1300年の歴史を持つ日本を代表する陶磁器・美濃焼の世界にどっぷりと浸れる博物館。美濃焼と一言で言っても、志野・織部・瀬戸黒など様々なバリエーションがあるのが特徴。時代毎に並んだ美濃焼を見て行くと、変化を厭わないその魅力を感じることができます。
美濃焼を知るならココ
岐阜県南部を指す美濃の国。美濃と言えば、古来より続く焼き物「美濃焼」が有名。そんな美濃焼について深く知ることができるのが、多治見市にある美濃焼ミュージアム。瓦屋根の渋い外観から真面目な印象を感じます。
もともとは美濃古陶器陳列所という施設でしたが、1988年に陶磁資料館へ姿を変え、そして2012年に現在の美濃焼ミュージアムへと姿を変えました。平安時代から現代に至るまで約5万点の美濃焼を収蔵しており、年に数回さまざまな企画展も開催しています。
長い歴史を持つ美濃焼
美濃焼というのは、多治見市・土岐市・可児市・瑞浪市の東濃地方で作られる陶磁器のこと。特定の技術ではなく、この地域でつくられる焼き物の総称です。
古くは奈良時代から、朝鮮半島から渡ってきた須恵器(すえき)をベースに製造がはじまります。まだ釉薬(ゆうやく=うわぐすり)が発明される前の須恵器は、ツヤのないサラっとした質感が特徴的。
平安時代には人口釉薬を施した「灰釉陶器(かいゆうとうき)」が生まれ、美濃は全国有数の産地へと成長します。灰釉陶器は須恵器に比べるとツヤがあるのが特徴ですが、まだ柄は付いておりません。
山茶碗や古瀬戸を経て、安土桃山時代に入ると「瀬戸黒」、「黄瀬戸」といった様々なバリエーションの陶器が生産されるようになります。そして、日本初の筆による絵付けが施された「志野」も生まれます。また、古田織部が好んだことに由来する「織部」は、左右非対称の形などの斬新なデザインで大流行します。非常にシンプルだった須恵器から順に見ていくと、その華やかさを実感できます。
現在でも東濃地方は日本有数の陶磁器生産地であり、美濃焼は国内の日用食器に使用されている陶器の50%以上を占めているそうです。
多様な美濃焼
そんなバリエーション豊富な美濃焼ですが、ここではそれぞれ実物がしっかりと展示されています。
『瀬戸黒(せとぐろ)』
名前の通り真っ黒な陶器。鉄分を多く含んだ薬をかけ、薬が溶け出した頃に窯から取り出し急速に冷やすことでこの色味を出しています。瀬戸と名前に付いていますが、美濃独自のものだそう。
『黄瀬戸(きぜと)』
華南三彩(中国の陶器)の影響を強く受けた焼き物。黒くも白くも無く、言われてみれば黄色い姿。ざらっとしており、なんだか油揚げのような質感です。
『志野(しの)』
日本で初めて絵付けが行われたのが志野。長石という鉱物を主成分とした釉薬を使用することで、様々な模様を筆で描くことが可能になりました。
『鳴海織部(なるみおりべ)』
赤い土に白い土や緑色の絵の具で彩られたカラフルな作風で、別名「赤織部」とも呼ばれています。
『織部黒(おりべぐろ)』
瀬戸黒と似た真っ黒な陶器ですが、妙にアンバランスなデザインが特徴的。意図的に全体を歪ませて作っており、織部が斬新なデザインというのは、こういうことだったのかと感じます。
近現代の美濃焼
明治時代の多治見を代表するブランド西浦焼は、色鮮やかで滑らかな質感。古い美濃焼をじっくり眺めたあとに見ると、その華やかさに驚かされます。
パリ万博やアメリカのセントルイス万国博覧会にも多く出品され、国内外から高い評価を受けているそう。描かれている模様もスタイリッシュで、非常に上品な印象の作風です。
さらに、芸術性を高めた現代美濃焼も多く展示されています。現代アートの文脈に乗るアヴァンギャルドな作品はとっても刺激的。美濃焼のさらなる可能性を感じさせてくれます。
アクセスと営業情報
美濃焼ミュージアムがあるのは、岐阜県多治見市。岐阜県の南部に位置しており、名古屋駅からは車で1時間弱でアクセスできます。
休館日:月曜、年末年始
料金:320円
公式サイト:http://www.tajimi-bunka.or.jp/minoyaki_museum/
近くには岐阜県現代陶芸美術館のあるセラミックパークMINOや、多治見モザイクタイルミュージアムがあります。セットでの訪問がおすすめです!
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