日本画かである平山郁夫の作品を展示する美術館。シルクロードを描いたファンタジックな作品はもちろん、再現された遺跡や瀬戸田を描いた作品など、様々な見どころがあります。わかりやすい映像コンテンツもあるので、詳しく知らない方でも楽しめる美術館です。
平山郁夫のミュージアム
平山郁夫(ひらやま いくお)は、生口島の瀬戸田生まれの日本画家。15歳のときに原爆投下によって被爆しており、後遺症に苦しみながらも仏教やシルクロードをテーマにした作品を多数作り上げていきます。
しまなみ海道の離島、生口島(いくちじま)にある平山郁夫美術館は、そんな平山郁夫の作品を展示した美術館。耕三寺博物館のすぐ傍にあるため、合わせて訪問がおすすめ。
日本らしさを感じさせる切妻屋根の建築。手掛けたのは、建築家の今里隆。「両国国技館」や「箱根彫刻の森美術館 ピカソ美術館」、「醍醐寺霊宝館」など様々な美術館や博物館を手掛けている人物です。
映像のイントロダクション
受付を進むと、展示室の手前のギャラリーにはモニターが設置されています。ここで流れているのは、「広島・瀬戸田に生まれて」「敦煌」「桃源郷」という、各展示室におけるテーマに沿った内容の映像。
また、ハイビジョン室では映像プログラムも上映中。10分ほどの映像が3つローテーションで随時上映されています。出入り自由なので、滞在時間に合わせて気軽に鑑賞できます。
最初にこれらの映像を見ておくと、その後の作品鑑賞がずっと楽しくなります!
第一展示室「平山郁夫の歩み
まずは第一展示室へ。ここでいきなり衝撃だったのが、最初に幼少期の作品が展示されているということ。
こちらは5歳頃に描いた作品《なわとび》。まだあどけなさの残る微笑ましい作品ですが、背景の空に描かれたセスナ機から、既にキャンバス内での奥行きを感じさせます。
続いて11歳のときの《鯛》。影付けや色の濃淡で立体的に描かれた写実的な作品です。現代の感覚ではまだ小学生という年齢でこれは上手すぎませんか・・・?
13歳のときの作品《山本元帥(黒)》。もはや写真に近い仕上がりの人物画。明暗のコントラストが強く、力強さを感じます。
14歳のときの作品《元寇の役》。迫力のある構図、細やかな書き込み、うねる波・・・。今にも動き出しそうな臨場感ある作品です。他にも「桶狭間に向かう織田信長」「曾我兄弟復讐之図」などが展示されており、歴史が好きな少年であったと推測されます。
第二展示室「敦煌」
敦煌(とんこう)というのは、シルクロードから中国本土へ入る玄関口。原爆の後遺症に苦しむ平山郁夫は、1958年に東京・日本橋で開催された「中国敦煌芸術展」にてその魅力に取りつかれます。
こちらの《敦煌A》は、1980年、50歳のときの作品。壮大な砂の中に仏教遺跡である莫高窟(ばっこうくつ)の姿が。
多数の石窟内部には、4世紀から千年に渡り彫られ続けていった数多の仏教壁画が残されており、砂漠の大画廊ともいわれています。
世界遺産にも指定されている莫高窟、いったいどんな感じなのか気になってきたところで驚きの仕掛けが・・・!
展示室の奥には、スーパークローン技術によって再現された莫高窟があるのです!!置かれたライトで照らして探検気分を味わうことができます。展示室の一角という小さなエリアではありますが、神秘的な雰囲気を存分に体感できるユニークな展示です。
第三展示室「桃源郷」
最後の展示室となる第三展示室は、平和で豊かな理想郷がテーマ。平山が求めた平和な世界を描いた作品が並んでいます。
2つの大きな絵画は、《シルクロードを行くキャラバン》。手前は月が輝く夜、奥は太陽が照りつける日中。キャラバンの進行方向も逆になっており、対になった作品です。
物を運びながら文化や宗教を伝えるキャラバンは、平和なときにしか行き来することができません。そのため、平和のシンボルという意味も込められているそう。
同じくキャラバンが描かれた《絲綢(しちゅう)の路 パミール高原を行く》。険しい山道を進むキャラバンの力強い姿が描かれています。こちらは集大成とも呼ばれる「薬師寺玄奘三蔵院の壁画」の翌年である2001年に完成されたもの。さらなる険しい道を進むという自身の決意の表れともとれます。
シルクロードへの想いを存分に感じる作品群を眺めていると、こんな絵画も並んでいました。
中心部の円形の部分には寺院の塔が描かれています。こちらは《瀬戸田曼荼羅》という作品。
ここに描かれているのは生口島の瀬戸田に今もそびえる向上寺三重塔。そのまわりに広がるのは青い海を泳ぐ金色の魚群。ふるさとの瀬戸田は平山にとって心の桃源郷であったのではと考えさせられます。
アクセスと営業情報
尾道側からは生口島北ICより13分、今治側からは生口島南ICより13分。「沢」交差点の角に無料の駐車場があります。
すぐ近くには「耕三寺博物館」、レモン鍋が絶品な「瀬戸田大将めしちどり」をはじめとした食事処やカフェなどもあるので、セットでの訪問がおすすめです。《瀬戸田曼荼羅》に描かれていた「向上寺三重塔」の実物もあります!
開館時間 | 9:00~17:00 |
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休館日 | 無休 |
料金 | 1,000円 |
公式サイト | https://hirayama-museum.or.jp/ |
※掲載の情報は2023年5月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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