総務省統計局内にある平日限定の博物館。「統計」という、非常にイメージしづらいテーマではありますが、内容はわかりやすくまとまっているため知識が無くても大丈夫。想像以上に楽しめるミュージアムでした。
統計の博物館とは
総務省統計局には博物館が併設されています。その名も統計博物館。「日本の公的統計150年の歴史をパネルや貴重な史料等で紹介します。」とのことですが、どんな展示があるのか、さっぱりイメージがわきません!!
なんとなくですが、真っ白な部屋に棒グラフや折れ線グラフがいっぱい貼られているようなイメージ。
グラフ地獄で楽しめるか不安ですが、今回は同じく総務省内にある「産業遺産センター」に訪問した際に、せっかくなので立ち寄ってみることにしました。こちらの高い塀に囲まれた総務省に侵入します!
なお、他の省庁ミュージアムと同様にここもまた平日限定の開館となっております。
総務省内にて受付
地図を見る限り「産業遺産センター」の隣のようですが、いざ敷地内に入ると特に案内が見当たりません。
こちらの「別館」と書かれた建物に守衛さんがいたので尋ねてみると、ここが受付であるそう。
名前や住所を記入すると、総務省の一時通行証をいただけます。省庁の許可証なんて、なんか特別な存在になった気分です。
別館を外に抜けて、屋外通路を進むと博物館の建物が見えてきます。
こちらの2階が博物館。見学前にこちらでも観覧票の記入が必要です。氏名、都道府県、職業なんかを記入します。さあ展示室へ入ってみましょう!
統計とはいったい何?
館内は大部屋一つのミュージアム。壁一面にはグラフではなく、パネルがたくさん並んでおり一安心。いずれも読みやすく仕上がっています。
展示テーマは主に以下の5つ。「日本列島なんでもランキング」「統計クイズ」といった、カジュアルに楽しめるデジタルコンテンツも備えています。
②統計年表
③国勢調査の歩み
④古資料にみる統計の歩み
⑤機器にみる統計の歩み
そもそも統計ってなんでしょうか?きっと多くの人の頭に浮かんでくる疑問でしょう。展示室の冒頭にて、その回答があります。
統計とは、 ある集団を時間、地域などの一定の条件下で調べ、この結果を集計、加工して得られた数値ということができます。 これを簡単にいうと、統計とは、 客観的なデータを一定の方法でたくさん集め、数値を用いて社会全体がどのような姿をしているかを明らかにするものです。 「統計は現在をうつす鏡」といわれるゆえんです。
人類が社会を構成した時から存在しており、バビロニア、エジプト、中国といった古代文明にもその記録が残っているそう。
国勢調査の歴史
国の最も重要な統計調査といえば国勢調査。大正9年(1920年)に初の全国的な国勢調査が実施されます。
ここに展示されているのはその時の調査票。氏名、世帯主との続柄、男女の別、出生の年月日、配偶の関係、職業及び職業上の地位、出生地、民籍または国籍の8項目が調査対象でした。
それ以降は、戦時下を除き5年おきに開催されています。ずらりと並ぶのは国勢調査の歴代ポスター。第1回は、国勢調査の内容を示す文章がびっしり。第2回からは文字が減っていき、第3回以降はほぼ「国勢調査」の文字だけに。デザインの変遷から、国民に浸透していった様子をうかがい知ることができます。
近年のものはカラフルで華やか。イラストも多くポップな雰囲気です。
ちなみに最新のポスターはなかなかのインパクト。この記事の最後に登場しますのでお楽しみに。
進化していく集計機
紙の資料や読みものパネルだけではありません。統計とともに発展してきたのがその集計方法。パソコン導入前は、様々なアイディアで集計のための機械が造られてきました。
こちらは亀の子型穿孔機。カードに穿孔(せんこう=穴を開ける)ための道具です。
まるでオルガンみたいな姿の川口式電気集計機。亀の子型穿孔機にて穴を開けたカードは、こちらの機械を使って分類します。
穿孔されたカードを上部に入れ、ハンドル操作によって針を動かし、その接触によってカウントしていくものらしい。文字だけではいまいちイメージがわきにくいですが、びっしり並んだメーターやハンドルはなんとも魅力的。この機械は、明治37年の人口動態統計調査の集計用に作られたものであるそう。
この大きな機械は電子管式分類機。光電管の作用で分類することができ、その速度は1分で800枚とハイスピード。最後の統計機械のひとつとのことです。
統計の偉人
統計界の偉人、いったいどのような人物か想像つきますでしょうか。データに強い人材でしょうか。
見ていくと、統計を重視し統計院を設立した大隈重信、統計の重要性にいち早く気がつき、社会への啓蒙と人材育成に努めた福沢諭吉、内閣に国勢院を設置し、初の全国的な国勢調査を実施した原敬と、歴史上に名を残す偉人がずらり。それぞれの言葉からは、統計の重要性がひしひしと伝わってきます。
初めて目にする名前が杉亨二(すぎ こうじ)。明治維新後の近代化において、人口調査の必要性を解き、明治12年(1879年)には、国勢調査の試験ともいえる「甲斐国現在人別調」を実施。明治前期において唯一の本格的な近代的統計調査であったそう。
さらに統計局の前身である政表課の大主記を務めていたことから、「初代・統計局長」とも呼ばれています。さらに、統計教育の先覚者でもあるそとから「日本近代統計の祖」とも称される、統計を語る上で超重要人物なのです。
眺めていた中で最も印象的だったのが吉田茂。統計委員会の設置や統計法の公布をおこない、統計制度改革の確立に尽力していたそう。
終戦直後の冬は国民総乞食ともいわれるほどの食糧不足に陥り、農林省は450万トンの食糧が足りないと試算しました。吉田茂はマッカーサーに食料の放出を懇願します。その後、吉田と直接対面したマッカーサーは「70万トンしか食糧を渡さなかったが餓死者は出なかった。日本の統計はでたらめだ」と言い放ちます。
吉田茂はそれに対して「戦前にわが国の統計が完備していたならば、あんな無暴な戦争はやらなかったろうし、またやれば戦争に勝っていたかも知れない。」と反論。これに対してマッカーサーは大笑いし、二人は仲が深まったそうです。
個人的には、この吉田茂のセリフが一番統計の重要性を感じる内容でした。
さっと見るだけなら30分程度あれば充分ですが、せっかくなので1時間くらいかけてじっくりと見てきました。帰り際、係のおじさんが「ゆっくり見れましたか」と声かけてくれました。
さてさて、次の国勢調査は2025年。今年です!博物館の入り口には、今年のポスターが貼られていました。
まさかのマツケン!!さきほどの歴代ポスターの並びにマツケンがラインナップすると考えると胸アツですね!
アクセスと営業情報
・都営大江戸線「若松河田」駅より徒歩5分
開館時間 | 9:30~17:00 |
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休館日 | 土日祝日、年末年始 |
料金 | 無料 |
公式サイト | https://www.stat.go.jp/museum/index.html |
※掲載の情報は2025年2月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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