高野山の代表的な寺院の1つである金剛峯寺。広大な岩庭「蟠龍庭」や襖絵を鑑賞したり、歴史を感じる建築を眺めたりと、まるで美術館のような楽しみ方ができるお寺です。
総本山金剛峯寺
数多くの寺院が建ち並ぶ高野山において、代表的なものがこちらの金剛峯寺(こんごうぶじ)。
高野山には山内全域が境内という意味の「一山境内地」という言葉があり、本来は高野山全域を指して高野山金剛峯寺と呼ばれていました。しかし、明治時代に行われた改革の影響でこの1つの寺院の名称となりました。
とはいえ、高野山全体を指して高野山金剛峯寺という用法も慣習的に残っております。少々ややこしいのですが、奥之院や壇上伽藍など全体を指す際は「高野山」「総本山金剛峯寺」と呼び分けたりすることも多いようです。
※なお、この金剛峯寺が本堂かと思いきや、ここは高野山真言宗の管長(主権者)が住む場所。本堂にあたるのは壇上伽藍の金堂とのことです。
重厚な主殿の内部
正門をくぐると、檜皮葺きの主殿が見えてきます。派手な塗装などはありませんが、横幅60mにも及ぶ大きさの建築は迫力があります。
受付で拝観料を支払って内部へ。金剛峯寺は屋内観覧型なので、靴を脱いでめぐるタイプの寺院。堂内では、狩野元信による群鶴や松や、狩野守信によるなど、狩野派を中心とした襖絵が多く展示されています。
また、廊下伝いに繋がる新別殿の大広間では僧侶による金剛峯寺のお話の映像が流れています。椅子とテーブルも置かれているので、休憩所のような雰囲気です。
龍が泳ぐ石庭
金剛峯寺の代表的な見どころがこちらの蟠龍庭(ばんりゅうてい)。水を使用せずき造られた枯山水庭園で、京都白川の砂が波紋のように広がります。面積は2,340平方メートルと、石庭では国内最大級とのことです。
並べられた岩は、弘法大師誕生の地である四国の花崗岩。この岩は「雲海の中を泳ぐ龍」を表現しているそう。
言われてみると、まるで蛇行するように置かれた岩は龍のように見えてきます。。また、高さが低い岩と高い岩を交互に並べた様子は、上下に波打つ龍の背にも見えてきました。飛び石のように離れている部分は、さしずめ脚にあたるのではないでしょうか。日本庭園を鑑賞する際は、とにかく想像力が大事です・・・!
千住博の襖絵
多くの襖絵の中で、ほぼ唯一撮影可能だったのが日本画家として知られる千住博の作品。高野山開創1200年記念に奉納されたもので、茶の間と囲炉裏の間に常設展示されています。
険しい岩肌とそこに生える植物が描かれた「断崖図」。総延長17メートルという大作で「揉み込んだ和紙を貼り付け、そこに岩絵具を塗り、水のスプレーで流す」という技法によって描かれています。
千住博の代名詞とも呼べる瀧がモチーフの「瀧図」。こちらは総延長25メートルにも及びます。岩絵具で均一なブルーに染め上げた後、そこに水とともに胡粉を流して白い瀧を描いたそう。まるで写真のような水の流れはこのように液体が実際に流れることで作り上げられているのですね。
高野山の台所
堂内には、大勢の僧侶の食事をつくる台所も用意されています。こちらの巨大なお釜は二石釜。1つあたり98kgものお米を炊くことでができ、3つで二石(約2,000人分)の御飯を用意することができます。
レンガで組まれた竈(かまど)。ところどころに傷や煤を見ることができ、使用感たっぷり。現在も重要行事の際に使用されているそうです。
天井から吊るされている台は食物保管庫。吊るして浮かせることで風通しを良くしております。上部に張り巡らせている白いものはネズミの侵入を防ぐための和紙で、「ネズミ落とし」という名が付いています。
謎の天水桶
金剛峯寺の外に出たら、屋根の上に注目!桶のようなものが乗っているのをご覧いただけますでしょうか。
こちらは天水桶(てんすいおけ)。いったい何のために屋根に桶があるの?風水的な意味合い、もしくは知恩院の大杓子や法隆寺五重塔の鎌のように七不思議だったりするのでしょうか。
どうやら、この桶は雨水を貯めるための貯水設備とのこと。生活用水を蓄えていたのかと思いきや、この桶が活躍するのは火災のとき。火に弱い檜皮葺の屋根に水を撒いて湿らせることで、火が燃え広がるのを防いでいたそうです。
①金剛峯寺、②壇上伽藍、③奥之院のアクセス情報などは以下の記事にまとめました。
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