桜のレールの正体を探る『蹴上インクライン&琵琶湖疏水記念館』(京都市東山区)

京都府

敷かれたレールの上を歩くことができる蹴上インクライン。汽車や電車が通っていたのかと思いきや、このレールはなんと舟が通っていました。琵琶湖疎水記念館へ訪れると、そんなインクラインの正体や一大プロジェクトであった琵琶湖疎水についてたっぷりと学ぶことができます。

訪問日:2023/3/26(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

桜の名所・蹴上インクライン

蹴上インクラインは明治24年(1891年)に完成、昭和23年(1948年)まで使用されていたインクライン。役目を終えた後もレールが保存されており、自由に見学することができる人気の観光スポットです。

サクラの名所としても知られており、春に訪れるとレールの両サイドを華やかなサクラの花が彩ります。撮影スポットとしても人気で、雨の日にも関わらず多くの人であふれていました。

ところでインクラインって何でしょうか?

琵琶湖疏水記念館

蹴上駅からインクラインを下って行くと、クリーム色の建物が見えてきます。こちらは琵琶湖疎水記念館という、無料で見学できるミュージアム。

B1階~2階と3フロアの建物で、そのうちB1階・1階が展示室となっています。ガイダンスシアターやジオラマ、プロジェクションマッピングなどのわかりやすい展示が多く、知識が無くても楽しむことができます。

地下一階にはベルトをかけて発電機を回して電気を生み出していたペルトン式水車などの屋外展示も。さらにはテラスが広がり、春と秋の期間限定でそすいカフェも営業しています。

琵琶湖疎水は何のために造られた?

この施設のメインテーマとなっているのが琵琶湖疎水。疎水というのは人工的に造られた用水路のことで、この琵琶湖疏水は文字通り琵琶湖から水を引くために造られた、全長約35kmにも及ぶ疎水です。

ときは明治時代の初期。東京奠都とともに衰退の危機にあった京都を立て直し、にぎわいを取り戻すために第3代京都府知事の北垣国道は琵琶湖の水を京都へ引くという計画をたてます。京都の復興と近代化をかけた一大プロジェクトであったのです。

当時の主流であった外国人技師の力は借りず、さらに現代のように機械も発達していないためほぼ人力で行われた工事。莫大な費用は国や京都府からの補助、京都市民に対する特別税などで賄われました。

着工から5年の歳月をかけ、明治23年(1890年)、ついに第1疏水が完成。引かれた水は、生活用水や田畑の灌漑、寺院の庭園の池、動物園の噴水、プール、防火用水など様々な用途で使用されていきます。水力を利用して機械を動かし産業を盛んにしたり、大阪まで通すことで輸送面にも大きな影響を与えました。

さらにその水を活用して明治24年(1891年)には日本初の事業用水力発電所「第一期蹴上発電所」が建設。明治28年(1895年)には、ここで作られた電気を用いて日本初の電車である京都電気鉄道が運行開始します。

多くの人々が尽力して完成した琵琶湖疎水によって、京都の街は活気を取り戻し、現代の発展へとつながっていくのです。

明らかになるインクライン

そんなわけで舟運としても利用された琵琶湖疏水ですが、その行程には高低差が大きく舟では移動できない箇所がありました。

そこで登場するのが蹴上インクライン。インクラインというのは、斜面において船を往復させるための傾斜鉄道のこと。高低差約36mという蹴上船溜まりから南禅寺船溜まりの間に設置されました。

舟を一度陸に揚げ、ワイヤーロープにつながれた台車にのせます。ジオラマだととってもイメージしやすいです!

台車のワイヤーロープを動かすドラム(巻上機)の動力は疎水の水力発電で賄われていたそう。B1階から屋外の道を進むと、そのときに使用されていたドラム工場も見学できます。ただしこちらは16:00で閉鎖となるので、気になる方はお早めに。

そんなインクラインですが、舟の利用が少なくなり昭和23年(1948年)に休止となります。一度はレールが撤去されますが、産業遺産として復元。現在では国の史跡として保存されています。

おまけのねじりまんぽ

琵琶湖疏水記念館や蹴上インクラインへ訪れる際に、ぜひチェックしておきたいのが「ねじりまんぽ」。蹴上駅からインクラインへ向かう途中で見ることができます。

名前からは全く想像がつきませんが、その正体がコチラ!

蹴上インクラインの真下を横断するために作られた歩行者用のトンネル。ねじりまんぽというのは、「ねじりのあるトンネル」という意味とのこと。レンガ造りのトンネルですが、その名の通りねじれるように積み上げられています。

斜めに作られており、その強度を保つためにこのような積み方が採用されたそうです。

ところで、「ねじりまんぽ=ねじれのあるトンネル」ならば、「まんぽ=トンネル」ということになるのでしょうか?さらっと調べてみたところ、「まんぽ」は農業用のトンネルや地下水路などを指すそうです。なんかちょっと恥ずかしい響きですね。

アクセスと見学情報

最寄り駅は地下鉄東西線の蹴上駅。蹴上インクラインは駅を出てすぐ目の前、ねじりまんぽをくぐると入口があります。琵琶湖疎水記念館はそこからインクラインを下って徒歩7分ほど。

琵琶湖疎水記念館

開館時間 9:00~17:00
休館日 月曜
料金 無料
公式サイト https://biwakososui-museum.city.kyoto.lg.jp/

※掲載の情報は2023年4月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました