1年中咲くスイセンと恋バナが楽しめる『越前岬水仙ランド&呼鳥門』(越前町)

福井県

水仙の産地として知られる越前町。越前水仙ランドでは、年間を通して咲いている水仙の花を見ることができます。すぐ近くには自然が作り上げた芸術・呼鳥門もそびえます。今回は3つの恋の物語を交えてお送りします。

訪問日:2020/7/27(月)

一年中スイセンが咲く「越前岬水仙ランド」

福井県の西側、日本海に面した越前町は、水仙の里として知られています。明治時代後期から日本各地に水仙の出荷を行っており、千葉県や兵庫県と並ぶ一大産地です。

越前岬に造られた越前岬水仙ランドでは、斜面一帯に水仙が植えられており、11~3月頃に訪問すると見渡す限りの花景色を見ることができます。

園内にあるギリシャ神殿風の建築が目を引くガーデンクラブハウス。水仙の花期でなくとも、このクラブハウス内では通年水仙の花を見ることができます。

館内の一角に設置された水仙鑑賞庭園に入ると、ひんやりとした空気。水仙の咲く冬の気候に合わせるため、室温10℃に設定されています。

季節外れに咲く白く可憐な水仙の花。水仙自体はそれほど珍しい花ではありませんが、真夏に見ると非常に印象深いです。

超絶ナルシストなギリシャ神話との関り

クラブハウス内に立つギリシャ彫刻のような像、こちらはナルキソスの像。

水仙の英語名は「ナルキソス」。これには、ギリシャ神話の登場人物である美少年・ナルキソスが関わっております。

人の愛情に見向きもせず他人を傷つけていたナルキソスは、女神ネメシスの怒りにふれ、泉に映る自分の姿に恋するようにされてしまいます。泉から動くことができなくなり、その場で倒れてしまったナルキソス。横たわる彼のもとには美しい花が咲き、その花はナルキソスと名付けられました。

ギリシャ神話って地味にツライ系の呪いが多いですが、このストーリーもまさにジワジワと苦しめられるタイプ。でも、その場から動けなくなるほど自分の姿に見惚れてしまうというのは、ある意味幸せなような気もしますね。

なお、ナルシズムというコトバも、このエピソードが語源となっているそうです。今後ナルシストに出会ったら、「スイセンになっちゃうよ!」と言ってあげようと思います。

マムシがもたらした恋バナ「越前岬灯台」

ガーデンクラブハウスのすぐ隣には、越前岬灯台が佇んでいます。高さ17.25m、海抜およそ133mの灯台は、昭和15年に設置されたもの。敦賀港や三国港へ向かう船の道しるべとして海を照らしています。

この灯台には「岬の主・まむし」が取り持った縁結びのエピソードがあります。

今は無人の灯台ですが、かつて灯台に職員が就いていたときの話。
職員の青年が村まで映画を見に行こうとしたとき、マムシに噛まれてしまいました。病院へ向かうためタクシーを呼ぶも、灯台までは道が整備されていなかったため来ることができず、村人で協力して青年を背負い、タクシーまで運びました。無事、病院へたどりつくことができた青年。ここで献身的に世話をしてくれた看護婦に恋をします。看護婦もまた青年が気になっており、二人は惹かれ合い結婚することに。

この二人の出会いは、マムシが取り持った縁として地元で語り継がれているそう。

「映画館」というコトバから、それほど昔話では無いようです。もしかしたら、この夫婦は今も存命かもしれませんね。
なお、この越前岬灯台は、「恋する灯台」として認定されています。ロマンスの聖地にふさわしい灯台を認定する恋する灯台プロジェクトによって定められていますが、リアル恋愛エピソードを持つこの灯台は、まさにこのプロジェクトにぴったりです。

天然の巨大トンネル「呼鳥門」

越前岬水仙ランドからさらに北上すると、ぽっかりとえぐれた巨大な岩・呼鳥門(こちょうもん)があります。水仙ランドまで来たらすぐそこなので、立ち寄ってみました。

「渡り鳥を呼ぶ門」という意味がこめられているダイナミックのこの景観は、風と波の浸食によってできた海蝕地形。高さは15m、横幅は30mとかなりの大きさです。

なお、平成14年3月までは国道305号線がこの下を通っており、車で通り抜けることができたそう。今ではトンネルが開通して国道は移動しています。

女性をめぐる兄弟の悲話「水仙迺社」

そんな呼鳥門の駐車場には、愛染明王洞があります。

岩のほこらに造られた小さなお社は、愛染明王を祭る水仙迺社(すいせんのやしろ)。愛染明王は愛の神様、「恋岬の愛染さま、縁結びの愛染さま」と崇められています。

ここには、越前水仙にまつわる伝説が記されています。

平安時代の末期、この地には一朗太次郎太という仲の良い兄弟がいました。源氏と平氏にによる源平合戦が勃発すると、一朗太は父とともに戦いへ参加。木曽義仲の軍勢に加わるも、帰らぬ人となっていまいます。

残された次郎太は、海辺で一人の娘を助けます。娘に「仙」と名付け、手厚く保護することに。仙と次郎太は、仲良く暮らしていました。

そんなある日、命を落としたはずの一朗太が帰ってきます。次郎太は喜び、再び仲良く暮らすことに。

ここで、問題が生まれます。二人とも仙に心惹かれてしまうのです。

仙をめぐり争うようになった兄弟は、ついに刀を持って切り合いをはじめ、二人とも海に落ちて消えてしまいます。

それを知った仙は悲しみ、兄弟を不仲にしてしまった自分を責めて海に身を投げてしまいます。

翌年の春、白い6枚の花びらがついた花が海岸に流れ着きます。村人たちはその花に仙が宿っていると考え、その花に「水仙」と名付けました。


軽い気持ちのドライブでしたが、様々なエピソードを知ることができて大満足です。
ギリシャ神話と女性をめぐって争う兄弟の悲しいストーリーは全く違う話ですが、気になるのはどちらも登場人物の最期に水仙という花が現れること。昔の人は、スラリと伸びるスイセンの花に、人の魂が宿っているように感じたのでしょうね。

次回は、スイセンではないもう1つの越前町名物について!

「エチゼン」と聞いて何を思い浮かべますか?

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