北方という過酷な環境に適応した人々の営みを知ることができる博物館。生活の知恵が詰まった食事や住居、民族ならではのオリジナリティが詰まった衣装や儀式など、知られざる寒冷地帯の生活を見ることができます。
天都山の民族ミュージアム
北海道網走市のメイン観光スポットである天都山(てんとざん)。「博物館網走監獄」や「オホーツク流氷館」といった人気スポットが並ぶエリアです。今回ご紹介させていただく「北海道立北方民族博物館」は、それらに比べると少しディープなミュージアム。その名の通り北方民族をテーマにした、民族博物館です。
北方民族って何でしょうか!?
どうやらグリーンランドのイヌイトやスカンディナビアのサミ、北海道やサハリンのアイヌなど、地球の北方地域に暮らす様々な人々のことを指すそう。北海道だけに留まらない、ワールドワイドな博物館なのです。
異なる民族であっても、寒冷な地域という共通点から似たような文化や風習があったりすることも。様々な民族の暮らしを比較して楽しむことができます。
知識がなくても楽しめる博物館
ガラスの8角錐がエントランスホール。館内は、常設展と特別展の2つ展示スペースがあります、常設展示室には、様々な民族資料がずらり。の衣・食・住・生業・精神文化・文化の伝承など様々なテーマに分けて配置されています。
各資料の中には、実際に使用されている姿を映した映像も併設されています。モノやテキストだけではイメージしづらいケースも多いので、これは非常にありがたい展示です。
マジックビジョンでは、18世紀のグリーンランドに暮らすイヌイトの映像が流れます。模型と映像が組み合わさったミニシアターで、上映時間は約11分です。
個性と機能が詰まった衣服
様々な民族の個性が出るのが衣類。限られた動物や植物資源を駆使して作り上げられた衣服、さらにそこに描かれた文様はその民族のアイデンティティとも呼べます。
こちらはイヌイトのパーカ。化学繊維にも見える不思議な白い素材、その正体はなんとアザラシの腸皮。
左はナーナイの花嫁衣装、右は北海道アイヌの男性用衣装。全体の雰囲気や質感は似ていますが、よく見ると配色やデザインがけっこう異なっています。このように複数の衣服を見比べてみるのもなかなか面白いです。
カリブーイヌイトの女性用衣装。長く伸びたフードに強烈な個性を感じます。これは頭が長かったというわけではなく、背負った子供を包み込むための長さであるそう。
ミステリアスな儀式
北西海岸インディアンのトーテムポール。トーテムポールには家の四隅を柱として支える「家柱(ハウスポスト)」、家のそばで独立した「独立柱」、墓標である「墓柱」、家の正面の壁にはめこまれた「入口柱」があるそう。ここに展示されているのは家柱。動物や神話に登場する人物などが彫られています。
板のようなパーツに弦が張られたサハリンアイヌのトンコリ。「五弦琴」とも呼ばれる弦楽器です。
モンゴルに暮らすドゥハのシャーマン衣装。フリンジのような布が垂れた衣服に加えて、羽毛がそろった冠。そして、その冠には人の顔が刺繍されています。盾のように見えるのはおそらく太鼓。
再現されたイヌイトの竪穴住居
最も見応えがあるのは、館内に復元されたイヌイトの竪穴住居跡。
永久凍土を掘り、そこにクジラの骨や流木で骨組みを組み立て全体に芝土を被せています。よく見るとクジラの肩甲骨が屋根代わりになっていたり、アザラシの腸で作られた天窓があったりと、北方ならではの動物資源が随所に利用されています。
室内を眺めていると、不思議なものを発見しました。壁から突き出た棒に石のようなものが刺さっています。
こちら、「石ランプ」と呼ばれる照明・暖房器具。刺さっているのはアザラシの脂肪の塊であり、一度火を点けると6〜8時間燃え続けるという非常に便利なアイテム。このおかげで室内は充分な暖かさを保つことができ、なんと裸で暮らせるほどであるそう。
普段生活していては知ることの無い、北方の民族の暮らしをたっぷりと知ることができました!資源も少なく過酷な環境でありながらも、あえてこの北方地域に暮らすのはなぜなのか、そんなことを考えさせられます。
ちなみに見学所要時間は、さらっと見るだけなら30分程度、ゆっくり見ても1時間あれば充分かと思います。
アクセスと営業情報
網走駅よりバスで約17分のバス停「北方民族博物館前」下車。車の場合は女満別空港から30分、網走駅からは10~15分ほど。
開館時間 | 9:30~16:30 ※7~9月は9:00~17:00 |
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料金 | 550円 |
公式サイト | https://hoppohm.org/index2.htm |
※掲載の情報は2023年9月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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