海道の玄関口とも呼べる1番目の島は下蒲刈島(しもかまがり じま)。古来より交通の要所であり、瀬戸内海を行きかう船の寄港地として繁栄しました。上蒲刈島へと渡る蒲刈大橋の近くにある三之瀬地区は、歴史ある建物や美術館が集まる文化的なエリアで観光客に人気です。
白崎園
安芸灘大橋を渡るとすぐ左手に現れるパーキング。トイレ、自販機、そして、とびしま海道の観光案内板が設置されているため、とびしま海道めぐりのスタート地点にぴったり。
目を引くのは2本の巨大な塔。こちらは京都生まれの陶芸家・今井眞正の作品。男性と女性を表しており、春分の日と秋分の日には、この塔の間に朝日が昇るそうです。
松濤園
観光スポットが密集する三之瀬地区において、代表的なのがこちらの松濤園。「陶磁器館」「御馳走一番館」「あかりの館」「蒲刈島御番所」の4つの資料館が集まる博物館です。それぞれの建物は各地より移築した伝統的な日本家屋を利用しています。三之瀬瀬戸の波穏やかな海をバックに趣深い建築が立ち並ぶ様子は、風情ある港町のような雰囲気です。
休館日:火曜
料金:800円
※館内は撮影禁止です。
陶磁器館
厳島神社の門前町にあった古民家を移築したもの。厳島神社のある宮島は土地が狭かったため、屋根がほとんど突き出していないのが特徴的です。館内の奥には海が見える茶室もあります。
名前が示す通り陶磁器を専門に展示する博物館で、瑠璃釉が美しい伊万里焼をはじめ、色鮮やかな作品が並びます。製法や書かれているモチーフの解説が掲載されているため、陶磁器について知識が無くても楽しむことができるスポット。三輪龍氣生さんや隠崎隆一さんなど現代の陶芸家の作品には、現代アートの感性も詰まっています。
陶磁器の名前って「色絵松鶴文長皿」のように漢字が並んでいてとっつきにくい印象だったのですが、「技法+文様+器種」の3つの要素が並んでつけられているそう。これを知っただけで、作品が急に見やすくなってくるので不思議です。
御馳走一番館
富山県砺波の有川邸を移築した、朝鮮通信使に関する資料館。
江戸時代、鎖国をおこなっていた日本。外国との交易を絶っていましたが、中国とオランダを「通商の国」、琉球と朝鮮を「通信の国」として交渉は続けられていました。
下蒲刈島は朝鮮からの使者である朝鮮通信使の寄港地。朝鮮通信使は、国書交換にともない様々な文化をもたらしました。館内には朝鮮通信使船の復元模型や、朝鮮通信使来日の様子を描いた絵巻物、行列を再現したBGM付きのジオラマなどが展示されています。
印象的なのは「三汁十五菜」などもてなし料理の再現。山のように飾り付けられたカマボコやミカンの食品サンプルはとってもユニーク。
あかりの館
山口県の上関町より移築した江戸時代の家屋・旧吉田邸。館内には多種多様なランプが並びます。
ただの照明器具かと思いきや、自転車用・教会用・鉱山用など多種多様な用途があるため、そのデザインのバリエーションはとっても豊か。かわいらしくもゴージャスなヴィクトリア王朝時代のフェアリーランプも見ごたえ抜群です。
蒲刈島番所
瀬戸内海交通の重要地点であった下蒲刈島。江戸時代には幕府による番所が設けられていました。こちらは山口県上関町に現存していた番所をもとに復元したものです。
民衆に法令を伝える手段は、木の札に書いて周知する「高札」という方法で行われていました。復元された高札場には、「鉄砲を撃ってはいけない」「男女がいっしょにいてはいけない」などの注意書きが並びます。
番所の前には枯山水庭園が造られています。目の前には海が広がり、開放的な気持ちになります。
白雪楼
石段を登った先の高台に立つ建築。もともとは京都にあったお茶室を沼隈、竹原と経てこの地に移築したものです。
休館日:火曜
料金:400円
2階は海を見渡す爽快感バツグンの畳部屋。他に人がいなかったのでしばしごろんと寛いでしまいました。もしここに宿泊して朝を迎えることができたら何て幸せなのでしょうか。
行き交う船や蒲刈大橋を通り抜ける車を見ていると、ここだけ時間の流れが違うような錯覚を感じます。
窓の外ばかりに目が行ってしまいますが、天井には白い文字がびっしり。これは、頼俊直が天井に掲げた「酔翁亭記」を復元したもの。実物は竹原の春風館に保存されているそうです。
この白雪楼では、お抹茶もいただけます。庭園と海を眺めていただくお茶は心が落ち着きます。虫の声と鳥の声、遠く船の音だけのとっても静かな世界。
(※料金は入場料に含まれています)
昆虫の家 頑愚庵
広島の長浜より移築してきた邸宅は、昆虫にまつわる作品や昆虫標本を多く集めた博物館。下蒲刈島で見ることのできるチョウやトンボをはじめ、世界の美しい昆虫標本を見ることができます。
休館日:火曜
料金:300円
本来は高原に生息しているはずなのに、なぜか下蒲刈島に生息しているキマダラモドキや、広島県で絶滅が危惧されている昆虫など、この地域ならではの展示もあります。
庭園にはチョウが好む植物が植えられており、モンキチョウやシジミチョウが数羽舞っていました。
【②島目】上蒲刈島
とびしま海道2つ目の島は上蒲刈島(かみかまがりじま)。遺跡や古墳が見つかっており、古代より人々が暮らしていたことが分かっています。現在は柑橘類など果樹を中心とした農業中心の島です。
古代製塩遺跡復元展示館
ヤシの木が茂る穏やかなビーチ、県民の浜。この場所を開発する工事の際、偶然にも土器が発掘されます。調査の結果、古墳時代から鎌倉時代にかけての遺跡であることがわかり、沖浦遺跡と名付けられました。
発掘された土器には、製塩土器が多く見つかっております。それを復元展示しているのがこちらのミュージアム。一部屋だけのコンパクトな博物館です。
休館日:月、火
料金:0円
館内には発掘されたままの状態で遺跡が保存・展示されています。映像コンテンツもあり、ホンダワラという海藻を利用した古代人の塩「藻塩」ができるまでの行程をとってもわかりやすく教えてくれます。
隣には、「かまがり古代製塩体験施設」があり、古代の製法で行う製塩体験も行っているそう。ちょうど体験学習を行っており、子供たちがたくさん集まっていました。
【③島目】豊島
3つ目の島は豊島。「としま」でも「てしま」でもなく、「とよしま」と読みます。とびしま海道のちょうど真ん中に位置している島です。
十文字山展望台
15分ほど山道を登るのですが、かなり険しい道です。
待避所もほとんどない細い道なので、すれ違いは非常に困難。舗装はされていますが、植物が生い茂っているため、車体にバシバシ当たってきます。おまけに分かれ道も多く、ナビが無いと道に迷う危険性もあります。
そんなハードな道を越えて辿り着いたのがこちらの展望台。まるでローマの古代遺跡のようで、離島の山奥とは思えないほど立派です。サークル部分の頂上には、階段で登ることができます。
十文字山の標高は309mとそれほど高い山ではありませんが、視界360度に広がる穏やかな瀬戸内海は開放感抜群!大崎下島や上蒲刈島など周辺の島々が見渡せて、とっても爽快です。
一応展望台の隣にトイレはありますが、蜘蛛の巣だらけなので利用するのは難しいかもしれません。
次回も引き続きとびしま海道!
情緒あふれる港町が残る「大崎下島」、そしてとびしま海道の終点「岡村島」へ向かいます。
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