清らかでアーティスティックな禅宗寺院『神勝寺 禅と庭のミュージアム』(福山市)

広島県

広島県福山市にある臨済宗のお寺。広い境内は清潔感にあふれており、多くの諸堂が点在しています。通常の寺院建築とは異なる現代アート風の建築も並んでおり、新しいZENを知ることができる場所です。

訪問日:2020/9/21(月)

清々しい禅宗寺院

神勝寺は、1965年に建立された臨済宗建仁寺派の禅宗寺院。開基の神原秀夫は、常石造船という造船会社の社長であり、沼隈町の町長も務めていた人物です。

境内は見通しの良い明るい庭園が広がっており、とにかく清々しい空間。何も考えずに歩いているだけでも心地良いです。

まるで川のような池もあります。太鼓橋や木舟、そして蓮の葉が浮かんでおり風流な雰囲気を引き立てます。

境内は広く、山の中に点在した建築をめぐって歩きます。基本は木々に囲まれた森の中の道ですが、手入れが行き届いており歩きやすい。

三角屋根がかわいい『松堂』

「禅と庭のミュージアム」という現代的な名が示す通り、新しい感性にあふれています。禅宗の伽藍に加えて他の寺院では見られないアーティスティックな建築が楽しめるのが最大のポイント。

こちらの建物は寺務所兼受付の松堂(しょうどう)という建物。三角形屋根でメルヘンさも感じるデザインとなっており、寺院の建築というよりもムーミン谷の小屋のような雰囲気です。屋根の頂点に1本のマツが植えられているのもかわいらしい。

軒先は回廊状になっているのですが、ここもおしゃれカフェのような洋風な造り。土の壁からはぬくもりを感じます。

こちらは藤森照信という建築家による作品。岐阜県多治見市の「モザイクタイルミュージアム」や長野県茅野市の「神長官守矢史料館」など、観光スポットも多く手掛けております。非日常的な印象でありつつ、ぬくもりを感じさせる作風が特徴です。

白隠コレクション並ぶ『荘厳堂』

受付から15分ほど登った先、境内で最も奥地にある荘厳堂は、枯山水の大きな庭園が広がるすっきりとしたお堂。

ベンチも多く設置されており、ひと休みにもぴったり。高台にたっているため、吹き抜ける風がとっても爽快です。

この荘厳堂の内部は、江戸時代の禅師・白隠(はくいん)の作品を展示するミュージアムとなっています。並ぶのは、禅の教えや禅僧を描いた水墨画。広く民衆に布教を行った白隠は、絵を用いて人々に禅の教えを説いていました。

真面目な作品ばかりかと思いきや、ときおりユーモラスな一面も見えます。こちらの漫画は、江戸時代に存在していた「すたすた坊主」。裸に腰蓑のような注連縄(しめなわ)をまとい、人々に物乞いしていたそうです。

なお、荘厳というコトバですが、本来は「厳かな」という意味ではなく「智慧や福徳などのぜんびを持って、身や国を飾ること」を意味するそう。

飛来した宇宙船『洸庭』

寺務所すぐ裏の階段を登ると、橋があります。そこを渡った先にあるのがこちらの洸庭(こうてい)。全長46mとかなりの大きさで、近づくとその存在感に圧倒されます。

伝統的な技法である杮葺きで造られていますが、曲線で構成された外観は伝統建築というよりは、地球に飛来した未確認飛行物体のようです。

建物の前には池泉回遊式庭園が広がります。丁寧に手入れされた庭園と、一面に敷き詰められた礫が全体の世界感を作り上げます。

こちらは彫刻家・名和晃平と、彼自信が参加するチームSANDWICHによる作品。現在は休止中でしたが、通常時は内部に入ることが可能。話によると、内部は暗闇の中に水辺が広がっているらしいです。

曲面にぽっかりと空いた入り口は、まさに宇宙船のようで、今にも宇宙人が降りて来そうです。

内部には入れませんが、足元にはベンチがあるのでそこでひと休みできます。日差しが遮られるので、夏場でも涼しい。

そこから庭園を眺めると、まるで脚が額縁のような働きをして、見える景色を切り取ります。

ランチからお風呂まで楽しめる境内

食事や入浴など、日常の行いすべてを修行と考える禅の世界。神勝寺では、そんな日々の生活に関わる体験もできます。

僧侶にとっての台所・庫裡にあたる五観堂では、実際に修行僧も食べているというメニュー「神勝寺うどん」を味わうことができます。営業時間は11:00〜14:30となっています。

浴室も備えており、実際にお風呂に入ることも可能です。通常期ならば10:00~16:00の時間帯に500円で入浴可能。ただいまの期間は休止中でしたが、写真を見る限りでは高級温泉旅館のような趣のある湯舟です。

他にもお抹茶やかき氷など各所に休憩スポットがあります。ゆったりと過ごすのにぴったりなお寺です。

アクセスと駐車場

神勝寺は広島県福山市沼隈(ぬまくま)町にあります。

福山駅から車で30分ほど。市街地から外れた山の中ですが、そこまでの道は走りやすいです。
門前には無料駐車場があります。台数はそれほど多くありませんが、連休の訪問でも停めることができたので満車になる心配はなさそうです。

拝観時間:9:00~17:00
料金:1,200円

見学所要時間は、ゆったりとめぐって1時間30分ほどでした。長めに時間をとってゆっくり過ごしたくなる場所です。

コメント

  1. […] 土塗りの壁にはカラフルな陶磁器の破片が埋め込まれています。この建築を担当したのは藤森照信氏。長野県茅野市の「神長官守矢資料館」や、広島県福山市の「禅と庭のミュージアム」、滋賀県近江八幡市の「ラ コリーナ近江八幡」など印象的な建築を各地に残している人物です。 […]

  2. […] このラコリーナを造ったのは、広島県福山市の禅と庭のミュージアムや、岐阜県多治見市のモザイクタイルミュージアムを作り上げた藤森照信。園内にも随所には、彼らしいファンタジックな要素が詰まっています。 […]

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