伝統のカニ漁文化とエチゼンガニの実態『越前がにミュージアム』(越前町)

福井県

「エチゼンガニ」で有名な越前町。ジオラマや資料で越前がにやかに漁について学べる体感型のミュージアム。生きているサカナも多く展示されており、水族館としても楽しめるスポットです。

営業時間:9:00〜17:00
休館日:火曜
料金:500円
訪問日:2020/7/27(月)

道の駅併設のミュージアム

越前がにミュージアムは、道の駅越前に併設されています。まわりには越前がにをはじめとした海産物の直売所やレストラン、温浴施設「露天風呂漁火」などが集まります。

エチゼンガニをイメージしているというドーム状の外観。受付で料金を支払い、エレベーターで3階へ。エチゼンガニの暮らす深海に潜るような気持ちで、最上階から降りていく順路となっています。

ブランドガニ「越前がに」とは?

名前は有名な越前がに。しかし、実際どんなカニか詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。

「越前がに」というのはカニの種類の名前ではなく、福井県の漁港で水揚げされるズワイガニのこと。安土桃山時代の公家の日記にも記されているほどの歴史があり、現代でも皇室に献上されるほど由緒正しき特産品なのです。

目印はこのハサミについているタグ。この黄色いタグが越前がにの証です。「外して他のカニに簡単に付け替えられるのでは?」そう思ったのですが、不正できないような構造になっているそう。

館内にはズワイガニ、ベニズワイガニの見分け方が展示されています。見比べてみたのですが、なかなか難易度が高い。加えて、雑種まで存在するため、素人に見分けるのは難しそうです。

山陰地方の松葉ガニ、石川県の加能ガニも全て越前ガニと同じズワイガニのこと。それぞれ色違いのタグを付けています。

深海まで続くジオラマ

圧巻なのは、カニ漁最盛期を迎えていた昭和30〜40年代ごろの港町を再現したジオラマ。にぎやかな音声案内で活気あふれる当時のカニ漁の様子を伝えてくれます。

港の先にはかなり深い海が広がっています。越前海岸は陸地からすぐのところで、エチゼンガニの生息地となる水深300mほどの深さになります。漁場が近いため、新鮮な状態で港に運ぶことができるのです。

このジオラマは3フロア吹き抜けとなっているため、各階で階層別に見ることが可能となっています。2階からはブリやマイワシ、アオリイカなどが泳ぐ浅海を見渡すことができます。

1階の最深部は、太陽の光も届かない海底が広がります。サカナの姿もほとんど無い水深300メートルの世界には、エチゼンガニがたくさん。しかもこのカニたち、動きます!

見上げると先ほど2階で見たサカナたちが。そして遠く上の方に港町の堤防も見えます。まるで、本当に海の底に潜っているような気分になってきました。

エチゼンガニ漁を学ぶ

中世より記録の残る越前がにですが、越前町にて本格的なかに漁が始まったのは明治時代に入ってから。大正時代にはこのような木造の船で漁を行っていました。

他にも、漁で使用される様々な道具が展示されています。手前にある十字の木は「轆轤(ろくろ)」。船についたロープを結び、回すことで船を浜に引き上げる装置です。

エチゼンガニ漁には、資源を守るためにいくつものルールがあります。まず、かに漁期間は11月初旬〜3月下旬の期間と決めていること。そして、オスは「甲羅が9cm以上」のものだけが漁の対象となります。このサイズのエチゼンガニは10歳を超えており、既に繁殖を終えているため個体数を現象させることなくその恵みにあやかることができます。

こちらのプレートを回すと様々なズワイガニが現れます。記された目盛りで甲羅の大きさを計り、捕っても良いカニかどうか当てるクイズになっています。

シアターコーナーでは、現代のかに漁の様子を映像で見ることができます。冬の荒れる日本海で行う底引き網漁の激しさや、活気あふれる競りの様子も映し出されて臨場感たっぷり。

越前沖のアクアリウム

館内には、実際に生きているズワイガニもたくさん。わしゃわしゃと集まる様子は、ちょっと虫みたいです。

こちらの細長いサカナはクロゲンゲ。かに漁の底引き網に一緒にかかる深海魚。もともとは商品価値が無いため「下の下」という意味で「ゲンゲ」と呼ばれていましたが、近年では干物や煮付けなど美味しい食べ方も見つかり「幻魚」という字があてられています。

トンネル水槽もあります。青い照明でファンタジックな海中世界が広がり、カサゴやマハタ、コブダイなど越前の海に暮らすサカナたちが泳いでいます。

隅っこでじっとしているキジハタと、なぜかそこに寄り添うウマヅラハギ。どちらも食用可能で、なかなかの高級魚です。

マツカサウオやホウボウ、テングカスベなどユニークなルックスのサカナもいます。食べる場所がほとんど無さそうなマツカサウオ、身は少ないが甘みが強く美味しいらしいです。

岩に隠れるようにさりげなくタカアシガニの姿も。普通の水族館ではそのサイズ感から人気者になっていることもありますが、ここはエチゼンガニの施設。なんとなく肩身が狭そうに見えますね。


思ったより様々な展示があり、見ごたえ抜群のミュージアム。ただ今の期間は休止中でしたが、カニ漁漁船のシミュレーターや各種体験コーナーもあります。次は、カニ漁が解禁された冬場に来てみたいです!

なお、カニが好きな方には和歌山県すさみ町にあるエビとカニの水族館もおすすめです。

甲殻類の魅力にどっぷり浸る『エビとカニの水族館』(すさみ町)
エビ、カニ、ヤドカリを専門としたちょっぴりマニアックな水族館。色とりどりでバリエーション豊富な甲殻類がそろっているので、あなた好みのエビカニがきっと見つかるはず!

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