高野山② 立ち並ぶ多宝塔と高野四郎の謎『壇上伽藍』(高野町)

和歌山県

高野山のシンボル根本大塔や、総本堂である金堂をはじめとした諸堂が立ち並ぶ壇上伽藍。広々とした境内を歩きながら、様々な建築めぐりが楽しめます。ところで「高野四郎」という言葉をご存じでしょうか?

2021/9/20(月)

壇上伽藍とは

高野山の見どころとして人気の「壇上伽藍(だんじょうがらん)」。ここは弘法大師・空海が高野山を開山した際、最初に造営したエリア。

密教思想に基づく曼荼羅(まんだら)の世界を具現化しており、高野山の総本堂にあたる金堂や、根本大塔をはじめとした多くの建築が立ち並んでいます。

基本は屋外を歩いて諸堂を見学するタイプ。閉門することは無いため無料で24時間参拝することができます。ただし、金堂と根本大塔の内部拝観のみ拝観時間(8:30~17:00)が定められています。

総本堂の金堂

中門をくぐると現れるのが金堂。高野山の重要行事のほとんどが執り行われる総本堂で、昭和9年に再建されたものになります。

内部も見学することができ、拝観料は500円。チケット制ではなく、入口の賽銭箱に納めます。お釣りが必要な場合は御供所にて支払いとなるので、硬貨を用意しておくとスムーズ。

堂内では、不動明王像や、平清盛の血を混ぜて描いたといわれる血曼荼羅などが安置されています。御本尊の阿閦如来(薬師如来)は秘仏のため拝観不可。

巨大な根本大塔

高さ48.5mと高野山の建築物で最大を誇ります。よく高野山の写真にも登場するシンボルとも呼べる建築です。

日本初の多宝塔として887年に造られましたが、長い歴史の中で何度も焼失。現在の塔は昭和12年に再建されたもの。金堂と同じく内部拝観が可能となっており、拝観料は同じく500円。こちらも無人なので、お釣りが必要な方は御供所にて支払いを。

内部には本尊の胎蔵大日如来を中心とした圧巻の立体曼荼羅が広がります。柱に描かれた堂本印象による十六大菩薩は、まるで宙に浮かんでいるかのようでした。

立ち並ぶ建築

目を引くのが巨大な中門。二層になっている楼門で、4体の四天王像が配置されています。江戸時代に3回も焼失しており、現在の門は平成27年に再建されたもの。

その名が示す通り六角形の六角経蔵。台座部分に取手が設けられており、ぐるっとまわすことで一切経という経典を一通り唱えたのと同じ功徳があるそう。実際にやってみたのですが、動き始めはとても重くかなりの力が必要です。一度動き始めると幾分かは楽になりますが、なかなか体力を使いました。

木立に包まれた姿の西塔。欅づくりの外観は、威厳を放ちます。仁和3年(887年)に建立され、その後何度も消失。現在のものは天保5年(1834年)に建てられたものです。方形の屋根の上に円筒状の塔身が乗る多宝塔形式で、根本大塔と対をなす立派な建築です。中門をくぐって左奥で隠れるように建っているため、壇上伽藍に来ても気が付かない人も多いのでは。

こちらの塔は東塔。白河法皇によって大治2年(1127年)に建立されましたが、その後焼失。昭和58年(1983年)に再建されたものです。根本大塔や西塔に比べると小型ですが、塔身は細めでスマートな印象です。

2本ある三鈷の松

朱色の垣で囲まれた松の木。かつて弘法大師が日本に密教を広めるのにふさわしい場所を見つけるため、明州の港から法具である三鈷杵(さんこしょ)を投げます。その三鈷杵が引っかかっていたとされるのがこちらの三鈷の松

よく見ると、松の木は2本生えています。実は片方は三鈷の松ではないアカマツ。松は単体では育ちにくいという性質があるため、あえて別の木も一緒に植えているそうです。

この三鈷の松は、三鈷杵と同じく葉が3つにわかれた「三葉の松」だそう。現地で探してみたのですが、三葉の落ち葉は見つからず伝説のお話かなと思ったのですが、どうやらアカマツの方で探していたから見つからなかったようです。見学される際は、ご注意ください!

高野四郎とは

「高野四郎」という言葉をご存じでしょうか?何かおとぎ話の主人公のような、もしくは仙台四郎(※福の神と呼ばれた人物)のように有名な一般人にも聴こえる名前です。

そんな高野四郎の正体がこちら。

高野四郎というのは「大塔の鐘」を指す言葉。この鐘は日本で4番目に大きいことからこのような名前で呼ばれています。現在の銅鐘は天文16年に再興したもので、今でも4:00・13:00・18:00・21:00・23:00の1日5回、合計108回鳴らされています。

4番目ときくと、気になるのはこれより上の1~3番目。調べてみたところ、 東大寺・知恩院・方広寺が鐘の大きさではBEST 3のようです。

このうち東大寺には「奈良太郎」という呼び名があるようですが、他の2つには次郎、三郎という呼び名は見当たりません。日本三大暴れ川の「坂東太郎(利根川)・筑紫次郎(筑後川)・四国三郎(吉野川)」のようにすっきりするかと思いきや、少しだけもやっとしてしまいました。

調べていると、東大寺・金剛峯寺・世尊寺跡の3つを指して「奈良太郎、高野次郎、吉野三郎」という言葉もあるようです。

さらに東大寺・金峯山寺と並べた「海に太郎、奈良次郎、吉野三郎、高野四郎」という言葉が出てきました。

突如あらわれる「海に太郎」。いったいどこのお寺だろうと思ったのですが、どうやら一番大きな鐘は海に沈んでいるということらしい。存在していないものをカウントに入れるのは予想外過ぎます・・・!

夜間ライトアップ

日が沈み辺りが真っ暗になると、壇上伽藍の一部の堂宇はライトアップされます。

闇夜に浮かび上がる中門。昼の華やかな印象から一転して、神秘性を帯びた姿に。安置された四天王像は、今にも動き出しそうです。

大きな根本大塔もライトに照らされております。朱色と白色のカラーリングが真っ暗な空に映えます。

吊るされた燈籠もぼんやりと輝く。連なる様子を眺めていると、なんだか違う世界に導かれそうです。

参拝客もいなくなった静かな境内に伽藍がそびえる様子は非常に幻想的。日帰りだとなかなか遅くまで滞在することは難しいですが、山内に多く存在する宿坊に泊まる際は、夜のお散歩がてら、見学してみてはいかがでしょうか。


①金剛峯寺、②壇上伽藍、③奥之院のアクセス情報などは以下の記事にまとめました。合わせてご覧ください!

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コメント

  1. […] 高野山 訪問前に知っておきたいコト 駐車場・バス停・所要時間など(高野町)日本を代表する宗教都市であり、人気の観光スポットでもある高野山。いざ高野山へ行くにあたり、最初に知っておきたい簡単な歴史、そして駐車場やバス停などのアクセス情報をさらりとまとめてみました。chihirog.com2021.11.08 高野山① 絢爛たる襖絵と龍が泳ぐ岩庭『金剛峯寺』(高野町)高野山の代表的な寺院の1つである金剛峯寺。広大な岩庭「蟠龍庭」や襖絵を鑑賞したり、歴史を感じる建築を眺めたりと、まるで美術館のような楽しみ方ができるお寺です。chihirog.com2021.11.09 高野山② 立ち並ぶ多宝塔と高野四郎の謎『壇上伽藍』(高野町)高野山の… […]

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