江戸の町に出入りする船を取り締まるための番所について知ることができるミュージアム。再現された実寸大のジオラマは、人々の声や水の音で臨場感たっぷりに仕上がっています。江東区や昭和の暮らしについての展示もユニークです。
水上の関所・中川番所
江戸時代に設置された中川番所。その跡地付近に作られたのが中川船番所(なかがわふなばんしょ)資料館。2003年にオープンしたこちらの施設では、江戸時代の水運や番所の役割などを、貴重な資料とともに展示しています。
中川番所というのは、別名中川関所とも呼ばれていた幕府の施設。河川交通の江戸の出入り口に造られており、そこを通過する船の積み荷と人を改めていました。
想像が膨らむ再現ジオラマ
入館者を出迎えてくれるのは、大きな中川番所の実物大再現模型。木でできた館の前には、積み荷をたっぷりと乗せた船が停泊しており、番所の取り締まりシーンを想像させます。
静かな館内には川の音が常に流れており、何ともノスタルジックな光景です。
しばらくすると、ニワトリの声とともに照明が明るくなってきました!ライトの色と明るさを調整し、数分おきに昼夜が切り替わる仕掛けになっています。ときには雷が鳴り響いたり、猫の鳴き声が聞こえてきたりと仕掛けがたくさんあるため、ずっと見ていられそうです。
リアルな役人の会話
番所には数体の人型が設置されており、その前に立つとどこからか会話が聞こえてきます。「手形は持参しておるか?」「おい、舟がぶつかるぞー!」といった役人のセリフには江戸の情緒があふれています。
商人「今日中に届けなければいけませんのでお早めにお願いします」
役人「文句を言うな!文句を!こちらとて急いでおるのじゃ。これから手形と相違ないか調べを書き写して・・・」
商人「そのような話よりも早くしてくださいませ」
役人「わかったわかった!」
リアルな会話は臨場感たっぷり。耳を傾けていると、江戸時代に迷い込んだような気持になってきます。ときには「舟を見るのも飽きたのぅ」といった役人の生々しい意見も聴こえてきたりします。
取り締まりの内容
さて、関所といえば「入り鉄砲に出女」というコトバが有名。入り鉄砲は江戸に持ち込まれる鉄砲、出女(でおんな)は、江戸から出ようとする女性のことで、この2つは特に厳しく取り締まられました。これは、江戸の治安を守るために持ち込まれる武器と、地方の大名が人質として置いている妻が江戸から逃亡するのを防ぐためと言われています。
この中川番所の高札をざっくり書くと、このような感じ。
・通過する際は笠や頭巾は外し、船の中を見せる
・女性は身分を問わず一切通行不可
・鉄砲は2〜3挺までは許可。その他の武具も同様。
・人が入ることができる器は確かめる
例外もあったそうですが、基本はこのようなルールに基づいて取り締まっていたそう。女性禁止が厳しすぎるかと思いきや、縁組や参詣のためなら許可が降りることもあったようです。
旧中川を見渡す展望室
3階にある展望室からは荒川へと繋がる旧中川が見渡せます。
江戸時代は中川と呼ばれていたこの川は、昭和5年に現在の荒川である「荒川放水路」が完成、その翌年に現在の中川である「中川用水路」が完成したことにより、中川から切り離されます。そのため名前が旧中川へと変わりました。
そんな旧中川の右側には、横につながる水路が見えます。こちらは小名木川。徳川家康によって作られた運河で、隅田川と旧中川を結ぶため、東西にのびています。中川番所は旧中川と小名木川が交差するポイントにありました。
昭和の暮らしも味わえる
江東区の成り立ちや釣り文化など、番所以外の展示もいくつかあります。
気になったのは、2階には昭和30年代の暮らしを再現したお部屋。黒電話やソロバン、ダイヤル式のラジオやレコードプレーヤーなど、レトロな品々が並んでいます。
こちらの重厚な木箱、なんと木製の冷蔵庫!といっても現代の電気式とは異なり、上の段に実際の氷を入れることで下段の食材の鮮度を保つという、クーラーボックスのような仕組みでした。
続いて昭和40年代のお部屋。テレビ、トースター、カメラなど便利なアイテムが加わりました。冷蔵庫も現代的な白物家電タイプに切り替わっています。
ここに展示されているものの多くは、区民から寄贈されたものとのこと。きっと思い出が詰まった品なのでしょうね。
アクセスと営業情報
都営新宿線の東大島駅の大島口から徒歩5分ほど。都営バスも多く走っているエリアなので、錦糸町駅や門前仲町駅からバスで向かうこともできます。
休館日:月曜、年末年始
料金:200円
見学所要時間:30分ほど
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