“ムービングピクチャー”を体感せよ!『軽井沢千住博美術館』(軽井沢町)

長野県

世界的に活躍する画家・千住博(せんじゅ ひろし)の作品を展示する美術館。代表作『ウォーターフォール』をはじめ様々な作品が展示されており、中には静止しているはずの絵画が動き出すという不思議な体験も。豊かな植物に囲まれ、自然光が降り注ぐ空間は、建物自体も見ごたえがあります。

訪問日:2018/9/22(土) ※掲載内容および写真は訪問時のものです

軽井沢を代表する美術館

軽井沢現代美術館、軽井沢ニューアートミュージアム、セゾン現代美術館など多数の美術館がひしめきあう軽井沢エリア。

そんな中でもひときわ個性的なのが、今回ご紹介する軽井沢千住博美術館。千住博(せんじゅ ひろし)という画家の作品を多数収蔵・展示しています。

美術館のまわりは手入れされた庭園が広がっており、森の中のカフェみたいな雰囲気。

※館内は写真撮影禁止でしたので、購入したポストカードをイメージとして載せてみました。

自然光の美術館

木々に包まれた入口を進むと、そこは別世界!!

真っ白な館内には日の光が降り注いでおり、中庭の緑とのコントラストがとにかくキレイ。閉鎖的なイメージの美術館とは程遠く、開放的な気分になれます。

床も平ではなく、なだらかな起伏があります。これは、軽井沢の自然な地形をそのまま生かしているのだそう。

この雰囲気、瀬戸内海の豊島にある豊島美術館にそっくり!気になったので調べてみたところ、この美術館を造った建築家は西沢立衛(にしざわりゅうえ)。「豊島美術館」や「十和田市現代美術館」などを手掛けています。

さらに妹島和世とのユニット「SANAA」では、「金沢21世紀美術館」や「熊野古道なかへち美術館」などの建築も担当しています。

『森の中を歩いていたらいつの間にかそこは美術館だった、というふうになるのが理想』・・・そんなコンセプトで作られた美術館、人工照明はほとんど無く、天然の光が照明替わり。晴れの日は爽やかに、雨の日は幻想的な姿を見せてくれそうです。

千住博って何もの?

千住博は、1958年に東京杉並区に生まれます。幼少期より絵を描いており、高校時代に見かけたグラフィックデザインに衝撃を受けて東京藝術大学へ進学。次第に才覚を表していきます。

ハワイのキラウエア火山を題材とした「フラットウォーター」はニューヨークで高い評価を受け、さらにヴェネツィアビエンナーレに出品した『滝(THE FALL)』では、絵画部門で東洋人として初めて名誉賞を受賞。世界的に知られていくこととなります。

その後も直島の「家プロジェクト(空の庭)」や、羽田空港の「ウォーターシュライン」など、各地に作品を提供。近年では、2018年に高野山金剛峯寺の襖絵を描き上げ話題となりました!

高野山① 絢爛たる襖絵と龍が泳ぐ岩庭『金剛峯寺』(高野町)
高野山の代表的な寺院の1つである金剛峯寺。広大な岩庭「蟠龍庭」や襖絵を鑑賞したり、歴史を感じる建築を眺めたりと、まるで美術館のような楽しみ方ができるお寺です。

なお、かつて名前の「博」の漢字の右上の点を取っていたそう。もともとは自分の実力を謙遜していたそうですが、京都芸術大学の学長に推挙された際に「点が足りない先生では生徒が困る」と考え、通常の漢字に戻したそうです。

代表作『ウォーターフォール』

千住博の代表作といわれるのがこちらの『ウォーターフォール』。ただただ滝を描いた作品に見えますが、その実は絵の具を垂らして作り上げているため、動きを止めた滝そのもの。

館内の『Dayfall / Nightfall』は、照明を効果的に活用した作品。蛍光灯と夜ブラックライトが1分おきに切り替わり、繰り返される昼と夜を感じることができます。

そして必見なのが『The Fall room』。毎時00/20/40分に上映される「描かれた絵画を動かす」というコンセプトで作られた作品です。

ストリングスのゆるやかな調べとともに、作品はスタート。最初は時が止まった滝が徐々に動き出します。水墨画のようにモノトーンだった色彩も、少しずつ青い色味を帯びていく。そこからグラデーションしながら黄色や赤へと姿を変え、やがてまたもとの動かないモノトーンへ。とてもシンプルな動きではありますが、そのおかげでいろいろ考える余白があります。もうずっと眺めていられそうでした。

私のコトバではきっとこの魅力はさっぱり伝わっていないと思います。気になる方は、ぜひ現地へ足を運んでみてください!

引き込まれる作品群

他にも多数の作品が展示されております。ということで、最後は私が気になった作品をあげていきますね。

『楽園について』
シュロのような葉と、向こうに見える青い海。植物たちは黒く描かれています。よく見ると犬が一匹隠れているのですが、見つかりますでしょうか?

『地の果て#16』
くしゃっとした白い大地と宇宙のような暗闇。そこに唯一有機的な存在として描かれているのは松のような植物。松は他の植物との競争には弱いが、環境には強いといいます。地の果てはこんな世界なのかなと思わせる作品です。

他にも、コールタールのような街並みと、張り巡らされた路線がノスタルジックな『月映』や、突然巨大建築物が現れるかのような『往く雲に』など、様々な作品を見ることができます。

「滝」以外をモチーフにしたものもたくさんあるため、「千住博=滝」の印象を持たれている方は、少し驚くかもしれません!

アクセスと営業情報

開館時間 9:30~17:00
休館日 火曜、冬期(12/26~2月末)
料金 1,500円
公式サイト https://www.senju-museum.jp/

※掲載の情報は2022年9月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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