巨大要塞のような近代化産業遺産『神子畑選鉱場』(朝来市)

兵庫県

かつて鉱山から採掘された鉱石を分別していた施設。道路に面しており、整備も行われているため気軽に見学することができます。間近で見上げる巨大コンクリート建造物はかなりの迫力!これ見てテンション上がらない人はいるのでしょうか?

訪問日:2021/9/23(木)

不夜城と呼ばれた選鉱場

兵庫県朝来(あさご)市の国道429号線沿いに見えてくる、まるで要塞のような建造物。こちらは神子畑(みこばた)選鉱場跡

「選鉱場」というのは、鉱山から採掘された鉱石を必要・不要に分別するための施設。養父市にある明延鉱山で採掘された錫などの選鉱場としてこの神子畑選鉱場が作られました。

昭和62年(1987年)に明延鉱山が閉山するまで、68年間稼働し続けました。全盛期は夜間も止まらず稼働を続け、その明かりが灯る姿から「不夜城」とも呼ばれていたそう。

閉鎖後、一部の施設は解体が行われましたが、基礎構造物は残されたままに。2006年に整備が行われ、「近代化産業遺産群」、そして「日本遺産」の構成資産にも含まれているようです。

東洋一の巨大選鉱場

というわけで、残された基礎コンクリートなどの遺構は保存・公開されています。案内パネルも豊富で、その凄さがとってもわかりやすく記載されています。

神子畑選鉱場は非常に巨大な選鉱場で、幅110m、高さ75mにも及びます。当時は「東洋一」とも賞されるほどの規模であったそう。22層に及ぶ建築は、山の斜面を上手く利用しひな壇上に広がっています。

斜めに伸びるレールはインクラインの軌道。各フロアの物や人の行き来を行っていたケーブルカーで、頂上には操作室の姿も見ることができます。ちょうど中心あたりで線路が複線になっていますが、これはすれ違いのため。

円形のシックナー

円形の巨大な建造物はシックナー。選鉱場を経過してきた鉱物の混じった液体は、ここへ流し込まれます。回転させることで遠心力を発生させ、液体と固体を分離させていました。

中に入ることはできませんが、かなり近くで内部を見ることができます。様々なスイッチが並ぶパネルやエンジンのような機械。ボタンを押せば今にも動き出しそうな雰囲気です。

メインと思われる大きな方は直径30m。その隣には少し小型の16mのものもあります。柱が立ち並ぶ様子は、なんだか神殿のようで荘厳な雰囲気です。

不似合いな洋風建築ムーセ旧居

周辺は史跡公園として整備されており、関連施設なども見学することができます。

こちらは選鉱場の隣にある事務所。鉱山の事務所というと、もっと簡素な建物をイメージしますが、なんだか洋風でおしゃれな雰囲気。

実はこの事務所は、明治時代に鉱山の指導にあたっていたフランス人技師ムーセが暮らしていた住居。その名を冠してムーセ旧居とも呼ばれています。

もともとは生野にあったものを、ムーセが日本を離れた後にこちらに移築。その後、事務所や診療所として活用されていたそうです。

内部見学も可能ですが、訪問時は休館していました。現在は鉱山にまつわる資料や写真なども展示されているようです。

カラフルな1円電車

こちらのカラフルなトロッコは、明延鉱山と神子畑選鉱場の間で従業員やその家族を載せていた客車。昭和4年の開通時は鉱石輸送のための電車だったのですが、昭和20年に客車が連結され、人も乗れるように。乗車料金は1円だったため、「1円電車」の愛称で地域住民には親しまれていました。

内部に入ることもできるのですが、かなり狭いです!対面で座ったら確実にヒザがぶつかってしまいます。

最初の乗車料金は50銭でしたが、昭和27年に1円に改訂。その後、昭和62年の閉山までその価格で運行されていたそう。昭和といえば、貨幣価値が著しく変化した時代。1円のままだと凄いことになっているのでは・・・?

昔の貨幣価値を現代に換算するのはとっても難しいのですが、昭和20年の1円はおおよそ100~300円くらいでしょうか。これくらいならば運賃としては妥当な感じがします。しかし、昭和末期ともなると1円の価値は現代とほとんど変わりません。もはや運賃というよりは乗車人数を数えるため、くらいの感覚であったそうです。

アクセスと営業情報

最寄り駅はJR播但線の新井駅ですが、10kmほど離れているため徒歩でのアクセスは困難。タクシーを利用すれば15分ほどでアクセスできるようです。

車の場合は播但連絡道の朝来ICから約15分。駐車場も広々としており、トイレや自販機もあります。

開館時間 見学自由
料金 無料
公式サイト http://mikobata.com/

早朝でも問題なく見学できるので、竹田城跡の雲海を見た後に立ち寄るのもおすすめです!

また、選鉱場とシックナーの遺跡に興味がある方は、こちらでも見ることができます!

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コメント

  1. 匿名 より:

    15年くらい前には、まだコンクリートの上に建屋も残っていて、存在を知らずに通ったら、異様な、ラピュタ感満載の場所でした。

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