鎌倉時代から残る巨大な木造建築のお堂。その内部には、視界を埋め尽くすほどの多数の千手観音が安置されています。鈍く金色に輝く姿に目が眩むこの像、千体観音と呼ばれますが、実際は千体ではないようです・・・!
歴史深く人気の寺院
三十三間堂は妙法院の飛び地境内に建つ天台宗の寺院。正式名称は「蓮華王院本堂」ですが、その本堂の通称から三十三間堂と呼ばれています。
この寺院は、もともとは後白河上皇の院政庁である「法住寺殿」の一角に平清盛が造進したもの。1165年の完成当時は五重塔もそびえていたそうですが、その84年後に焼失、1266年に本堂のみが再建されます。
世界遺産「古都京都の文化財」には含まれておりませんが、訪れる人は多く、メジャーな寺院のひとつ。日曜の昼過ぎに訪問したところ大勢の観光客でにぎわっていました。基本的には屋内となる堂内がメインの見どころであるため、雨の日に訪れるのにもおすすめな場所です。
超巨大な木造建築
受付を進むとすぐに目に入るのが、三十三間堂こと本堂。
前述の通り鎌倉時代に造られた建造物であり、その後の応仁の乱の兵火や、江戸時代に発生した方広寺大仏殿の火災、数多くの地震からも免れ、現代まで残っています。砂と粘土の層となった地盤に建てられており、それが免震効果を生んでいることも近年の研究によって明らかになりました。
南北の長さが120mにも及ぶ超巨大な木造建築。現在の東大寺大仏殿の横幅は57mなので、長さだけならばその倍以上なのです。端から見ると、反対側は消失してしまいそうなほど。
「三十三間」というのは長さの単位ではなく、柱間(はしらま)の数のこと。均等に並ぶ柱が整然と続く姿はリズミカルな美しさです。この「33」という数字は観音菩薩が33種の姿に変化するなどの由来があるそうです。
ちなみに、外から見ると柱間は三十五間あります。三十三間というのは、内陣の柱間の数ですので混同しないようにご注意くださいね。
荘厳なる仏像ワールド
外観もかなりのインパクトですが、特筆すべきはお堂内部。階段状の台にずらりと並ぶのは千体千手観音立像。これはもう理屈抜きで圧倒される光景です。
(堂内は撮影禁止につき、壁に貼られていたポスター、パンフレット、購入したクリアファイルをイメージとして掲載しております。)
中央には中尊である千手観音座像。立像は164〜167cmと人間と同じくらいのサイズですが、こちらは3mと一際大きな姿で鎮座しております。
さらに仏壇の前には風神・雷神と二十八部衆、合計30体が前列に並びます。この二十八部衆は、ヒンドゥー教やバラモン教の神々が仏教に導入された神様が多く、三面六臂の「阿修羅王」、くちばしをそなえた「迦楼羅王」、龍をまとった「難陀龍王像」、ワニを神格化した「金毘羅像」など個性的な姿の仏像が並びます。
実際の仏様は何体?
「千体」という名で呼ばれますが、実際は1,000体ではありません。
「百穴」や「千本桜」のように、数が多いものに百や千といった漢数字をあてることは多々あるので、ここもやはり数百体なのかなと思いきや、立ち並ぶ千手観音立像は左に500体、右に500体の合計1,000体。
さらに、本尊の背後に1体隠れるように置かれているため、合計は1,001体となるそうです。なんと、1,000体より多かったのです!!
さらにさらに観音像は「寄木内刳(よせぎうちくり)」という内部が空洞となる造りをしており、ここに摺仏という版画の仏図が数十枚ずつ納められています。そのため「一万体観音」と呼ばれることも。
さらにさらにさらに前述の通り観音菩薩が33種の姿に変化することから33倍でカウントされて「三万三千三十三体」と言われることもあるそう。
と、考え方でどんどん数が増えていきますが、実際の千手観音立像の数は前述の通り1,001体。ここに中尊の千手観音座像・風神・雷神・二十八部衆の31体を加えると1,032体ということになるようです。
腕は1,000本無い
多数の千手観音立像は、漆箔押しで仕上げられています。寄木造というパーツ毎に作成する工法が用いられているため、分業が可能であり、そのためこれほどの数を建立できたとも言われています。
一つ一つ手作業であるためディティールはわずかに異なっていますが、十二面・四十二手という部分は共通になります。
あれ、四十二手ということは千手ではないのでしょうか?これこそ先ほどの千体のときに脳裏を過った実際には1,000に及ばないというパターンでは・・・。
実は、千手観音像というのはほとんどの場合手の数は42本。合掌している手を除くと40本になります。その40本の手で「二十五有」という25種の世界を救うため、40×25で合計1,000手分の力を持っているという計算になるそうです。
圧巻の検索システム
堂内を進んで行くと、最後に現れるのはタッチパネル式のモニター。こちらはなんと、観音像検索システム。
堂内の像には全て名前が付いています。このシステムでは、名前はもちろんその由来などが写真つきで解説されているのです。実物も壮観でしたが、モニターにデータがずらりと並ぶ姿も同様に圧巻です。
千手観音立像は、先述の通りディティールが少しずつ異なっています。特に見分けやすいのは、表情の違い。噂では、会いたい人の面影に似た観音像が必ず一体はあるといいます。そんな仏像に出会えましたら、このデータベースで名前をしっかり覚えてかえるのがおすすめです・・・!と言いたいところですが、1.001体の立像を見比べるのも大変ですし、それを覚えてまたこのデータベースで探すのも大変ですね。
ところで、寺院関係者の方などで、全部の名前や姿を把握している人はいるのでしょうか?
アクセスと拝観情報
京阪本線の七条駅より徒歩7分。「京都国立博物館」の目の前にあるので、合わせての訪問もおすすめです。
拝観時間 | 8:30~17:00 ※11/16~3/31は9:00~16:00 |
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料金 | 600円 |
公式サイト | http://www.sanjusangendo.jp/ |
※掲載の情報は2023年4月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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