池に映る観音堂で知られる山科の古刹。静謐な空気の流れる境内は、まるで自然公園のような豊かな草木が広がります。高くそびえる千年杉の巨木は圧巻で、周辺では様々な野鳥の姿も見ることができます。
静かで落ち着ける寺院
京都市山科区にある勧修寺(かじゅうじ)は、真言宗山階派の大本山。創建は900年と伝わっており、醍醐天皇が生母・藤原胤子(たねこ)を弔うために建立したそうです。
醍醐寺をはじめとした周辺の寺院同様に応仁の乱の兵火で焼失してしまいますが、江戸時代に徳川家と皇室によって復興を果たします。
山門までの参道は、白壁の築地塀。春はサクラがとってもキレイです。花の季節となる三月下旬、醍醐寺や隨心院は多くの人でにぎわっていましたが、ここは非常に落ち着いた雰囲気。
御所から移築された宸殿
受付から進み、最初に見えてくるのが宸殿(しんでん)。装飾などはほとんどありませんが、瓦屋根が重厚な建築です。
この建物は1697年(元禄10年)に明正天皇の旧殿(御対面所)を下賜されたもの。この宸殿以外にも、本堂・書院ともに京都御所からの移築施設であるそうです。
建物前に置かれた黒板に記されているのは「この建物は明治五年二月五日に開校された市立勧修小学校様の校舎です。」の言葉。あれ、天皇の旧殿ではないのでしょうか?
調べて見ると、1872年(明治5年)に勧修小学校が開校した際、約9年間に渡りここが校舎として利用されていたそうです!まさに寺子屋ですね。
自然豊かな氷室池
境内には大きな氷室池が広がっています。草木が自然のまま生育しており、お寺の庭園の池というよりは、広い自然公園のような雰囲気。
この池は一周できる散策路があるのですが、途中には「この先、行かれるのはご自由ですが、大いに危険」というなんとも不安になる注意書きが。
どうやら禁足地的な意味ではなく、単純にそこまで手入れされていないからというような理由だそうです。
進んでいくと見えてくるのは枯滝。おそらく翠微滝(すいびのたき)と呼ばれる滝で、石仏が立ち並ぶ姿が神秘的です。
このまま池を一周してみたところ、危険な場所などは特にありませんでした。舗装こそされていませんが、自然の中の気持ち良い道。ときおり大きな鳴き声が響き渡っていたので、大型の鳥が棲息しているかもしれません・・・!
シンボルの観音堂
氷室池のほとりに立つのは観音堂。1931年(昭和6年)に再建された楼閣風の建築物で、大斐閣(だいひかく)とも呼ばれています。
建物内部には、本尊の観音像が安置されています。通常非公開ですが、桜の季節には内部が特別公開されます。
この観音堂は、2018年春の「そうだ 京都、行こう。」のポスターにも採用されました。桜に包まれる姿はもちろん、初夏には氷室池に咲くスイレンやハスの花とのコラボレーションも楽しめます。
不思議な形の勧修寺型灯籠
書院の前庭に置かれた灯籠、よく見ると四角形の傘が妙に大きくアンバランスな姿。非常に独特なデザインをしています。
こちらは水戸光圀が寄進したもの。雪見灯篭をアレンジして創作された「勧修寺型灯籠」と呼ばれています。
「必ず見て通ろう(灯籠)」というダジャレも添えられており、なんだかユーモラスな雰囲気でした。
高くそびえる千年杉
書院の前庭を歩いていると目に入ったのは「千年杉(前方百メートル)」という案内板。いったいどこにそんな古木があるのでしょうか?
あ!もしかして正面に一本だけ飛び出している木のことでは・・・!!!
森を突き破るかのようにそびえる巨大樹。これがきっと千年杉に違いありません!噂では、京都の庭園で最大の巨木とも言われているそう。勧修寺は900年に建立されたとされる寺院なので、きっとそのころから根を張って成長してきたのでしょうね。
千年杉には鳥が一羽とまっています。遠くてよく見えませが、ウのようにも見えます・・・・と考えていたら、手前の樹上には大きなアオサギが巣をつくっていました!!
先ほど氷室池をまわったときに聴こえてきた声は、きっとこのアオサギですね。
静かな境内は、人よりも野鳥が多く集まる場所でもありました。
アクセスと拝観情報
地下鉄東西線の小野駅から徒歩5分ほど。「随心院」からは徒歩10分ほどでアクセスできます。
拝観時間 | 9:00~16:00 |
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料金 | 400円 |
公式サイト | なし |
※掲載の情報は2023年3月時点のものです。
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