「スペイン美術」と「長崎ゆかりの美術」という2つの柱を中心としたコレクション展や様々な企画展、イベントなどを開催している文化施設。海辺の運河沿いという絶好のロケーションに加え、木の温もりを感じる隈研吾による設計も見どころです。
隈研吾が手掛けた美術館
1965年に開館した美術館+博物館の施設・長崎県立美術博物館。その閉館後、美術館部分を引き継いで2005年にオープンしたのが長崎県美術館。
海浜公園である水辺の森公園に隣接しており、ロケーションは抜群。市街地からもアクセス良好です。
木材を並べたような特徴的な建築は、著名な建築家である隈研吾(くまけんご)によるもの。高輪ゲートウェイ駅や角川武蔵野ミュージアムなどで知られています。
自然光あふれる館内
エントランスは高さ約12mの吹き抜け空間が広がっています。ガラス張りが多用されており、自然光を多く取り込む設計です。
美術館は運河を挟んだ2つの建物から構成されています。2棟間をつなぐ橋の回廊を進むと、まるで空を歩いているような爽快な気持ちに。ちなみにこの運河はボートに乗ることもできるそうです。
様々な企画展も開催していますが、今回は旅先での訪問なのでコレクション展を見学することにしました。
濃厚なスペイン美術
スペイン美術の中心となっているのが、須磨彌吉郎が特命全権公使としてスペインに赴任した際に収集した「須磨コレクション」。バスケス・ディアスの力強い油絵やフランシスコ・デ・ゴヤの銅版画など、様々な画家の作品を鑑賞することができます。
パブロ・ピカソやジョアン・ミロといった近現代美術も多く展示されており、刺激的な作品と向き合うことも楽しめます。
こちらはサルバドール・ダリの作品で、「海の皮膚を引きあげるヘラクレスがクピドをめざめさせようとするヴィーナスにもう少し待って欲しいと頼む」という非常に長いタイトルの絵画。3人の人物が描かれていますが、いずれも顔がありません。多くの謎を感じる作品ですが、それに反するかのようにこれでもかと説明を盛り込んだタイトルが印象的です。
長崎ゆかりの美術
長崎出身の画家の作品や、長崎を描いた作品など、長崎にゆかりのある美術も多く収蔵しています。
展示内容は時期によって変化しており、2021/4/7〜6/13は「長崎港をめぐる物語」という、長崎港をテーマにした作品を中心に展示。長崎開港450周年記念の展示で、絵画や工芸品の展示を通じて、長崎港の歴史を振り返ります。
今でこそ観光地として人気の長崎の港町ですが、明治時代には要塞法の施行とともに貿易の港から軍港へと姿を変えていきます。機密保持のため撮影や模写が禁じられ、陸からも海からも閉ざされた港となりました。
戦争が終わり要塞法が解かれると、全国の画家が長崎を写生するために訪れるようになります。海外渡航が禁じられていた時代、異国情緒あふれる長崎の街は、画家たちの憧れでした。
展示されていたのは、長崎生まれの画家である彭城貞徳や山本森之助、そして放浪の画家・山下清らの作品。個人的に印象的だったのが野口彌太郎の「長崎の山々」。海上から見た夕暮れの町並みを描いた作品は、青紫に染まるトワイライトがさの色彩がファンタジックに描かれています。
爽快な屋上庭園
美術館の屋上は屋上庭園として開放されています。海風が心地良く、とても清々しい雰囲気。ベンチに腰かけて語り合ってるカップルの姿も。
アンテナがそびえる稲佐山や、高速船・遊覧船が停まる長崎港など、長崎湾周辺の景色がぐるっと見渡せます。かつての長崎港をテーマにした美術作品を見た後だと、現代の長崎港の変遷を実感できます。
長崎生まれの彫刻家・富永直樹作のブロンズ像も並んでいます。手前の少女の像は「クスコの少女」という名の作品。クスコはペルーの地名で、アンデス山脈にある町。抱えているのは仔羊でしょうか?
長崎県美術館は展示室以外の入館は無料。そのため、この庭園も入館料不要で利用することができます。美術館のエントランスを通らずに、屋外階段から登ることができるので、水辺の森公園散歩の延長で入ってみるのも良さそうです。
アクセスと営業情報
JR長崎駅から徒歩15分。または、路面電車の《出島電停》から徒歩3分、《メディカルセンター電停》から徒歩2分。
車の場合は長崎自動車道の長崎ICから出島道路を越えて5分ほど。駐車場は2ヶ所提携しており、クレインハーバー長崎ビル駐車場が30分60円、県営常盤(北)駐車場が30分50円で利用できます。(※いずれも3時間まで)
開館時間 | 10:00~18:00 |
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休館日 | 第2、第4月曜 |
料金 | コレクション展:420円 |
公式サイト | http://www.nagasaki-museum.jp/ |
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