諏訪大社④ せせらぎに包まれた諏訪信仰発祥の地『上社前宮』(茅野市)

長野県

御祭神が最初に居を構えたとされる諏訪信仰発祥の地。木立とせせらぎに包まれた静かな空間は、妙にほっと落ち着ける場所です。そんな前宮ですが、唯一本殿を有していたり、御柱すべてに触れることができたりと、他の宮とは異なる点がいくつもあります。

2021/7/24(土)

坂を登る参道

二社四宮という4つの宮から構成される諏訪大社。そのうちの上社前宮は、他の諏訪大社と異なり、町中から少し外れたところにあります。喧騒も無く観光要素も少ない静かな境内は、神社の持つ神秘性を引き立てます。

本殿までは、民家が並ぶ斜面を登って行きます。キレイに舗装されており、開けた雰囲気の不思議な参道で、とても開放感があります。途中に日陰はほとんど無いため、暑い日は日差しにご注意を。

のどかな風景が広がる道の先には、木々が生い茂る小さな森。ここが上社前宮の本殿

手前に見える建築は拝所。本殿はその奥に鎮座しています。前宮は、諏訪大社の4つの宮の中で唯一本殿を有しています。

せせらぎの社

本殿のすぐ隣には、水眼(すいが)という名の清流が流れています。7月という真夏の訪問でしたが、水は冷たくてとても気持ち良い。

本殿の左半分を囲むように流れます。少し流れをたどってみると、木陰で足をつけて一休みしている人の姿も。中世には、神事を行う際にこの水で身を清めていたとの記録も残っているそう。

さらに参道には、水車を備えた水眼広場もあります。トイレや自販機もあるので、ひと休みにもぴったり。この前宮の境内は常に涼しげな水の音が響いており、まさにせせらぎの社といった雰囲気。とっても清涼感がある神社です。

間近で見る4本の御柱

この前宮が他の諏訪大社の宮と異なっている点があります。それは、4本の御柱全て近くで見ることができるということ。

各宮でも見ることができる4本の御柱ですが、近くで見られるのは拝殿に向かって左右に立つ「一之御柱」と「二之御柱」の2本のみ。残る「三之御柱」と「四之御柱」の2本は近くに立ち入れないため、遠くから遥拝する形となっていました。

しかし、ここ前宮は本殿のまわりは立入禁止となっておらず、4本全て近くで拝むことができるのです。

十間廊と御頭祭

苔むした石段の先にあるのは十間廊。祭り事が行われた場所で、神に捧げる貢物は、全てここで供えられています。

毎年4月15日に執り行われる上社の例大祭「御頭祭(酉の祭)」では、シカの頭部をが75頭も奉納されているそう。そのシカの中には必ず耳が避けたものがあり、諏訪の七不思議の一つとされています。

現在は剥製の首と鹿肉を捧げているそうです。ちなみに御頭祭の御頭は祭祀の当番のこと。ついつい獣の頭を捧げるためと思ってしまいますね。

詳しく知りたい方は、すぐ近くにある神長官守矢史料館へ!御頭祭をイメージした剥製が展示されており、詳しい話も聞くことができます。

諏訪の古代神の血を引く一族『神長官守矢史料館』(茅野市)
諏訪大社の神官のトップ・神長官(じんちょうかん)を務める守矢家。そこに伝わる史料、そして古代から続く信仰に触れることができるミュージアム。どこか原始的でインパクト抜群な3つの茶室に代表される、藤森輝信の建築も見どころです。

本殿の謎

さらりと書き終えようとしたところでやっぱりどうしても気になるのが、「なぜ前宮だけ本殿があるのか」ということ。

通常の神社では必ず本殿がありますが、諏訪大社の他の宮には本殿は無く拝殿・幣殿のみ。その理由は、大昔の山や岩といった自然を崇拝する信仰に基づいているからという説、諏訪明神の血を引く神職のトップ・大祝(おおほうり)こそが現人神で信仰の対象であるからという説など、諸説あります。

では、なぜここ前宮のみが本殿を有しているのか。他の宮に本殿が無い理由の一つが「古来からの自然崇拝」というのならば、最も古いといわれるこの前宮こそ本殿が無いはずでは・・・。

Wikipediaには「前宮は古くは上社摂社であった関係で本殿を有している」との記載が。江戸時代までは「前宮社」として上社境外摂社筆頭でしたが、明治以降に上社の前宮と定められたそう。(もともとはモリヤ神・守矢氏の本拠地であった場所とも言われています)

これが正しければ、「本殿がある理由」については、これでかなりすっきり!摂社ならば社が建っていることはなんら不思議ではない・・・ハズ。

ただし、なぜ明治以降に前宮として格上げ(?)になったのかは謎。ううむ、なぜこんなに諏訪大社にまつわる話はモヤッとしているのでしょうか。

謎が多いのはなぜ?

謎だらけで、調べれば調べるほどもやもやしていく諏訪の信仰。いったいなぜこのような現象がおこるのでしょうか。

①信仰の変遷
自然崇拝、神仏習合、神仏分離など、時代に合わせて信仰の形が変化する中、完全に切り替えずに古い信仰の形式を残していることが情報の不一致を招いているのではないでしょうか。
②上社下社
上社と下社は同じ御祭神を祀る同格の神社という扱いですが、もともとは別の神社でした。実際は大祝を務める家柄、祭事、神体など異なる点が多数存在しています。これらの内容が「諏訪大社」という大きな主語の下で入れ違いになり、より複雑化しているのでは。
③公式情報の少なさ
諏訪大社の公式HPにもあまり詳しい情報が記載されていません。また、現地での案内板の情報が非常に少なく感じます(特に上社)。そのため、伝聞の情報が氾濫しているように感じます。より正確な内容を求めるには、自分で文献を探さなくてはなりません。

他にもいろいろな理由が考えられますが、私が感じたのは大きくこの3点。はっきりしない点は気になりますが、謎が多いというのは考える余地があって非常に面白いです。諏訪大社へ参拝される際は、ぜひいろいろなところに目を向けて謎解きを楽しんでみてはいかがでしょうか。

個人的には「何かを隠している」と考えるとすごくわくわくするのですが・・・。

諏訪大社① 重厚な建築が並ぶ神域『下社秋宮』(下諏訪町)
下諏訪温泉街に建つ下社秋宮は、立派な建築が楽しめる情緒あふれる神社。4本の御柱はもちろん、精巧な彫刻、巨大な注連縄、青銅の狛犬、温泉が湧きだす手水など見どころも豊富。市街地や駅にも近く、二社四宮の中で最も参拝しやすいです。
諏訪大社② 2つの流派の腕比べ『下社春宮』(下諏訪町)
砥川沿いに建つ下社春宮は、小規模ながらも非常に存在感のある神社。歴史ある建築が並ぶ境内は、静かな空気が流れます。近くには御柱祭を体感できる博物館「おんばしら館よいさ」や、ユニークな姿をした「万治の石仏」もあります。
諏訪大社③ 社殿の向きに隠された謎『上社本宮』(諏訪市)
諏訪湖の南部・諏訪市にある上社本宮(ほんみや)は、大きな木々に包まれた重厚な神社。本殿が無いところは他の宮と同じですが、拝殿の向きと御柱の並び順が独自の配置となっています。なぜこの宮だけ他と異なっているのでしょうか?

アクセスと営業情報

JR中央本線の茅野駅が最寄り駅ですが、かなり距離があるため徒歩だと35分ほどかかります。

車の場合は中央自動車道の諏訪ICから約5分。駐車場はざっくりと3つあります。1つ目は国道152号線沿い、信号「前宮前」の交差点。2つ目は鳥居をくぐり、坂を登って社務所の前。3つ目は社務所前の駐車場を通り過ぎてすぐに左折、さらに登った本殿のすぐ前。

数字の順に本殿に近づきますが、歩いてもそれほどの距離ではありません。1つ目か2つ目に停めて散策しながら参拝するのがおすすめです。

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