色とりどりのくくり猿がインパクト抜群な小さなお寺。SNSで人気のスポットですが、庚申信仰発祥の地でも有ります。体内に「三尸」という3匹の虫が住んでいるという不思議な考えにもふれてみました。
料金:拝観無料
東山にある八坂庚申堂
八坂庚申堂の最寄り駅は清水五条駅か祇園四条駅。どちらからも徒歩15分ほど。京都市バスのバス停《東山安井》や《清水道》からならば徒歩6分ほどでアクセスできます。
清水寺や高台寺など人気のスポットが集まる東山エリア。周辺には食事処やカフェ、お土産屋さんがたくさん。フォトスポットとしても人気な八坂五重塔のすぐ目の前なので、この塔を目指して進めば迷うことはないかと思います。
八坂庚申堂の正式名称は大黒山 金剛寺。入口の門は少し控えめですが、人の出入りがとても多いので目立ちます。
色とりどりの「くくり猿」
境内に入るとすぐに目に入るのはカラフルな光景。小さなお堂を覆い隠すように、色とりどりの布製の何かがたくさんぶら下げられています。
これは「くくり猿」。「くくり」という名が示す通り、猿が手足を縛られて動けない様子を表しています。自由気ままに動き回る猿を人間の欲望に例えて、それを縛ることで心が欲につられて動かないようにとの意味が込められているのです。
寺務所にて好きな色を選び、願い事を書いて吊るします。平日は100個、週末は300個の限定販売となるので、ピークシーズンは早めの訪問が良さそうです。(1つ500円)
叶えるには我慢が重要
このくくり猿は、願いを託した後に自分の欲を何か1つ我慢することで、その願い事が叶うといわれています。そんな我慢に関連したアイテムを見つけました。
その名も「我慢じゃ!シール」。(10枚100円)
我慢しなくてはならないものに直接貼って決意表明するために使用するそう。
台紙の裏に例として書かれていたのは、「おやつ」「テレビ」「ゲーム」など、おなじみの日常誘惑シリーズ。私も何かに貼ってみたいのですが、今のところ我慢するものが見つからず。来るべき日のためにとっておこう。
猿に囲まれたなで仏
くくり猿に囲まれたお堂の中に鎮座しているのは、なで仏ことおびんずる様。お釈迦様の弟子である十六羅漢の一人です。
とても神通力に優れていましたが、その力をみだりに使用したためお釈迦様のお叱りを受け、人々を救うためにその力を使うようにと言いつけられます。それ以来、悩める人を救うため、日夜訪れる人の願いに耳を傾けているのです。
腰が痛い人は腰を、目が悪い人は目を、といった具合に自分自身の体の悪い部分を撫でてお参りすると、ご利益があるといわれています。
奈良の東大寺や長野の善光寺など日本各地のお寺で見ることができるおびんずる様ですが、ここまで華やかなシチュエーションに置かれているのは、他にないのではないでしょうか。
庚申信仰発祥の地
さて、庚申堂の名前にも関連する庚申信仰をご存知でしょうか。
古くは平安時代から続く信仰で、道教をベースに神道や仏教など様々な要素を含んでいます。江戸時代には民間信仰として普及しました。
そんな庚申信仰の発祥の地といわれている八坂庚申堂。四天王寺庚申堂(大阪)、入谷庚申堂(東京)と合わせて日本三庚申と呼ばれています。
※入谷庚申堂はお堂が残っておらす、庚申塚のみが建っているそう。
体内に潜む3匹の虫
庚申信仰では、人間の体内に上尸(じょうし)・中尸(ちゅうし)・下尸(げし)の三尸(さんし)という3匹の虫が頭・腹・足にそれぞれ住んでおり、病気を起こす原因とされています。虫といっても昆虫とは違い、上尸は道士(道教のお坊さん)、中尸は獣、下尸は牛の頭から人間の足が一本生えた生き物という、非常に個性的なトリオなのです。
そんな三尸は、1年に6回訪れる「庚申の日」の夜に眠ると、宿主の体内から抜け出します。
外へ出た三尸は、天帝(えんま大王)の元へ行き、宿主の罪を告げて寿命を縮めてしまいます。
眠らなければ三尸は外に出ることができないため、これを防ぐために庚申の日は眠らないで過ごすそう。その風習を「庚申待ち」といいます。
江戸時代には庚申待ちを18回繰り返すと、記念に石碑を建てるという風習が生まれ、各地に庚申塔や庚申塚が建てられました。
明治時代に入ると、政府は庚申信仰は迷信と定め各地の庚申塚を撤去します。そのため都市部などにはほとんど残っていませんが、地方には多くの庚申塚が現在も残されています。山道など見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
大正時代以降は減速した庚申信仰ですが、現代でもその信仰は続いています。この八坂庚申堂でも、庚申の日にはコンニャク焚きを行い、くくり猿の形を模したこんにゃくを配るそう。
ちなみに2020年の庚申の日は1/18(土)、3/18(水)、5/17(日)、7/16(木)、9/14(月)、11/13(金)。庚申の日は60日おきにやってくるため、1年に6日間あります。ということは、庚申塚を建てる18回に達するには3年続ければ良いのですね・・・!
猿との関係
この八坂庚申堂では、そんな三尸の虫を屈服させる力を持つ青面金剛を祀っています。青面金剛の従者とされるのが猿。また、庚申の「申」の字が干支のサルを意味することからも、庚申信仰と猿は非常に関係が深いのです。
さらに猿を神の使いとして祭る山王信仰や猿田彦神とも繋がります。本堂には「見ざる」「言わざる」「聞かざる」の三猿がそろい踏み。
他にも数ヶ所に猿が隠れており、猿探ししてみるのも楽しいのではないでしょうか。
このあとは歩いて八坂神社へと向かいます。
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