島原の乱の終焉の地『原城跡』(南島原市)

長崎県

かつて勃発した多くのキリシタンを含む大規模な一揆「島原の乱」の中心地となった城跡。乱後すべて埋められてしまいましたが、近年発掘調査が行われ、世界遺産にも登録されました。城跡に静かにたたずむ謎の3体の石像についてもヒアリングしてみました。

2021/5/4(火)

世界遺産の城跡

島原半島南部に築かれた原城。築城主は有馬貴純で、本拠である日野江城の支城としてこの地に建造されました。
(※貴純はキリシタン大名として有名な有馬晴信の5代前の有馬氏当主。)

有馬氏が移封となり1616年に松倉重政がこの地を治めることになりますが、その際一国一城令の影響で日野江城とともに廃城へ。代わりに島原城が新たに築かれ、原城は一度その役目を終えました。

この時点では目立った記録はありませんが、原城の名が歴史に出てくるのは、廃城となった後の話。1637年に島原の乱が勃発すると、37,000人の一揆軍はこの城に立て籠もります。幕府軍に対して抵抗を続けるも、最終的には鎮圧。乱の終息とともに、島原城は徹底的に破壊され、一揆軍の遺体とともに全て埋められました。

時は進み、1990年より埋め立てられた城跡の発掘調査が開始。2018年には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産の構成資産に指定され、脚光を浴びました。

島原の乱の経緯については、前回の有馬キリシタン遺産記念館の記事も合わせてどうぞ。

島原半島におけるキリスト教繁栄の歴史『有馬キリシタン遺産記念館』(南島原市)
島原半島にある、キリシタンの歴史や文化に焦点をあてたミュージアム。読み物パネルが多く、非常にわかりやすい展示内容となっています。世界遺産に指定された原城跡のすぐ近くにありますが、まずはこちらで学んでから行くのがおすすめです。

車の場合は要注意!

原城跡に向かうにあたり、注意すべきが本丸跡に駐車場が無いこと。舗装された車道が伸びているためカーナビに従うと、本丸跡のすぐ近くまで行くことができるのですが、車を停めることができず素通り・・・なんてことになってしまいます。

いくつか駐車場があるようですが、メジャーなのがこちらの大手口駐車場

原城温泉真砂(まさご)という温泉施設の隣にある無料駐車場。ここから本丸跡までは、徒歩10分ほど。

レンタサイクルがおすすめ

この温泉の受付では自転車を借りることができます!利用料金はなんと無料。しかも電動アシスト付きという快適さ。時間が無い方、あまり歩きたくない方にはとってもおすすめです。

自転車の台数には限りがあります。繁忙期などは借りれないこともありそうですので、「借りれたらラッキー」くらいの気持ちで向かうのが良さそう。

今日はちょっと暑い日だったので、体力は温存してきたい!というわけで躊躇いなくレンタサイクル。駐車場からは緩やかな上り坂が続きますが、電動自転車なのでスイスイ。

あっという間に本丸跡の入口へ。トイレとガイドのおじさんがスタンバイしてます。築城時の姿を見ることができるVRレンタルも行っているそう。

入口には、島原の乱で犠牲になった人々を供養するために建てられたホネカミ地蔵。一揆軍、幕府軍の区別なく供養しており、島津の家紋のような丸で囲んだ十字架が記されています。

本丸跡で見られる遺構

石垣を越えて進んで行くと、埋門跡が見えてきます。「埋門(うずみもん)」というのは、石垣などの塀に造られた門のこと。この辺りは石垣が張り巡らされていたそうです。

続いて本丸門跡。本丸に続く最後の門があった場所です。大きな礎石が並んでおり、ここにはかつて櫓門が建てられていたと考えられています。

こちらは築城時は天守閣に相当する三層櫓があったとされる場所。現在は、見晴らしの良い展望台となっています。海の向こうには大きな天草諸島を望むことができます。

十字架そびえる本丸跡

まるで公園のように広々とした本丸跡。大きな十字架が建てられており、キリシタンとの関係の深さを物語ります。

島原の乱にて総大将を務めた天草四郎の像も建てられています。制作したのは島原出身の彫刻家・北村西望。長崎平和公園の平和祈念像も手掛けている人物です。

こちらは天草四郎墓碑。民家にて見つかったものをこの地に移転したそうです。色あざやかな花が供えられており、島原の乱終結から400年近く過ぎた今でも大切に手入れている様子を感じることができます。

3体の石像の謎

本丸跡の十字架の後ろには木の柵があるのですが、その向こうには3体の石像が置かれています。

この像については特に何の解説もありません。案内なども無いため、普通に城跡を見学していたら気が付かずにスルーしてしまうでしょう。

気になったので案内の人に聞いてみたところ、実はこの像はオフィシャルに設置されたものではなく、天草の人が50年以上も昔に置いていったものらしい。そのため、3体とも海の向こうの天草を見つめているのです。

左からザビエル、天草四郎、福(天草四郎の姉)とのこと。世界遺産に登録されたことで撤去が促されましたが、バチが当たりそうなのでそのままにしているらしいです。台風の影響で倒れてしまっても、いつの間にか直っているそう。なんとも不思議な経緯のある像でした。

滞在時間は1時間ほど

駐車場への帰り道は、来た時とは違う、案内のおじさんおすすめの道へ。坂を降りて海沿いの道へと降りて行きます。

クリアで美しい海を見ながらのシーサイドサイクリング。海の向こうには、かつて島原の乱がおこる直前、天草と島原の代表者が談合を行ったという湯島を見ることができます。

自転車のレンタル時間は45分ほど。さくっと見学するなら、1時間あれば人通り見て回れそうです。

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